「機会損失」という言葉をご存じでしょうか。ビジネスシーンでよく使われる言葉ではありますが、日常生活においては頻繁に使う言葉ではないでしょう。今回は「機会損失」の意味や使い方、類語や英語表現に加え「損害賠償」との違いについても徹底解説します!
「機会損失」の意味とは?
「機会損失」の意味を紹介します。「機会損失」には、狭い範囲での意味と広い範囲での意味の2つのとらえ方があります。それぞれの意味合いについて詳しく解説するので、さっそく見ていきましょう。
「ある事態が起きなければ得られたであろう利益」
「機会損失」とは、「ある事態が起きなければ得られたであろう利益」のことを指します。例えば株式投資の世界において、ある時点で株を買わなかったとします。その後、買わなかった株の株価が上昇した場合、あのとき買っておけば得られたはずの利益のことを「機会損失」と表現します。得られるはずの利益が得られなかったときに使われる言葉になります。
「選ばなかったことで得られなかった利益」
「機会損失」をさらに広い意味でとらえると、「ある案を選ばなかったことで得られなかった利益」という意味があります。ある案を採用することで、その他の案を不採用にすることになり、その他の案を不採用にすることで得られなかった利益のことを「機会損失」といいます。例えば、東京・大阪・名古屋の3つの都市圏のどこか1つにパン屋さんを出店するとします。仮に大阪に出展した場合、東京や名古屋に出店しなかったことで儲けられなかった利益のことを「機会損失」という言葉で表現できます。
「機会損失」の類義語・言い替え
「機会損失」の類義語や言い換え表現について紹介します。ここで紹介するのは「機会費用」と「機会原価」の2つの言葉です。「機会損失」という言葉の意味をしっかり理解するために、近い意味の言葉についても把握しておきましょう。
「機会費用」
「機会費用」は「機会損失」とほぼ同じ意味を持つ言葉です。この言葉の意味合いは「1つの事を選択した場合、別の選択肢を実行していたならば得られたはずの利益」を指します。広い意味の「機会損失」と同じ意味を持つ言葉です。「機会コスト」という言葉でも言い換えられます。例えば、とある学生が1日アルバイトを休んだとします。そうすると、その日もらえるはずだった給料はもらえなくなります。この時、その日働いていたらもらえるはずの給料を「機会費用」という言葉で表せます。
「機会原価」
「機会原価」の意味は、「選ばなかった選択肢の中で、得られるはずだった利益の中で最大のもの」という意味を表します。先ほどのパン屋さんを例にとると、東京・大阪・名古屋の3つの都市のうちどこに出店するかを悩んでいて、大阪に出店すると決めた場合を考えてみましょう。1日あたりに得られる利益が東京で50万円、大阪で40万円、名古屋で30万円だったとき、選ばなかった東京と名古屋のうち、得られるはずだった利益が最大である東京の50万円という額が機会原価になります。現実問題として、そもそも出店してみないとどれだけ儲かるかわからないという事実はあります。
「機会損失」と「逸失利益」との違い
「機会損失」とよく似た言葉に「逸失利益」という言葉があります。これらの言葉の違いは、比較対象にあります。機会損失は最善策をとらなかったが故に得られなかった利益のことです。一方「逸失利益」とは、契約違反などの良くないことが起きたことが原因で取り逃した利益のことを指します。両者とも得られたはずの利益からの差額という視点においては同じですが、比較対象が大きく異なります。「逸失利益」については後ほどさらに詳しく解説します。
「機会損失」が損害賠償につながる可能性
ビジネスシーンにおいて、機会損失が損害賠償につながる可能性は0ではありません。ここではどのような事例があるのか具体的に説明した後、「逸失利益」という言葉の意味についても紹介します。
「機会損失」が損害賠償問題に発展する例
機会損失が損害賠償にまで発展する例について紹介します。例えば、AというメーカーがBというメーカーに部品を期日までに納入できなかった場合、Bはその部品を使った製品を世の中に出せないという状況が生まれます。これは機会損失を出している状況になります。Bは本来ならば得られるべき利益が得られない状況になるので、Bが取り損ねた利益分、メーカーAがなんらかの賠償しなければならない可能性が生じます。このとき取り損ねた利益分を「逸失利益」といいます。
「逸失利益」とは?
