「踵を返す」は「引き返す」「Uターンする」という意味です。「くびすを返す」「踝を返す」と表記することもありますが、意味は同じです。本記事では「きびすを返す」という言葉の由来や使い方、類語、英語表現を例文を交えて紹介します。
「きびすを返す」の意味とは?
皆さんは「きびすを返す」の意味を正しく理解できているでしょうか。中にはあまり聞いたことがない言葉だと感じる人もいるかもしれませんが、実際に使われている意味を見ていきましょう。また、「きびす」の意味や由来、漢字についても触れていきます。
「踵を返す」の意味は「引き返す」「Uターンする」
「きびすを返す」の読み方は「きびすをかえす」です。この言葉には「引き返す」や「Uターンする」といった意味があります。これは今まで進んでいた方向とは真逆の方向を向き、遠ざかって歩く様子を表しています。
「くびすを返す」「踝を返す」と別の表記をすることもありますが、意味は全く同じです。日常会話やビジネスシーンではあまり聞き慣れない言葉ですが、文学作品などでときどき使用されているため、覚えておいて損はないでしょう。
「きびす」は漢字で「踵」で「かかと」の意
「きびす」は漢字で書くと「踵」となり、身体の一部である「かかと」の意味を持ちます。すなわち「きびすを返す」はかかとを反転させて反対方向に進むさまを表しています。なお関東圏では「きびす」という言葉はあまり使いませんが、関西圏では現在も使用されることがあります。
諸説ある「きびす」の由来の中で最も有力なのが、くるぶしから先の部分を示す「くびひす」または「くひびす」という単語が「きびす」に変わった説となります。古くは「くびひす」もしくは「くひびす」と呼ばれてきたものの、次第に「きびひす」と変化していき、最終的に「きびす」になったといわれています。
もう1つの由来は、足首よりも下の部分を示す「くびし」という言葉が次第に「きびす」に変化した説です。
「きびすを返す」の類義語・言い換え
「きびすを返す」は別の言葉での言い換えできるのでしょうか。以下では「きびすを返す」の類語や、かんたんに言い換える方法を紹介します。
「きびすを返す」の類語には「きびすを巡らす」や「馳せ戻る」、「とんぼ返り」などがあります。ここではそれぞれの表現を分解して解説していきます。特に「とんぼ返り」は一般的によく使用する言葉ですが間違えやすいので、正しい書き方を理解しておきましょう。
「きびすを巡らす」は「回らす」にも置き換え可
「きびすを返す」の類語の1つに「きびすを巡らす」があります。どちらもよく似ていますが、日常では「きびすを返す」の方がより一般的に使用されています。
なお「巡らす」は「回らす」という漢字にも漢字に置き換えたり、ひらがなの「めぐらす」と記したりして使用でき、いずれも「ぐるりと回す」という意味があります。「巡らす」を文中で使用する場合、「家の周りに垣根を巡らす」「思いを巡らす」といったように用いられます。
「馳せ戻る」は「走って戻る」の意味
「きびすを返す」の類語である「馳せ戻る」には「走って戻る」「大急ぎで戻る」の意味があります。「馳せ戻る」という言葉を分解してみると「馳せる」と「戻る」になりますが、「馳せる」はあまり使用頻度が高くないのではないでしょうか。
「馳せる」には「速く走る」や「気持ちや考えを遠くに至らせる」、「名前などを広くいきわたらせる」の意味があり、文中では「車を馳せて急ぐ」「思いを馳せる」「名を世界に馳せる」といったように使用できます。
「とんぼ返り」は「とんぼ帰り」ではないので注意
「きびすを返す」の類語である「とんぼ返り」は、出先から真っ直ぐ帰ってくることを表します。ビジネスシーンであれば「出張先からとんぼ返り」するといったように使われます。
なお間違えやすいですが「とんぼ返り」はもともと、とんぼが宙返りして戻ってくる様子から由来しているため、「とんぼ帰り」とは書かない点に注意しましょう。「蜻蛉返り」「トンボ返り」と書き換えることもできます。
「きびすを返す」をかんたんな言葉に言い換えたい場合「来た道を戻る」や「引き返す」が使用できます。堅い印象を与えたくない場合やカジュアルなシーンではこちらを使用するとよいかもしれません。
「きびすを返す」と間違いやすい言葉
「きびすを返す」には間違いやすい言葉が存在します。「きびす」を使う似ている言葉でも、実際は全く違う意味で用いられることもあるため、いくつか例を見ていきましょう。
「きびすを接する」
