「スパン」は、ビジネスシーンではある時間の幅や期間を指すことが多いカタカナ語です。「短いスパンで」や「スパンがあいている」などと使います。この記事では「スパン」の類義語や、分野別の細かい意味の違いも紹介します。
「スパン」の意味とは?
「スパン」とは、時間的な間隔と2つの支点柱間の距離を差す言葉です。文脈により、どちらの意味になるかを判断する必要があります。
1.時間的な間隔
「スパン」の意味のひとつが時間的な間隔や、区切られた時期です。「5年スパン」は「5年の期間」、「短いスパン」は「短期間」の意味になります。「スパンを広げる」などと時間を可視化し、もののように扱っている言葉です。
2.2つの支点柱間の距離
「スパン」には2つの支点柱間の距離の意味もあります。2つのアーチや梁、橋梁などの間の距離、梁間や支間、わたりなどが「スパン」です。また、飛行機の両翼の先端同士を結んだ距離である翼幅のことも、「スパン」といいます。
「スパン」の由来・語源
「スパン」は英語の「span」が語源のカタカナ語です。名詞「span」の意味は「スパン」とほぼ同じで、期間や時間、長さや距離、範囲、飛行機の翼幅などです。「span」の由来はゲルマン祖語の「spannana」で、引っ張ったときの長さを意味します。
業種・分野別の「スパン」の意味
「スパン」はさまざまな場面で使われていますが、業種や分野別に意味が異なります。以下では5つの分野について、「スパン」の詳しい意味を解説します。
1.アパレル・ファッション
アパレル・ファッション分野の「スパン」とは、糸の一種です。「スパン糸」とは短い繊維をより合わせてできた糸で、原料にはウールやリネン、コットンが用いられます。表面が毛羽立っていてふくらみがあるのが特徴で、縫い糸や生地の素材に使われています。
2.不動産
不動産分野ではマンションの開口部を「スパン」といいます。マンションの広告では、窓のある南向きの間口の長さを「スパン」としていることが多くあります。
3.建築
建築分野の「スパン」とは、2本の柱間や柱と壁との間をいいます。2本の柱間とは、柱の中心からもう一つの柱の中心部分までで、図面にも数値で表記されています。日本建築のわたりや梁間(はりま・りょうかん)は「スパン」にあたります。
4.IT
IT分野で使われている「スパンボリューム」とは、WindowsOSのディスク管理方式のことです。複数のディスクの空き領域をつなげ、ディスクサイズよりも大きなボリュームにできます。フォーマットして使い始めた「スパンボリューム」に領域やディスクを追加することは可能ですが、システム障害に対応できる冗長性はありません。そのため、連結しているディクスドライブのうち1台でも不具合になってしまうと、「スパンボリューム」内のすべてのデータにアクセスできなくなるデメリットもあります。また、1枚の壁紙を2つのモニターにまたいで表示させる方法も「スパン」といいます。
5.経営
経営分野での「スパン」とは、管理職一人が直接管理できる業務範囲と部下の人数のことで、経営学用語では「スパン・オブ・コントロール」ともいいます。「スパン・オブ・コントロール」は業務をマニュアル化したり、部下に権限を与えて自分の裁量でできることを広げたりするなどと工夫すれば、拡大も可能です。一方で業務範囲を広げすぎると、部下の声が管理職や上層部に届きにくくなるデメリットもあります。
「スパン」の類義語・言い換え
時間的な間隔をいう「スパン」の類義語には、「ターム」や「ピッチ」、「ピリオド」など時間と間隔を指す言葉があります。ニュアンスや使い方は多少異なるので、それぞれを確認しておきましょう。
1.ターム
「ターム」とは、限定された時間や決められた一定期間、期限をいいます。もともと持つ「終わり」の意味が転じて、「境界や境目」の意味を持つようになりました。たとえば学校の1つの学期や議員の任期、契約期間などが「ターム」です。「ターム」の期間は基本的に変更しませんが、「スパン」の期間は状況や必要に応じて変更する点が異なります。
