消費税を含む総額表示が義務付けられました、というニュースを見て「総額表示って内税になるってこと?」と聞かれたらなんて答えますか?なんとなくわかった気になっている「内税」という言葉、この機会にその計算方法を含めてわかりやすく解説します。
「内税」の意味とは?
「内税」についてなんとなくは分かっている気がしますね。ただその定義は、などと聞かれるとちょっと戸惑ってしまいます。「内税」とは、と自信を持って語れるようにしておくことは今や社会人の基礎知識の一つです。しっかり押さえておきましょう。
意味1 総額表示のこと
「内税」は「うちぜい」と読み、消費税額を含めた金額表示のことをいいます。平成16(2004)年4月以降、原則的には店頭での価格表示は「内税」とすることが定められています。このほか「総額表示」や「税込み」と呼ばれることもあります。
意味2 総額表示における税額
「内税」は金額表示の方法の名称であるだけではありません。「内税」で表示された金額のうち、消費税額にあたる部分を指す言葉でもあります。つまり「内税(総額表示)」とは「内税(総額表示のうち消費税相当額)」を含んだ総額をいうことになります。ややこしいですね。
参照:Weblio辞書「内税」
「内税」と「外税」の違い
内があるんだから外もありそうですね。まさにその通り「外税」もあります。では「外税」とはどんなもので、「内税」とどう違うのでしょうか?
「外税」とは?
「外税」とは、消費税相当額を商品の金額表示に含めず、支払い時にその分を上乗せする金額表示の方式、およびその消費税額相当分をいいます。あれ、でも総額表示が義務付けられたんじゃないの?と思う方もいるでしょう。実は、消費税額の変動などで販売側の負担が増えるのを避けるために、消費者に誤解を与えないようにすることなどを条件として外税方式が認められていたのです。
参照:Weblio辞書「外税」
支払い時の金額が違う
「内税」と「外税」で一番の違いは、支払い時の金額が違ってくることです。「内税」なら値札に書かれた金額を支払うことになりますが、「外税」だと値札に消費税額が上乗せされてきます。値札に「1000円」とあっても、「外税」だと100円札1枚では足りなくなるわけですね。
「内税」表示の義務化って?
「内税」とは消費税の制度に伴って生まれた言葉です。では、そもそも消費税っていつから始まったのか、「内税」の表現はいつから使われているのか、確かめておきたいですね。消費税の経緯を振り返っておきましょう。
消費税は1989年から
消費税が導入されたのは1989(平成元)年のことです。当初は税率は3%でした。子どもたちの「遠足のおやつは300円まで」が「309円まで」になるのか、とか出回っている1円玉が不足するのでは、などいろいろ話題になりました。
2004年から総額表示に
総額表示が原則的に義務付けられたのは2004(平成16)年のことです。当時の税率は5%でした。しかし、税率変動などに対する販売者側の事務負担を軽減する目的で、期限を切って例外が認められてきました。「外税」表示が可能なのは、次の条件を満たす場合でした。
- 表示価格に「外税」であることを明示すること(〇〇円(税抜き)、〇〇円+税、などの表示方法)
- 店頭の分かりやすい所に、店内のすべての表示が「外税」であると掲示すること
2021年4月から例外なく総額表示に
「外税」表示の例外規定の期限は2021(令和3)年3月とされていましたので、同年4月からすべて「内税」表示が義務付けられました。したがって現在はネット上を含め、提示された金額を超える税負担はないことになります。
総額表示の例外って?
