「据え膳」という言葉は、聞いたことはあるのではないでしょうか。使い方を間違えると、まずい場面もありますから、正確に意味をおさえておきましょう。「据え膳食わぬは男の恥」などの使い方、類義語、対義語、英語についても解説していきます。
「据え膳」の読み方・意味とは?
「据え膳」の読み方・意味について解説します。
「据え膳」の読み方
「据え膳」は、「すえぜん」と読みます。「据」の漢字の意味は「ある場所に動かないようにしっかりと置く」です。「膳」の漢字の意味は「料理を並べる台。その台の上に載せた料理」です。
「据え膳」の意味1料理
「据え膳」の意味の1つ目は、「すぐ食べられるようにすっかり準備されている食膳のこと。または、食膳を整えて人の前に据えること」です。「食膳」の意味は「食べ物を載せる膳。膳に載せた食べ物」です。日常生活では膳を使うことは少ないでしょうが、今でも旅館などで提供される食事は一人ずつ食膳が用意されていることがあります。
「据え膳」の意味2自分は何もしない
「据え膳」の意味の2つ目は、「他の人を働かせておきながら自分は何もしないで人の世話になるだけでいること」です。食膳もすっかり準備された状態になっていることを「据え膳」と言いましたが、そこから転じて、食事に限らず何もしないことも「据え膳」と表現します。
「据え膳」の意味3男女
「据え膳」の意味の3つ目は、「女性のほうから男性に情事を誘いかけること。女性が男性に身を任せてもよいと思っている状態のこと」です。こちらも、男性の方からは何もしないという意味が含まれています。
「据え膳」の類義語・言い換え
「据え膳」の類義語・言い換えを紹介します。
「据え膳」の類義語
「据え膳」の「自分は何もしない」という意味においての類義語には、「至れり尽くせり」「下にも置かない」「丁重にもてなす」「人まかせ」「他人まかせ」などがあります。
「至れり尽くせり」の意味は「十分な配慮が行き渡っていて申し分がない」です。「下にも置かない」の意味は「非常に丁寧に扱う」です。もともと「丁寧にもてなして下座に置かない」ということから、「下」という言葉が使われています。「丁重にもてなす」の意味は「注意が行き届いていて丁寧に扱う」です。「至れり尽くせり」「下にも置かない」「丁重にもてなす」には否定的な意味は含まれておらず、もてなす側の丁寧さが伝わってくる言葉です。
一方、「据え膳」についても同様の意味がありますが、「他の人を働かせておきながら自分は何もしないで人の世話になるだけでいること」というやや否定的な意味が含まれています。その否定的な意味を持った言葉として「人まかせ」「他人任せ」などがあります。「人まかせ」の意味は「他人に任せきりにすること」です。「他人まかせ」の意味は「自分以外の他の人に任せきりにすること」です。
「据え膳」の言い換え
「実家に帰るといつも据え膳になってしまって何もしなくなる」という例文を言い換えると次のようになります。ただし、「丁重にもてなす」は実家にはそぐわないのでこの場合は言い換えはできません。
- 実家に帰るといつも至れり尽くせりになってしまって何もしなくなる。
- 実家に帰るといつも下にも置かない扱いになってしまって何もしなくなる。
- 実家に帰るといつも人まかせになってしまって何もしなくなる。
- 実家に帰るといつも他人任せになってしまって何もしなくなる。
「据え膳」の対義語
「据え膳」の対義語を紹介します。
「据え膳」の対義語は、第1の料理の意味に対しては「上げ膳」です。「据え膳」の意味は「すぐ食べられるようにすっかり準備されている食膳のこと」でしたが、「上げ膳」の意味は「食膳を片付けること」です。そこから転じて、「食膳を片付けるようなことをしなくても済むような境遇」という意味もあります。第2の「自分は何もしない」の意味に対しては、「自給自足」「独立独歩」などです。「据え膳」の意味は「他の人を働かせておきながら自分は何もしないで人の世話になるだけでいること」でした。それに対して、「自給自足」の意味は、「必要なものを他に求めるのではなく、すべて自分自身の力で生産して用意すること」です。
「独立独歩」の意味は、「他人に頼らずに、自分の信じる道を進んでいくこと」です。第3の男女の意味に対しては、明確な対義語はありませんが、俗な表現としては「隙がない」などが当てはまります。「据え膳」の意味は「女性のほうから男性に情事を誘いかけること。女性が男性に身を任せてもよいと思っている状態のこと」でした。「隙がない」とは、逆に、「男性のほうから女性に情事を誘いかけようとしても女性は受け付けようとしていないこと」を意味します。
「据え膳」の使い方1「上げ膳据え膳」