・業務目標は、タームごとにわかりやすく設定してほしい。
・ビジネスタームの中期とはおおよそ16〜60カ月で、それ以上は長期である。
2.ピッチ
「ピッチ」には「歯車の2つの歯の間の長さ」のほか、「連続して繰り返し行うことの回数と速さ」の意味があります。また、繰り返される期間のことも「ピッチ」です。たとえば「5年スパン」の事業計画を進行しているとき、会議で進捗を報告する単位の1カ月が「ピッチ」にあたります。
・納期に間に合わせるには、仕事のピッチを上げないといけない。
・この計画の進捗報告は、しばらくの間1週間ピッチでお願いしたい。
3.ピリオド
「ピリオド」とは、「ある時間の始まりから終わりまで」や、「時間をいくつかに区切ったうちのひとつ」のことをいいます。スポーツの前半戦と後半戦、学校の授業時間、歴史上のある特定の時代など、繰り返される時間間隔に対して使われることが多い単語です。
4.期間
「ピリオド」とは、「ある時間の始まりから終わりまで」や、「時間をいくつかに区切ったうちのひとつ」のことをいいます。スポーツの前半戦と後半戦、学校の授業時間、歴史上のある特定の時代など、繰り返される時間間隔に対して使われることが多い単語です。英語の「.(period)」や日本語の「。(終止符)」が語源で、「ピリオドを打つ」とは、長く続いていたことが終わる、終止符を打つことをいいます。
・Aチームは第2ピリオドまでは負けていたが、第3ピリオドで逆転して勝利した。
・60年以上の長い歴史に、ピリオドを打った。
5.間隔
「間隔」とは、複数のものや、ものごとの間の距離のことです。もの同士なら物理的な距離を、ものごと同士では時間的な距離を表現できます。
・この薬を飲むときは、食事から3時間は間隔をあけるようにと指示された。
・体操をするので、前後左右の人と間隔をあけて並ぶ。
6.時間
「時間」とは、2つの時刻間の長さのことです。午前11時と午後2時は「時刻」で、その間の3時間が「時間」です。
・パーティーの開催時間は、19時から21時までと聞いている。
・この作業を終えるまでには、かなりの時間がかかりそうだ。
「スパン」の使い方と例文集
「スパン」の使い方を、例文とともに紹介します。ビジネスシーンで多く耳にする言葉なので、戸惑わずに使えるようにしておきましょう。
「スパン」の使い方
「長い(短い)スパン」とは、ある時間や期間の幅が長い(短い)ことをいいます。同様の使い方には「長期(短期)スパン」もありますし、具体的な期間をつけて「3年スパン」のように使うことも。「スパンがあく」とは、時間的な間隔があくことです。久しぶりであることは「前回からスパンがあいた」と表現できます。「スパン」の幅は自由に設定できるため、「スパンを広げる・縮める」とも使います。
「スパン」の例文
「スパン」を使った例文を5つ紹介します。
- 転職と退職とのスパンが短い人は、次の転職で不利になるおそれがある。
- 今回のプロジェクトは、長期スパンで進める計画だ。
- 短いスパンで問題対応をしているだけでは、根本的に解決できないかもしれない。
- これ以上管理職のスパンを広げると、部下への指導が行き届かないという声もある。
- 来月からの新人事制度では、昇級試験が1年スパンで行われるらしい。
「スパン」の英語表現
「スパン」の英訳は「span」で、「a span of three years(3年間)」や「average life span(平均寿命)」、「for a short span of time(短期間に)」などと使います。
・Extend the span more for five weeks.(スパンをもう5週間ひろげる)
・Life is but a span.(人生は長くない=人生はかげろうの如し)
まとめ
ビジネスシーンでの「スパン」とは、時間的な間隔や区切られた時期のことをいいます。「10年スパン」や「スパンが短い」、「スパンを広げる」などの使い方があるので、意味とともに知っておきましょう。