「内税」方式での金額表示は、小売り段階の取引に適用されるもので、事業者間の取引は例外となります。また「内税」方式は、不特定多数に対してあらかじめ金額を示す場合に適用されるので、見積書、請求書、契約書など、不特定多数を対象としないものには適用されません。
「内税」の計算方法
消費税率が10%になって唯一よかったことは計算しやすくなったこと、と思っていたら「内税」表示になって税額の計算は分かりにくくなり、軽減税率が入って税の計算はどんどん複雑になるばかりです。ささっと税率計算をしてみせられたらなかなかいいアピールポイントになるかもしれませんね。基本的な計算方法について解説します。
「外税」はかんたん
「外税」方式は支払い金額や税額を求めるのもそう難しくはありません。本体価格が分かれば、その消費税額は次の式で求められます。
・本体価格×消費税率=消費税額
軽減税率の8%だとちょっと手間ですが、10%なら本体価格を一桁右にずらすだけで求められますね。
税込み価格は、求めた消費税額を本体価格に足せば求められます。本体価格から一気に支払額を求めるなら次の式になります。
・本体価格×1.1=消費税率10%の支払額(軽減税率なら1.1を1.08に変更)
「外税」方式の計算には掛け算しか出てこないので比較的容易です。
総額表示から税抜き価格を求める
「内税」方式は、本体価格も税もその中に含まれてしまっているので、どうしても割り算での計算になるために難しくなります、まず「内税」方式の表示額から本体価格を求めるための計算式は次のようになります。
・総額表示÷1.1=本体価格(軽減税率なら1.1を1.08に変更)
総額表示から「内税」を求める
「内税」方式で本体価格を求め、それを元に消費税額を求める式を書くと次のようになります。
・総額表示÷1.1×0.1=消費税額(軽減税率なら1.1を1.08に、0.1を0.08に変更)
これをもう少し整理すると次のようになります。
・総額表示×1/11=消費税額(軽減税率なら1/11を2/27に変更)
掛け算になるのはいいのですが、分数が入ってくるので電卓も使いにくく厄介ですね。
総額表示から「内税」を求めるかんたんな方法
本体価格を求めるように、せめて小数の計算でかんたんに消費税額を求められないのでしょうか?これを考えると次のようになります。
・総額表示×10÷110(軽減税率なら10を8に、110を108に変更)
これだとパーセント表示のままの税率を掛けて、税率に100を加えたもので割る、と覚えておけばいいですね。
もう一つ、整数や小数の割り算で求める方法もあります。
・総額表示÷11(軽減税率なら11を13.5に変更)
これらの方法なら電卓ですぐ求められます。
端数処理は?
これまでの計算を見ると、答えはどうしても1円未満の部分、いわゆる端数を生じてしまいます。端数処理の方法には、切り捨て、切り上げ、四捨五入の重荷3種類がありますが、処理の結果は微妙に違ってきてしまいます。法律上はどの処理方法を持ちるかは定められていません。一般的に消費税の端数処理は切り捨てが用いられます。この方がお客の税負担が軽減されていることになるからです。逆にいうと、本体価格を計算で求める場合は切り上げをすることになりますね。業者間の取引では当事者間でルールを決めて行うことが多いですね。
税務処理上の注意点
「内税」を計算して求める必要がある機会として最も多いのは「消費税申告」のときでしょう。「消費税申告」は課税売上が1000万円を超える事業者に求められます。
「内税」と「外税」の混在はNG
申告の際「内税」と「外税」が混在していることは認められません。契約書などは総額表示になっていない場合が多いですし、日々の売上げは税込みであることが多いでしょう。これらをきちんと整理して計算する必要があります。
経理処理では選択できる
申告の際の経理処理は「内税」でも「外税」でもどちらでも構いません。税額が把握しやすい「外税」方式で経理処理をする企業が多く見られます。その場合の仕訳は税抜処理となり、売上には本体価格と消費税額を分けて記入するようになります。
「内税」を英語でいうと?
海外旅行などでショッピングする際に税がどうなっているかわかるといいですね。英語表現を見ておきましょう。
tax-inclusive pricing
this bag is tax-inclusive pricing.(このバッグは内税です。)
値札などにtax-inclusive pricingと表示されていることが多いですね。
tax included in a price
I know tax included in a price.(内税なことは分かっています。)
税は価格に含まれている、を表す言い方です。
まとめ
「内税」の方が支払いがいくらになるかドキドキしないで済むのはいいのですが、いったいいくら税金として収められているのかわからないのは気になりますね。特にビジネスにおいては「内税」か「外税」かは大問題です。1円を笑うものは1円に泣くともいいますね。「内税」が主流となる中で、税額をきちんと把握できる力はいよいよ重要なスキルになってくると思われます。計算方法も含めて、その意味や扱い方などしっかり押さえておきたいものですね。