「意を決して」は日常生活の中では頻繁に使うことはないものの、「ここぞ」という時に一念発起してものごとにあたる場合に使います。その正しい意味や使い方に加え、同じ意味の言葉や英語による表現方法まで例文を挙げながら解説していきます。
「意を決して」の意味
「意を決して」の意味と語源について解説してきます。
「意を決して」とは
「意を決して」とは「強い意思と決意をもってものごとのあたること」を表す言葉です。「意を決して告白する」「意を決して謝罪する」「意を決して臨む」などの使い方に見られるように、単にものごとに対処するのではなく「一大決心をして」臨む時に使います。
「意を決して」の語源
「意を決して」は「意」「決して」という言葉が1つになってできた慣用的な表現です。「意」は「意思」を意味し「決して」は「決意して」をそれぞれ意味します。その結果、「強い意志を持つ決意をしてものごとにあたること」から「強い意思と決意を持ってものごとにあたること」を表す言葉となりました。
「意を決して」の使い方
「意を決して~する」という使い方をします。「~」の部分は「強い意思と決意を持ってあたる」具体的な行為が入ります。いくつかの使用例を挙げてみましょう。
彼は意を決して配属された部署のドアを開けた。
これから新たな部署で、気持ちを引き締めて仕事に邁進していきたい気持ちを感じ取れます。
彼は意を決してプロジェクトリーダーとしてやっていくことを決意した。
社内の新たなプロジェクトに抜擢され、その重要性に身が引き締まる思いで進めていくことがわかります。
彼女は意を決して課内の不正を内部告発室に告発した。
会社内部の不正を告発することは自身にも大きな打撃になることはわかっていながら、会社をよくするためにはやらざるを得ないとの強い気持ちで臨もうとしていることが理解できます。
彼は健康のため意を決して毎朝ジョギングを始めることにした。
日ごろ感じている運動不足を解消するために、何かしなければならないと思っていながら行動に移せなかった事に対して、一念発起してジョギングを始めようとの気持ちが現れています。
課内の先輩は意を決して新製品の社内発表のためのプレゼンに臨んだ。
新製品の社内発表は、世の中に送り出す前の重要な登竜門と認識し、皆を代表してこれに臨もうとする強い気持ちが感じ取れます。
「意を決して」の使用上の注意点
「意を決して」は日常生活における何気ない行為に対しては使わない言葉です。「私は意を決して風呂に入った」とか「私は意を決してベッドに入った」という言い方をすることはありません。前者の場合、例えば、「けがをしていて長い間風呂に入れなかったが、入らざるを得ない理由があり、決心をして入ることにした。」後者の場合は、「明日の試験に対して、十分な準備ができていないけれど、睡眠時間を確保しないとかえって試験に失敗する可能性があるため、「睡眠時間を取るべき」との決心をしてベッドに入った」などの場合であれば、このような行為に対しても「意を決して」を使います。
「意を決して」の類義語・言い換え
「意を決して」と同じような意味の言葉に「腹をくくって」「覚悟を決めて」「一念発起して」「思い切って」「気合を入れて」などがあります。それぞれの意味と使い方について、例文を含め紹介していきましょう。
「腹をくくって」
「腹をくくって」は「強い気持ちを持って決心を固め、覚悟を決め」てものごとに臨む様を表す言葉です。多くの場合「意を決して」に置き換えることは可能です。
彼は腹をくくってプロジェクトリーダーとしてやっていくことを決意した。
この例において、主語が女性であれば「腹をくくって」よりは「意を決して」の方が好ましく感じられます。スポーツや勝負の世界などで使用する場合は、主語が女性であっても「腹をくくって」を使うのは「あり」です。
彼女は意を決してプロジェクトリーダーとしてやっていくことを決意した。
「覚悟を決めて」
「覚悟を決めて」は「自身の心の中で強く決意を固める」の意味で「危険な状況に対して事前に強く心の準備をしておく」の意味も含まれる表現です。この言葉も多くの場合「意を決して」に置き換えれます。主語が女性の場合に使用しても問題ありません。
- 彼は覚悟を決めてプロジェクトリーダーとしてやっていくことを決意した。
- 彼女は覚悟を決めてプロジェクトリーダーとしてやっていくことを決意した。
「一念発起して」
「一念発起して」は「それまでの気持ちを改め、あることを成し遂げようと強いく持ちをきめる」ことです。
彼女は一念発起して課内の不正を内部告発室に告発した。
仮に彼女が内部告発をしなくても、会社は今まで通り粛々と運営されていきます。しかし、致命的な問題に対して「目をつぶるべきではない」とこれまでの考え方を改めて、内部告発することに決め、これを実行に移すために「一念発起」する必要があったわけです。
「思い切って」
「思い切って」は「迷う気持ちを断ち切って行為や行動、思考などを切り替える」意味です。「意を決して」と比べると、行為に移すときの気持ちの強さは若干劣りますが日常的には比較的よく使われる表現です。
彼は健康のため思い切って毎朝ジョギングを始めることにした。
「気合を入れて」
「気合を入れて」は「緊張感を高めて集中するさま」を表す言葉です。
課内の先輩は気合を入れて新製品の社内発表のためのプレゼンに臨んだ。
「気合を入れて」も「腹をくくって」と同様に、一般的なシーンでは女性が主語の場合に使うのは避けて、「覚悟を決めて」「思い切って」などに置き換えるべきです。
彼女は覚悟を決めて新製品の社内発表のためのプレゼンに臨んだ。
「意」を使った言い方
「意を決して」と同じように「意」を使った慣用的な表現方法についていくつか紹介していきましょう。
「意に介する」「意に介さない」
「意に介する」は「気にする、気にかける」の意味で「意に介さない」は「気にしない、気にかけない」の意味です。
彼は私の忠告を全く意に介さず、部長に対して自身の弁明に終始した。
「意のあるところ」
「意のあるところ」は「本心、言おうとしていること」の意味です。
彼女は私の意のあるところを代弁してくれた。
「意にかなう」
「意にかなう」は「気に入る」の意味です。
彼は常に努力を重ねたが、残念なことに部長の意にかなうことはなかった。
「意を強くする」
「意を強くする」は「他人の合意を得られて自信を強く持つ」ことです。
彼は自説を説明した後、参加者の表情を見て意を強くした。
「意を尽くす」
「意を尽くす」は「相手に理解してもらうために丁寧に説明する」ことです。
彼は意を尽くして、出席者に自説を説いた。
「意を決して」の英語表現
「意を決して」の英語表現にであるmake up one’s mind」 「muster up enough courage to 」について使用例を含め解説していきましょう。
「make up one’s mind~」は「意を決して~」の意味です。
I made up my mind and join the meeting.(私は意を決して会議に臨むこととした。)
「muster up enough courage to 」も同様に「意を決して~する」の意味で使われます。
I am able to muster up enough courage to do the job.(私は意を決してその仕事に取り組める。)
まとめ
「意を決して」とは「強い意思と決意を持って」ものごとにあたることです。「腹をくくって」「覚悟を決めて」「一念発起して」「思い切って」「気合を入れて」などの類義語もあわせて覚えておきましょう。使う場所や状況などにより、日ごろから意識してそれぞれの言葉を使い分けてみてはいかがでしょうか。