アニメや漫画、ゲームで使われることの多い言葉に「描き下ろし」があります。では、「描き下ろし」の作品は一般的な作品と違い、どのような意味を持つでしょうか。この記事では「描き下ろし」の意味や類義語の他に、「書き下ろし」についても紹介します。
「描き下ろし」の意味とは?
「描き下ろし」の意味について紹介します。一般的な作品の違いと似ている言葉である「描き起こし」との違いについても解説します。
「描き下ろし」の意味は「直接世に出た作品」
「描き下ろし」とは一言で表すと、直接世に出た作品のことをいいます。漫画で例えるならばコミックス化する際に、雑誌に記載されていた本編に追加でおまけページが描かれることがあります。そのコミックスのために描かれたイラストです。つまり、使いまわしではなく、コミックスのために描かれ、初披露されるものを描き下ろしといいます。
描き起こしとの違い
「描き下ろし」と似た言葉に「描き起こし」があります。意味は全く異なるもので、日本画の制作過程での用語の意味と模写と似たような意味の2つの意味で使われいます。それぞれの詳しい意味についても解説しましょう。
日本画の制作過程における「描き起こし」は絵具で構成された絵に、線画の作業を施し、入念に仕上げることをいいます。線を加えて対象の輪郭や細部を描きだすようなイメージですね。イラストの業界では下書きのキャラクターイラストをきれいな線に描き起こす作業を「描き起こし」といいます。
「描き起こし」のもうひとつの意味はもともと存在する写真や風景、建造物、フィギュアを見ながらそれを絵にしていくことをいいます。何かがモデルとなって描かれているのが「描き起こし」のもうひとつの意味です。
「描き下ろし」と「書き下ろし」と「掻き下ろし」の違い
「描き下ろし」と同じ音で「書き下ろし」といった言葉があります。ここでは「描き下ろし」の同音異義語として有名な「書き下ろし」と、あまり見慣れない「掻き下ろし」について解説します。
書き下ろしの意味と違い
「書き下ろし」とは、小説などが執筆後に新聞や雑誌などへの掲載を経ずにそのまま書籍化されることをいいます。漫画のコミックスと同じく小説も雑誌などで掲載されてから本になることが多いです。先述したようにコミックスのために描かれたイラストを「描き下ろし」と説明しました。小説の場合も同じで雑誌で掲載せず、直接書籍化されたり、メディアに露出したりすることを「書き下ろし」といいます。
基本的な意味は同じですが文章なのか絵なのかが重要で、文章は「書き下ろし」絵は「描き下ろし」と覚えておくといいでしょう。
また、「描き起こし」と同じように「書き起こし」もあります。「書き起こし」とは文章を書き始めること、または録音音声を文字にすることです。「描き起こし」と同じようにあらかじめ用意されたものを参考にするといったニュアンスが含まれていますね。
「書き下ろし文」は「書き下し文」の誤用
「書き下ろし文」は、漢文(中国語)を日本語で読み解くために語順を並び替えたり、送り仮名で足りない言葉を補ったりした文章「書き下し文」と混合して使われている、誤った表現です。
掻き下ろしの意味と違い
あまり聞きなれない言葉ですが「掻き下ろし」とは、そのままの意味で下の方にむかってかいておろすことです。「屋根に積もった雪を掻き下ろす」のように使います。
「描き下ろし」の類義語・言い換え表現
ここでは「描き下ろし」の類義語について紹介します。
オリジナル作品
「描き下ろし」の類義語として第一にあがってくるのが「オリジナル作品」です。「オリジナル」とは「独創的」・「独自のもの」を意味します。転じて、最初につくられた作品も「オリジナル作品」と呼ばれることがあります。
楽曲でで例えるならば、編曲やアレンジ、カバーなどがされていない作品が「オリジナル作品」に該当します。また、小説や漫画を原作にしないアニメーション作品を「オリジナルアニメ」と呼びます。他にもグッズでは「グッズ限定の描き下ろしイラストを使用」とアピールすることも多いです。
新作
「新作」とは新しく作品を作ること。または、その作品のことをいいます。漫画やアニメ、ドラマなどのエンタメ系作品では「○○シリーズの完全新作」といったように使用されていることが多いですね。また、「新作」と「オリジナル」と「描き下ろし」を混ぜて、「会場限定にお越しくださった方全員に新作の描き下ろしオリジナルカードをプレゼント」と宣伝文句として使われることもあります。