「据え膳」の使い方の1つ目の「上げ膳据え膳」について説明します。
「上げ膳据え膳」の意味
「上げ膳」と「据え膳」という対義語同士を合体させた言葉が「上げ膳据え膳」です。食事の準備である「据え膳」から、片付けである「上げ膳」までということなので、「上げ膳据え膳」の本来の意味は、「食膳を整えて人に提供し、食事が済んでから食膳を片付けること」です。そこから転じて、「何から何まで他人に働かせて自分は何もしないこと」という意味になりました。
「上げ膳据え膳」の例文
「上げ膳据え膳」の例文は次のようになります。
- 当旅館では上げ膳据え膳でおもてなしいたします。
- 家事を何もしないと上げ膳据え膳夫と呼ばれてしまうよ。
- 上司は全て部下に仕事をやらせて、まるで上げ膳据え膳だ。
「据え膳」の使い方2「据え膳食わぬは男の恥」
「据え膳」の使い方の2つ目の「据え膳食わぬは男の恥」ということわざについて説明します。
「据え膳食わぬは男の恥」の意味
「据え膳食わぬは男の恥」の意味は、「女性のほうから男性に情事を誘いかけても応じない男性は臆病者である」です。元々は、「すっかり準備されて差し出された食膳を食べないのは男の恥である」という意味でしたが、そこから転じて情事についての意味を持つようになりました。
「据え膳食わぬは男の恥」の由来
「据え膳食わぬは男の恥」ということわざの由来は、歌舞伎の演目「夏祭浪花鑑」の中にあるセリフにあるという説があります。そのセリフとは、「据え膳と河豚(ふぐ)汁を食わぬは男の内ではない」というもので、意味は「据え膳と毒のあるふぐ汁を食べないのは男らしくない」です。
「据え膳食わぬは男の恥」の例文
「据え膳食わぬは男の恥」の例文は次のようになります。
- 据え膳食わぬは男の恥と昔から言われてきたが、最近の草食系男子にとっては別に恥ずかしくないことだ。
- せっかく彼女の方からアプローチしてくれたのに交際を断るなんて、もったいない。据え膳食わぬは男の恥と言うじゃないか。
「据え膳」を英語でいうと?
「据え膳」「上げ膳据え膳」「据え膳食わぬは男の恥」のそれぞれの英語について説明します。
「据え膳」の英語
「据え膳」を英語でいうと「meal set before one」(すぐに食べられる状態になっている食事)です。また、「a small table set before a person for a meal」(人の前に置いてある食膳)とも言います。また、食事ではなく「人を働かせて、自分は何もしない」という意味では、「make all the preparations for you」(あなたのために全て準備を整える)と表現します。
「上げ膳据え膳」の英語
「上げ膳据え膳」を英語でいうと「don’t have to lift a finger 」(指も持ち上げなくてもいいほどのもてなしを受ける)や「be waited on hand and foot 」(全ての世話をしてもらう)や「just sit back and enjoy the services offered 」(ただ座っているだけですべてのサービスを受ける)などとなります。
「据え膳食わぬは男の恥」の英語
「据え膳食わぬは男の恥」を英語でいうと「rejecting the advances of women is a man’s shame」(女性のほうから男性に情事を誘いかけても応じない男性は臆病者である)や「It’s a poor sort of man who runs away when a woman offers herself to him」(女性から誘ってきた時に逃げてしまう男は弱い)などとなります。
また、「It is time to set in when the oven comes to the dough.」(かまどがパン生地のところに来たら、パン生地をかまどに入れるべきだ)という英語のことわざも、よく似た意味です。また、より無難な表現としては「A gentlemn must not embarrass a lady.」(男性は女性に恥をかかせてはいけない)というものもあります。
まとめ
「据え膳」の意味は「すぐ食べられるようにすっかり準備されている食膳のこと。または、食膳を整えて人の前に据えること」「他の人を働かせておきながら自分は何もしないで人の世話になるだけでいること」「女性のほうから男性に情事を誘いかけること。女性が男性に身を任せてもよいと思っている状態のこと」です。特に、「上げ膳据え膳」と「据え膳食わぬは男の恥」という形で使われることが多いです。男女間の情事について使われることのある言葉ですから、使い方には注意しましょう。