「年商何億越え」という言葉を聞いたことがある方が多いのではないでしょうか?会社の規模を表す言葉として「年商」はよく使われます。「年商」の意味を正しく理解し、使えるようになりましょう。間違いやすい「年収」や「利益」との違いも紹介します。
「年商」の意味とは?
年商の意味を正しく理解しているでしょうか?年商が大きければ大きいほど、儲かっている会社と考える方がいます。年商は、会社の1年間の売上総額を示すもので、利益を表すものではありません。ビジネスセミナーで、成功事例として「セミナーを受けたことで年商~倍!」というようなアピールをしてくるものがあります。また、「年商~億越え」というような話題が出ることがあります。実際、年商が上がっていても、利益が上がっていないケースが多々あります。年商の意味を正しく理解しましょう!
会社の1年間の売り上げ総額
年商とは、一年間の会社の総売り上げ額のことです。商売の規模を図るもので、融資や取引の際に、与信調査で参照にされます。ただし、あくまで売上高の総量で、経費は考慮されていないので、年商が高いからといって業績がよいとは限りません。年商だけをみて融資や取引が行われるものではありません。
年商が高くても、赤字はあり得る
年商が高くても、収支が赤字のことはあり得ます。年商がいくら高くても、経費がそれ以上に多い場合は赤字です。商売において大切なのは利益で、年商の規模が大きくなくても経費が少なければ利益が残ります。例えば、年商100億円で、赤字が1億円の会社より、年商1億で利益5000万円の会社の方が、利益が出ていて儲かっているということになります。売り上げを上げながら、経費を抑えていくことが商売では重要です。
参照:Weblio辞書「年商」
「年商」と間違いやすい言葉
「年商」と間違いやすい言葉として、「年収」があります。 会社の規模を表すものとして、「年商」がよくつかわれますが、「年商」が大きいからといって「年収」が大きいわけではありません。「年商」と「年収」の意味を正しく理解していきましょう。
「年収」は個人が1年間に得た総収入
年収は、個人が1年間に得た総収入を表します。サラリーマンであれば、税金や社会保険料を引く前のもので、給料では総支給額となります。個人事業主であれば、年商から経費などを差し引いたものになります。
「利益」は5種類ある
利益とは、一般的には粗利のことですが、粗利を含め「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「純利益」の5種類の利益があります。「粗利」は、年商から売上原価を引いたものです。「営業利益」は、粗利から販売管理費を抜いたものです。販売管理費には、製品を運ぶための人件費や運賃、事業機器のレンタルや事業所などの賃貸料が計上されます。「経常利益」は、営業利益・営業外収益から営業外費用を引いたものです。「税引前当期純利益」は、経常利益と特別利益から特別損失を抜いたものになります。「純利益」は、税引前当期純利益から税金を引いたものです。帝国データバンクなどから情報を入手し、決算書を参照して利益を調べられます。
会社の業績を見るには?
会社の業績を見るには、年商だけでなく、純利益がどれくらい残るか確認することが大切です。それには、会社の決算書を見るとわかります。年商は、商売の規模をはかるバロメーターとなりますが、業績をすべて反映しているものではありません。利益を表す指標や、利益の計算の仕方、決算書の見方を確認しておくとよいでしょう。
最終的に「純利益」がいくら残るか
会社の業績をみるには、最終的に年商の多い少ないではなく、純利益がどれくらい残るかが重要です。年商が多くても、最終的に純利益が少なければ業績は悪いとみられます。反対に、年商が少なくても、純利益が大きければ業績は良いとみられます。
利益は「年商」・「費用」で決定する
一般的に決算書といわれるものには、「キャッシュフロー計算書」「損益計算書」「貸借対照表」があります。このうち、「損益計算書」では、「収益」「費用」「利益」の3つが記載されています。損益計算書は、会社の財務状況を把握するうえで重要なものです。利益は、年商から費用を引いたもので表されます。利益はあまり公表されない数値で、どちらかというと「年商」や「売上高」の方がよく耳にする言葉です。利益があまりにも出ていると、ビジネスシーンでは値下げ交渉されることがあるので、上場企業以外ではあまり公開されません。
「年商」と「売上高」「年収」の違い
「年商」と「売上高」「年収」の使い方や定義の違いについて把握しておきましょう。それぞれ似たような場面で使われる言葉ですが、意味や使い方は違います。対象となる期間や関係性を覚えておきましょう。
違いは期間
「年商」は、企業における年度のすべての売り上げを表します。「売上高」は、企業の一定期間で得た売り上げの総額を表します。「売上高」は本業により獲得した収益で、副業により獲得した収益は含まれません。「売上高」は、企業が期間を自由に定められるのに対し、「年商」は一年間の年度単位と決められています。「売上高」は、企業によっては4半期ごとに区切るところがあり、1年間の中でも、それぞれの時期による売り上げの推移を確認できます。上場企業では、金融商品取引法により、四半期に1回の財務会計の報告が義務付けられています。また、企業が持っている機械などの固定資産を売却したときは、原則固定資産売却損益として、特別損益に計上します。
「年商」と「売上高」の関係性
「年商」と「売上高」の使い方の違いを覚えておきましょう。「年商」は、企業の規模をはかるものとして使われるのに対し、「売上高」は、企業の内外問わずに使える具体的な指標で、4半期ごとや上半期・下半期ごとの売り上げの推移をみるときに使われます。一般的に、「売上高」の方が、「年商」よりも細かく報告され、ビジネスの場面で使う頻度が高い言葉です。
「年商」の調べ方と見るときの注意点
「年商」の調べ方や、見るときの注意点を確認しておきましょう。「年商」をみるときの注意点は、利益や経費がどれくらいでているのかチェックすることです。年商ばかり強調しているときには、業績の実態を隠していることがあるので、注意しましょう。
成功事例では「年商」がクローズアップされがち
ビジネスにおいて、会社の成功事例として、「年商」がクローズアップされやすいです。よくあるビジネスの成功セミナーでは、「年商」ばかり強調していますが、年商が高くても経費がかかっていることがあるので、年商が高い社長でも年収が低いことがあります。ビジネスセミナーでは、わざとあいまいにしているケースがあるので注意が必要です。ビジネスセミナーに出るときには、年商だけでなく、利益面をみていくとよいでしょう。
「年商」は「年収」よりも多額に表現される
「年商」は、「年収」よりも多額になります。「年収」は、年商から経費を引いたもので、個人の1年間の所得を表します。対して「年商」は会社の規模を表すものなので、「年収」よりは金額は大きくなります。対象が会社と個人の違いがあるので、確認しておきましょう。
「年商」の英文
ビジネスにおいて、英語でやり取りをする方は、「年商」を表す英語表現を覚えておきましょう。現代では、海外の業者と取引をすることがある方も多いのではないでしょうか。英語表現を覚えておき、取引の時に困らないようにしましょう。
annual business
「年商」を表す英文として、「annual business」が使われます。「annual business plan」で「年次事業計画」などの意味になります。
annual sales
「年商」を表す英文として、「annual sales」が使われます。「annual sales forecast」で「年間販売予想」などの意味になります。
まとめ
ビジネスシーンにおいて、「年商」の正しい意味と使い方を覚えておきましょう!「年商」は、会社の規模を表す指標で、会社の業績をすべて表すものではありません。業績を見るのは主に「利益」で、「年商」と似たような言葉である「年収」や「売上高」との違いも把握して、ビジネスシーンで正しく使えるようになりましょう。