「逸失利益」とは、「本来得られるべきだったのにもかかわらず、契約違反や債務不履行によって契約違反や不法行為が発生して得られなくなった利益」のことを指します。この言葉は「機会損失」とは切っても切り離せない関係になります。「逸失利益」を生み出さないように、先を読んだ経営判断をしていく姿勢が何よりも大切になります。
「機会損失」の具体例3選
「機会損失」の具体的な事例を3つ紹介します。どのような状況に陥った時に機会損失が生じる可能性があるのか、詳しく見ていきましょう。
「原料を切れや在庫切れ」
飲食業や製造業において、材料切れや原料切れは「機会損失」の原因になります。本来であれば調理や製造を施してお客様に渡せるはずだったものが、時間通りに渡せないとなると、得られるはずの利益が得られない状況につながります。本来を受け取るはずの利益が受け取れなかったことは損失とみなせるでしょう。つまり、お客様に物を売り利益を得る機会を失ったことになるので、原料切れや在庫切れは機会損失につながります。
「決済上の不手際」
近年電子マネーやキャッシュレス決済が流行ってきています。現金決済からキャッシュレス決済への移行の最中、決済上の不手際も機会損失になりえます。物を買いたいお客様がいて、電子マネー決済しようとした時に店舗のレジがキャッシュレス決済に対応していなかった場合を考えてみましょう。その際にお客さんが現金を持ち合わせていなかったり、現金が不足していた場合は決済できません。そうなると、お客様はATMなどで現金を下ろしてくる必要があります。そのひと手間が増える時点で、購買意欲が落ちてしまう可能性は否めません。決済方法もお客様のニーズに備えて、そろえておくことが重要になります。
「社会情勢による逆風」
社会情勢による逆風も機会損失につながります。新型コロナウイルスによる人の動きの足止めや、原発事故による地元の農産物に対する風評被害なども大きな機会損失をひきおこします。本来ならば活発に動き回るはずだった人々の動きが止まることは、鉄道業界や旅行業界、 航空業界にとっては大きなダメージになります。 このダメージは、従来ならば得られるはずだった利益が得られなかったことによるものです。また原発事故による風評被害も同じで、本来であれば売れるはずのものも原発に近いというだけでブランド力が落ちてしまい、販売力の低下に直結します。社会の大きな流れによる風評被害も大きな機会損失につながるといえるでしょう。
「機会損失」を英語でいうと?
「機会損失」の英語表現について紹介します。英語表現についても理解しておくことで、国外には渡った際に役に立つことがあるかもしれません。ここでは2つの英語表現について触れていきます。
「opportunity loss」
「opportunity loss」で「機会損失」という意味になります。「opportunity」は「機会」という意味で、日本語でいう「チャンス」に近い意味合いもあります。「loss」は「失う」という意味になるので、まさに「機会」を「損失」している状況を表す言葉です。
「opportunity squandered」
「opportunity squandered」も機会損失の英語表現になります。こちらの方が「残念」というニュアンスが強い表現方法です。「squander」は「浪費する」という意味の動詞です。「機会」を「浪費」してしまったというニュアンスを持っています。
「機会損失」の使い方と例文集
「機会損失」の使い方と例文について紹介します。「機会損失」という言葉の意味を理解することで、使うべきタイミングや使い方が見えてきます。例文を交えて解説しますので、詳しく見ていきましょう。
「機会損失」の使い方
「機会損失」の使い方には広い意味と狭い意味の2つ紹介しましたが、一般的に用いられるのは狭い意味合いである「ある事態が起きなければ得られたであろう利益」という使われ方です。もっとかんたんに表現すると「儲け損ない」のことを指しています。つまり「機会損失」を使うタイミングは、「儲け損ない」が発生したタイミングや「儲け損ない」が発生しそうなタイミングであるといえます。
「機会損失」の例文
最後に「機会損失」を使った例文を紹介します。
- ここで新規事業に参入しないのは、機会損失につながります。
- 今振り返ると、あの時に投資をしなかったのは大きな機会損失だった。
まとめ
「機会損失」は「ある自体が起きなければ得られたであろう利益」という意味を持ちます。経営上の判断ミスによる機会損失もあれば、社会情勢による逆風が原因で生じる機会損失もあります。ビジネスシーンにおいてはよく使われる言葉になるので、意味をしっかり把握しておきましょう。