「昏い」と「暗い」は、どう使い分けるか知っていますか?本記事では「昏い」の複数ある意味や例文、類語と対義語を解説します。意味の違いを意識して、「くらい」を使い分けられるようになりますよ。「昏」を使った四字熟語もチェックしてください。
「昏い」の読み方
「昏い」は「くらい」と読みます
「昏い」の意味
「昏い」には、大きく分けて3つの意味があります。意味ごとに説明します。
光が少なく、明るさがない
「日が暮れて光が少なく、明るさがない」様子を、「昏い」といいます。
単に「光が少なくて明るさがない」状態も「くらい」ですが、「昏い」は「日が暮れてくらい」場合に使う表現です。カーテンなどで光を遮断した「真っ暗」ではなく、日が暮れてものがぼんやりとよく見えないような状態を「昏い」で表します。「黄昏(こうこん、たそがれ)」や「昏冥(こんめい)」は、漢字「昏」を「光が少ない」意味で使った熟語です。
ものごとを判断する力がない
「昏い」が表す「明るさがなく、ものがぼんやりとよく見えない状態」が転じて、「ものごとを理解して判断する能力に乏しい、愚かである」意味でも使います。
「知識がない」というよりも、「理解力や判断力が弱い」ために愚かであるというニュアンスです。「愚か」の意味で漢字「昏」を使った熟語には、「昏迷(こんめい)」や「昏愚(こんぐ)」などがあります。
くらむ、目がくらむ
「くらむ」や「目がくらむ」も、「昏い」の意味です。
「くらむ」とは、疲労や何らかの刺激をうけてめまいがしたり、意識がぼんやりとしたり、目が回ったりする状態を表します。何かに心奪われたり、ぼんやりとして判断がうまくできなくなったりする状態も「くらむ」です。「くらむ」意味で漢字「昏」を使った熟語には、「昏迷(こんめい)」や「昏倒(こんとう)」、「昏絶(こんぜつ)」などがあります。「昏迷」は、「ものごとを判断する力がない」と「意識はあるものの、外からの刺激に反応しないぼんやりとした状態」の両方を表す熟語です。
参照:Weblio辞書「昏い」
「昏い(くらい)」の同音異義語と意味
「昏い(くらい)」と同音の言葉と、その意味を紹介します。
「暗い」
「暗い」は、もっともよく使われる「くらい」です。意味は以下の通りです。
- 光が弱い。光が弱くてものがよく見えない、またはまったく見えない。
- 黒みがかった、くすんだ感じの色彩。
- 不幸な感じ、不吉な感じがする。知られたくない事情がある。
- 気持ちが晴れず、沈んだ感じ。また、人に沈んだような印象を与える様子。
- 目が不自由でよく見えない。不自由である。
「冥い」
「おおわれていて光がないさま」または「道理がわからず、愚か」が、「冥い」の意味です。暗さの程度は「昏い」のようにぼんやりとしているのではなく、「真っ暗」を表します。
「闇い」
「闇い」の意味は、「まったく光がない状態」または「分別がない、愚か」です。漢字「闇」は訓読みで「やみ」。「闇夜(やみよ)」や「暗闇(くらやみ)」など、「まったく光がない状態」を表す熟語に使われます。「昏い」よりもさらに光のない状態、いっそう暗い状態を表すのが「闇い」です。
「昏い」を使った例文
「昏い」を使った例文を挙げます。
- 気づくと夕方で、いつの間にか辺りが昏くなっていた。
- どうも彼はマーケティングに関しては昏いようで、マーケティング部に配属されてから失敗ばかりしています。
- 徹夜明けに職場で目が昏くなり、気づいたら医務室で横になっていた。
「昏」を含む四字熟語
「昏い」の「昏」を含む四字熟語を紹介します。
「昏定晨省」
「昏定晨省(こんていしんせい)」は、「親孝行をする」意味の四字熟語です。「昏定」は「夜、両親のために寝床を用意すること」、「晨省」は「朝、両親の機嫌をうかがうこと」を表します。「昏(くれ)には定めて晨(あした)に省かえりみる」ともいい、「昏」は「日暮れ」や「日が暮れて昏くなるころ」の意味です。
「昏天黒地」
「昏天黒地(こんてんこくち)」の意味は「日が暮れて真っ暗な様子」や「ぼんやりして意識がハッキリしないこと」、または「社会や世間の秩序が乱れていること」です。
「昏迷乱擾」
「昏迷乱擾(こんめいらいんじょう)」は「混迷乱擾」とも表記し、「人の心を乱し、判断力を失わせて迷わせる」意味です。「昏迷」は「判断力がない」、「乱擾」は「混乱させること」を表します。
「昏い」の類義語・言い換え表現
「昏い」の類語を、意味ごとに挙げます。
「明るさがない」の類語