原作
「原作」の意味は翻訳・改作・脚色する前の、もとの作品のことです。例えば、ある小説が有名なテレビ局でドラマ化されたとします。放送されるドラマはもととなった作品があり、その作品のことを一般的に「原作」と呼びます。
新刊
「新刊」は出版用語で新しく刊行された出版物のことをいいます。似た言葉に「新書」がありますが、「新刊」とは全く違います。「新書」とは判型のことで縦17.3×横10.5cm前後の大きさの本のことを指します。
「描き下ろし」の使い方と例文集
「描き下ろし」の使い方と例文について紹介します。
「描き下ろし」の使い方
「描き下ろし」は、コミカライズやグッズを発売するときなどそのメディアで初登場のイラストに使います。漫画雑誌やゲームなどのパッケージイラストに掲載されたイラストなどをグッズや宣伝ポスターに転用することは「描き下ろし」とはいいません。
あるメディアのために描かれた作品であることがポイントです。
「描き下ろし」を使用するときの注意点
「描き下ろし」を使用する際の注意点は漫画やイラストなど「絵」の作品に使います。「書き下ろし」は文章に使うものなので、使い分ける必要があることに注意です。
「描き下ろし」の例文
「描き下ろし」を使った例文は以下のようになります。
- 人気漫画が原作のアニメのBlu-rayボックスは原作者の描き下ろしイラストだ。
- 新作のアニメ映画の特典に色紙が追加される。描き下ろしイラストに声優のサイン入り。
- ファン待望の人気ラノベのスピンオフ作品が発売される。表紙は人気イラストレーターの描き下ろしだ
- 有名な作者の描き下ろしは原稿料が高くなりそうだ。
- 人気イラストレーターが描き下ろしたタペストリーをネットショップで注文した。
「描き下ろし」の英語表現
「描き下ろし」の英語表現は、「newly drawn」
「描き下ろし」を英語で表現する場合は、「newly drawn」と書きます。新たにという意味を持つ「newly」と描かれたを意味する「drawn」を組み合わせたものです。
例文にすると以下のようになります。
- ・The newly drawn ilust is drawn by a famous illustrator .
(その描き下ろしイラストは有名イラストレーターによって描かれたものです。) - The new comics will include a newly drawn story.
(新刊コミックスには描き下ろしのストーリーが掲載されます。) - The bonus for coming to the movie is a color paper drawn by the original author.
(映画の来場特典は原作者描き下ろしの色紙です。)
「newly」を省略しても通じるそうです。
「書き下ろし」との英語表現の違い
「書き下ろし」の場合は「drawn」が「written」になり、「newly drawn」になります。「drawn」が「描いた」に対し「written」が「書いた」です。
例文にすると以下のようになります。
- Tomorrow, a novel written by a famous author will be released.
(明日、有名作家の書き下ろし小説が発売される。) - The script for this stage is noteworthy for its newly written story that took a year to create.
(今回の舞台の脚本は1年かけて作られた描き下ろしのストーリーに注目です。) - A college student’s newly written mystery novel became a bestseller.
(大学生の書き下ろしのミステリー小説がベストセラーになった。)
こちらも「witten」を省略して使うことがあります。
まとめ
「描き下ろし」とはあるメディア、もしくはグッズのために新規で描かれたものです。
「書き下ろし」との違いは「かき下ろされた」のが「絵」か「文章」かの違いになります。表現する場合は正しく使い分けましょう。
「描き下ろし」の類義語として、「オリジナル作品」や「新作」などがあります。