「きびすを接する」には意味が2つあり、1つは「次々と人が続くさま」を表しており、前後の人がかかとを接するほど近づいている様子から来ています。
もう1つは「物事が続けざまに起こる」という意味です。なお「きびすを接する」と同じ意味の言葉には「きびすを接ぐ」があります。文中で使用する場合、「テーマパークできびすを接する混雑が起きている」「きびすを接して事件が続く」といったように用いられます。
「きびす返し」
「きびす返し」は柔道用語で、相手の足首を片手で刈るようにして後ろへ倒す技のことを指します。
「きびすを返す」と同じく「返す」を使う言葉として「手のひらを返す」がありますが、これは言葉や態度が今までとは大きく変わる様子を表しています。日常会話でもよく使われ、「昨日とは手のひらを返したように言っていることが違う」というように用いられます。「手の裏を返す」と書くこともありますが、意味は同じです。
「踵を踏む」
この場合「踵」は「かかと」と読み、「前の人のすぐ後ろについていく」という意味を持ちます。単に文字通り「かかとを踏みつける」という意味になるとは限らない点で注意が必要です。「私は彼の踵を踏んで学校までやって来た。」といったように使用します。
「きびすを返す」を英語でいうと?
「きびすを返す」を英語で書くとどうなるのでしょうか。実際に使用することを想定し、対応する英語表現をいくつか確認しておきましょう。
「きびすを返す」は英語で「turn on one’s heel」
「きびすを返す」の英語表現の1つに「turn on one’s heel」があります。この熟語を分解してみると「turn」は「回す」、「on one’s heel」は「~のかかとで」という意味になります。直訳すると「かかとを支点に回る」となり、すなわち「きびすを返す」と同じ意味になります。
なお「heel」は「heels」と複数形で書くこともあります。また、「きびすを返す」は「引き返す」とも同じ意味を持つため、別の表現として「turn back」「go back」などと言い換えることもできます。
「きびすを返す」の英語の例文
ここで「きびすを返す」の英語の例文を確認していきましょう。
- She turned on her heel and stormed out right away.(彼女はくるりときびすを返すと、すぐに外に飛び出して行った。)
- He turned on his heel and went back home last night. (彼は昨晩きびすを返して家に帰っていった。)
- The man turned back to his office.(彼は事務所へ引き返していった。)
- Are you going back without chatting with him?(彼とお喋りせずに戻るのですか?)
「きびすを返す」の使い方と例文集
実際の場面で「きびすを返す」を正しく使用するために、使い方や例文も確認しておきましょう。
「きびすを返す」の使い方
「きびすを返す」はどこかに向かっていた際に、進行方向を逆に変えて戻っていく場面で使用できます。口語で使用することは稀です。
「きびすを返す」の例文
「きびすを返す」の例文は以下の通りです。
- 知らせを受けてきびすを返して家に駆け戻る。
- 重要な書類を置き忘れてしまったので、きびすを返して会社へ戻った。
- 出かけたばかりの夫がきびすを返して戻ってきた。
- 道を間違えてしまったので、きびすを返して来た道を戻った。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は「きびすを返す」について解説しました。
「きびすを返す」は、これまで進んでいた方向と逆方向に戻ることで、「引き返す」や「Uターンする」と同じ意味を持ちます。口語やビジネスシーンではあまり見かけませんが、文学作品などで使用されている表現です。特に「きびすを接する」「きびす返し」など非常に似た表現もあるため、用法を誤らないように注意しましょう。
最後に「きびすを返す」のまとめです。
- 「踵を返す」は「引き返す」「Uターンする」という意味です。
- 「くびすを返す」「踝を返す」と表記することもありますが、意味は「きびすを返す」と同じです。
- 「きびすを返す」は「きびすを巡らす」「馳せ戻る」「とんぼ返り」などに言い換えられます。
- 「きびすを返す」と間違いやすい言葉には「きびすを接する」「きびす返し」「踵を踏む」などがあります。
- 「きびすを返す」の英語表現は「turn on one’s heel」です。