日常生活で利用するスーパーや病院、インターネットでの買い物まで、「サービス業」に含まれる業種は幅が広いですよね。しかし、どこまでが「サービス業」なの?と疑問に思う場面も多いでしょう。「サービス業」の定義と種類までわかりやすく解説します。
「サービス業」とは?
「サービス業」はどの範囲までを指しているでしょうか。サービス業の定義と接客業との違いについてかんたんに説明します。
「サービス業」は物ではなく、サービスを提供する仕事
「サービス」という言葉は英語の「Service」からきており、「他人に対して奉仕、役に立つこと、有用」を意味します。「サービス業」は顧客に対してその「サービス」を提供する仕事で、形のないサービスを提供する、かつ顧客と対面して直接サービスを提供する仕事全般を指します。
例えば、物を生産するメーカーはサービス業に当てはまりませんが、食べ物を提供する飲食業はサービス業です。食べ物という「物」を提供していますが、ホールスタッフがお客さんと接し、注文を取ったり食べ物を運んだりと「サービス」を提供しているためです。
接客業はサービス業の1種
「サービス業」の代表的な仕事が「接客業」です。よくイメージするレストランのスタッフやホテルのコンシェルジュなどがこの「接客業」に該当する仕事です。お客様と直接接し、形のないサービスを提供するという面で「サービス業」の1種になるのです。「サービス業」にはこの「接客業」以外にもさまざまな種類があります。
サービス業の4つの特徴
サービスには「IHIP」と呼ばれる4つの特徴があると考えられています。ここではサービスという言葉が持つ4つの特徴について解説していきます。
- I(Intangibility):無形性
- H(Heterogeneity):異質性
- I(Inseparability):生産と消費の同時性
- P(Perishability):消滅性
1. I(Intangibility):無形性
「無形性」とは、物や実体として確認できず、作り置きや在庫を確保できないという特徴のことです。有形財ではない点から「非有形性」と呼ばれる場合もあります。
物体を取り出してアピールできる有形財と比べ、物理的に存在しないサービスの特徴を顧客に伝えるのは困難です。目に見えないサービスをいかに顧客にアピールするかが課題となります。
2. H(Heterogeneity):異質性
同じサービス内容でも提供者や提供のタイミングによって品質は多少異なります。これをサービスの「異質性」あるいは「非均一性」と呼びます。
たとえば同じ美容師でもつねに同じパフォーマンスが発揮できるわけではありません。その日のコンディションによって仕上がりが変わったり、顧客が求める仕上がりにならなかったりします。この不確実性がサービスのリスクとなる場合もあるのです。
3. I(Inseparability):生産と消費の同時性
サービスの提供と消費が同時になされるという特徴を「生産と消費の同時性」と言います。サービスはその場で提供されるものが多い点に起因しています。
学習塾なら講師なしの授業は成立しませんし、移動というサービスを提供する鉄道は、移動する電車でしかサービスを受けられません。サービスのほとんどは「生産と消費」そして「距離的・人員的問題」を同時に発生させます。
4. P(Perishability):消滅性
サービスは提供と同時に消滅します。サービスを保存して時間を改めた提供はできません。この特徴をサービスの「消滅性」と呼びます。
自動車製造業では製造した自動車を保存して、複数の顧客に商品をアピール・販売できます。しかしホテル業では顧客が宿泊しない日の売上は発生しません。在庫が持てない点はサービス業のメリットでもあり、貯蔵ができないデメリットでもあります。
「サービス業」の種類
「サービス業」にはどんな種類があるでしょうか。「経済産業省 業種分類表」に基づいた「サービス業」の種類を紹介します。
「サービス業」は大きく下記の7種類に分かれます。
・学術研究、専門・技術サービス業:法律事務所、公認会計士事務所、建築設計業など
・宿泊、飲食サービス業:ホテル、飲食店、飲食配達業など
・生活関連サービス業、娯楽業:クリーニング、美容室、映画館、テーマパークなど
・教育・学習支援業:学校、学習塾、博物館、ダンス教室など
・医療・福祉業:病院、介護事業、保健所など
・複合サービス業:郵便局、農業協同組合など
・その他のサービス業:上記以外のサービス業。自動車修理、労働者派遣業など
個人向けと事業者向け
「サービス業」を大きく2つに分けると「個人向けのサービス業」と「事業者向けのサービス業」に分けられます。「個人向けのサービス業」はより身近なサービスで美容室、旅行業、映画館などの娯楽施設が挙げられます。「事業者向けサービス業」には人材派遣サービスや企業研修サービスなどがあります。
「サービス業」の具体的な仕事内容は?