「日が暮れて明るさがない」意味の「昏い」の類語と意味は、以下の通りです。
夕闇(ゆうやみ)
日が暮れてから月が出るまでの間の闇、その時間帯。
暮色(ぼしょく)
夕暮れどきの薄暗い色合い、暮れかかった様子。
宵闇(よいやみ)
日が暮れて、まだ間もないころの暗さ。
いずれも「昏い」と同じく「日暮れどきの薄暗さ」を表す類語です。ただ、「夕闇」は薄暗さと時間帯の両方を表す点が異なっています。
「ものごとを判断する力がない」の類語
「物事を判断する力がない」意味の「昏い」の類語は、以下の通りです。
蒙昧(もうまい)
暗いことの意味が転じて、ものを知らずに道理にくらいこと。四字熟語で「無知蒙昧(むちもうまい)」ともいう。
愚昧(ぐまい)
愚かで、道理がわからないこと。
暗愚(あんぐ)
ものごとを判断する能力に欠け、愚かなこと。
疎い(うとい)
ある物事について不案内、知らない。愚かで間が抜けている。
いずれも「ものを知らない」や「無知」だけでなく、「判断力が足りなくて愚か」のニュアンスを含む点が、「昏い」と共通しています。
「くらむ、目がくらむ」の類語
「くらむ、目がくらむ」意味の「昏い」の類語は、以下の通りです。
朦朧(もうろう)
ぼんやりとしてよく見えない。ものごとや意味がはっきりわからない。意識がはっきりしない。
眩惑(げんわく)
目がくらんで、正常な判断ができなくなる。目をくらまし、惑わせること。
瞑眩(めんけん、めんげん)
目がくらむこと、めまい。
惑乱(わくらん)
冷静な判断力が失われるほど心乱れること。人の心を惑わせて乱すこと。
眩暈・目眩(めまい)
目が回ったり、くらんだりすること。平衡感覚の異常や血行障がいなどにより起こる。「眩暈(げんうん)」ともいう。
いずれも「惑わされて判断できない状態」または「肉体的な不調としてのめまい」、あるいは両方の意味をもつ類語です。
「昏い」の対義語
「昏い」の対義語を、意味ごとに挙げます。
「明るさがない」の対義語
単純に「光がない、暗い」の対義語なら「明るい」。「日暮れのころの暗さ」の対義語は「日の出前と日没後の薄明るい状態」を意味する「薄明(はくめい)」です。
「ものごとを判断する力がない」の対義語
「ものごとを素早く理解し、的確に判断できる」意味の「聡い・敏い(さとい)」が、「昏い」の対義語です。「頭の回転が早く、判断力がある」意味の言葉は、ほかにも「怜悧(れいり)」や「英明(えいめい)」、または「利発(りはつ)」と「利口(りこう)」などがあります。「頭の回転が早くて物事の本質を悟れる」意味の「明敏(めいびん)」も対義語です。
「くらむ、目がくらむ」の対義語
「ハッキリしている」意味の言葉が、「昏い」の対義語にあたります。たとえば「明晰(めいせき)」や「明瞭(めいりょう)」、あるいは「明白(めいはく)」などです。いずれも「昏い」と反対の「明るい」を表す漢字が使われています。
「昏い」の英語表現
「昏い」の英語表現を、意味ごとに解説します。
「明るさがない」の英語表現
「gloomy」や「dim」、または 「dusky」が「薄暗い」の英語訳です。とくに「日暮れのあとのほの暗さ」を表す場合は「twilight」。ただし、「twilight」は「日の出前の薄明り」の意味もあります。
「ものごとを判断する力がない」の英語表現
「ものごとを判断する力がない」意味の英語表現は、「stupid」と「silly」、さらに「ignorant」です。これらは「愚かな」の意味が共通しています。「頭の回転が遅い」や「鈍い」ニュアンスなら、「slow-witted」または「dull」です。
「くらむ、目がくらむ」の英語表現
「dizzy」は、「めまい、目が回る」意味の「くらむ」を表します。さらに「分別がない、愚かな」の英語表現です。また「to be blinded by~」の言い回しで、「~に目がくらむ」です。肉体的な「くらむ」にも、分別を失う「くらむ」にも使えます。たとえば「to be blinded by light」で「光に目がくらむ」、「to be blinded by money」なら「金に目がくらむ」です。
まとめ
本記事では、「昏い」には大きく3つの意味があることを中心に解説しました。「日暮れどきの明るさがない様子」と「判断力がない」、さらに「目がくらむ」です。どの「昏い」なのかを考えながら使い分けてください。「昏い」はほとんどが「暗い」と書き換えられますが、意味を知っておくことで言葉を深く理解できるようになりますよ。