私たちの身近で経験できる2つの仕事を中心に、「サービス業」の具体的な仕事内容を紹介します。
飲食店
大きくホールスタッフとキッチンスタッフに仕事が分かれ、発注業務、レジ業務、勤怠管理などはマネージャーやオーナーが行う場合が多いです。正社員よりはアルバイト社員が多いことが特徴です。
ホテル
ホテルといえばフロントスタッフやコンシェルジュだけをイメージする場合も多いですが、ホテルの仕事は大きく5つに分かれています。フロントスタッフなどの宿泊部門、ウェイターやルームサービスなどの料飲部門、宴会部門、管理・営業部門、シェフやベーカリなどの調理部門があります。
「専門サービス業」、「情報サービス業」とは
これもサービス業なの?とあまりイメージがつかない業種として「専門サービス業」と「情報サービス業」があります。この2つに当てはまる仕事、特徴についてかんたんに説明します。
「専門サービス業」とは
「専門サービス業」は専門的な知識や技術を活かしたサービス業のことで、分野は多岐にわたります。弁護士や税理士など、国家資格が必要な仕事も「専門サービス業」の代表的な業種の1つです。
「情報サービス業」とは
上記の7つの分類には入っていませんが、情報通信産業を含む第4次産業の発達に伴って新しく分類され始めたのが「情報サービス業」です。市場調査のデータを提供する仕事やデータセンターなどが「情報サービス業」を代表する仕事です。
「サービス業」に必要な素質とは
将来的に「サービス業」に就きたい方はどういったスキルを磨けばいいでしょうか。仕事内容にもよりますが、ここでは代表的な「サービス業」に必要な素質を紹介します。
ビジネスマナー
顧客と直接やり取りをするので、「サービス業」においてビジネスマナーは最も重要なスキルの1つです。ビジネスマナーに反する接客をすると、顧客からのクレームの原因になり、お店や業界の評判にまで影響する場合がありますので、注意が必要ですね。
体力
主に座って仕事をする事務職とは違い、「サービス業」は立ったままの仕事が多いです。また、ときには重いものを運搬する、お店や会場の違うフロアを往復するなど、体力が必要な仕事内容もあります。
柔軟性
「サービス業」は多様な顧客のニーズを満たす仕事ですので、仕事によって決まったマニュアルはありますが、ときにはマニュアル外のサービスを提供しないといけない場合があります。顧客のニーズに柔軟に対応することで、顧客の満足度も上がり、仕事もスムーズに進むでしょう。
思いやり
顧客の気持ちに寄り添う思いやりも「サービス業」の大事な素質です。いつも笑顔を忘れず、顧客のニーズを先に読もうとする思いやりが、顧客からの評価も高めてくれるでしょう。
「サービス業」を英語でいうと?
「サービス業」は英語でどう表現するか、ご存じですか。「サービス業」に該当する英語表現や「サービス業」でよく使われる英語表現まで、かんたんに解説します。
Service industry, Customer service job
「サービス業」の英語表現は、「Service industry」または「Customer service job」などがあります。「industry/job」が「産業/仕事」という意味です。
- What are the types of service industry?(「サービス業」にはどういう種類がありますか?)
- I am in a customer service job.(私は「サービス業」に就いています。)
「サービス業」でよく使われる英語表現
英語圏の「サービス業」でよく使われる代表的な英語表現を紹介します。海外への留学を予定している方、海外でアルバイトを探している方など、ぜひ活用してください。
sir/ma’am
男性/女性に対する敬称です。「Yes, sir/ma’am」という表現をよく使います。最近では「ma’am」という表現を「おばさん」のニュアンスがあると不快感を覚える方も多いらしく、「miss/mis」を代わりに使っています。
Could you~?/May I~?
英語の丁寧語に当たる表現です。「Could you」は相手に丁寧に依頼するときに「Could you complete the form?(この様式を書いていただけませんか)」などの表現ができます。「May I」は相手に尋ねるときの丁寧な表現です。「May I have your passport, please?(パスポートを提出していただけますか)」などの言い方ができます。
look forword to
直訳すると「~を期待する、楽しみにする」という意味で、顧客を送り出すときに「We look forward to having you back.(またのお越しをお待ちしております)」と表現できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回はサービス業について解説しました。
「サービス業」とは形のないサービスを直接顧客に提供する仕事です。「サービス業」を希望している方は「サービス業」に必要な素質を覚えておくといいでしょう。また、「サービス業」の意味や種類もあわせて覚え、あなたのビジネス知識を1つアップさせてみましょう。
最後に「サービス業」のまとめです。
- 形のないサービスを提供する、かつ顧客と対面して直接サービスを提供する仕事全般を指します。
- 「サービス業」は大きく下記の7種類に分かれます。大きく2つに分けると「個人向けのサービス業」と「事業者向けのサービス業」に分けられます。
- あまりイメージがつかない業種として「専門サービス業」と「情報サービス業」があります。
- 仕事内容にもよりますが、代表的な「サービス業」に必要な素質は「ビジネスマナー」「体力」「柔軟性」「思いやり」です。
- 「サービス業」の英語表現は、「Service industry」または「Customer service job」などがあります。