「指示を仰ぐ」は「目上の人に対して指示を求める」という意味を持ちます。ビジネスシーンにおいて必要不可欠な行為ですので正しく使いたいですよね。ここでは、使い方のポイントや注意点・敬語表現・類語や言い換え・定型文・英語表現について解説します。
「指示を仰ぐ」の意味とは?
ビジネスシーンで耳にする「指示を仰ぐ」という表現。正しい意味を知っていますか?日常的に使うフレーズなので、きちんと意味を理解した上で使えるようになりたいですね。
意味は「目上の人に対して指示を求める」
「指示を仰ぐ」は「しじをあおぐ」と読みます。ビジネスシーンでは「上司の指示を仰ぐ」「メールで指示を仰ぐ」といった使われ方をし、「目上の人に対して指示を求める」ことを意味します。自分では判断のつかない事案について上司の指示を得るという、ビジネスにおいて重要不可欠なスキルの一つです。
「仰ぐ」の持つ意味
なぜ「指示をもらう」や「指示を得る」ではなく、「仰ぐ」なのでしょう?国語辞典を引くと、「仰ぐ」には6つの意味があります。
- 上の方を向いて見る
- たっとぶ。尊敬する
- (命令・教え・助力などを)求める。うける。請う
- 尊敬してある地位についてもらう
- 敬い迎える
- (毒・酒などを)一息にのむ。あおる
「指示を仰ぐ」では3の意味で使われていますが、それ以外にも目上に対して尊敬し敬うといった意味を持つ単語であることがわかります。「指示を仰ぐ」は、指示を出す相手への敬意が込められた表現といえます。
「指示を仰ぐ」ときのポイントと注意点
実際に「指示を仰ぐ」場合には、いくつかポイントと注意点があります。スマートに指示を仰げるよう、次の4ステップを確認しておきましょう。
正しいタイミングを見極める
まずは「指示を仰ぐ」タイミングを見極めることが重要です。自身で判断がつかない・判断に自信が持てない場合は、速やかに上司に指示を仰ぐとよいでしょう。
指示を得るのが遅れることによって、プロジェクトの進捗や顧客への対応に遅れが出ることは避けるべきです。ビジネスでは一歩先を見て、先手で動くことが大切です。また、「指示を仰ぐ」ときには「○○の件でご相談させていただきたいのですが、今お時間いただけますでしょうか?」と上司の都合を確認することも忘れずに。
欲しい指示内容を明確に伝える
指示を求める内容や置かれている状況については簡潔にまとめます。情報伝達に必要な要素である5W1H、つまり「When:いつ」「Where:どこで」「Who:誰が」 「What:何を」「Why:なぜ」「How:どのように」に沿って整理すると内容が伝わりやすくなります。
また、ただ状況を伝えて指示を求めるだけでは、自分では何も考えていない印象を上司に与えてしまいます。自分なりの考えや仮説も、あわせて伝えるようにしましょう。そうすることで、欲しい指示内容がより明確になり、仕事に取り組むあなたの姿勢も評価されます。
指示を正確に理解し、記録する
上司の指示を聞く際は必ずメモを取りましょう。最後まで話を聞いたあとに、必要な要点を復唱して確認することも重要です。ビジネスにおいては具体的な数字情報(数値・価格・日程など)は特に間違えがあってはならないので、細心の注意を払います。
また、上司の話の途中で質問や補足したい箇所があったとしても、一旦は話を全て聞いてから伝えましょう。上司は忙しい時間を割いて対応してくれているのですから、話を聞く真摯な姿勢も大切です。
結果を報告する
指示を求めた案件については、その事案が完了したときには必ず結果を報告しましょう。その際、(上司からの)指示のおかげでプロジェクトが成功したなどの感謝の言葉も忘れずに伝えます。
ビジネスシーンにかかわらず、相談した相手には結果を報告するのはマナーです。上司との良好な関係を築くためにも、社会人としてのマナーはきちんと押さえましょう。
「指示を仰ぐ」の敬語表現は?
「指示を仰ぐ」は敬語表現ではありません。「仰ぐ」には相手を敬う意味が含まれていますが、尊敬語ではないので注意が必要です。正しいビジネス敬語を覚えて相手に失礼のないようにしましょう。
尊敬語「ご指示を仰ぐ」
「指示を仰ぐ」という表現を目上の方に対して使いたい場合は、尊敬を意味する接頭語「ご」を「指示」の前に付けます。「ご指示を仰ぐことは可能でしょうか?」などとすることで、敬語表現として使用できます。
実際にビジネス敬語として使うときは?
実際にビジネス敬語として使う場合の例を挙げておきます。
- ご指示いただけますようお願い申し上げます。
- ご指示いただきたくお伺いしました。
- 情報誌に載っている有名人のゴシップ記事には辟易している。
- 子供の野球をやりたいという熱意に圧倒され、辟易してしまった。
尊敬の接頭語「ご」を「指示」に付け、「もらう」の謙譲語「いただく」のように、その後の文章を謙譲表現にすることで自然な敬語として使用できます。
「指示を仰ぐ」の使い方と定型文・例文
「指示を仰ぐ」はどのように使うのでしょうか。また、覚えておく便利な定型文や具体的な例文を紹介します。
「指示を仰ぐ」の使い方
「指示を仰ぐ」には、相手と対面で行う方法とメールなどの文面で行う方法があります。対面では細かい確認もその場ですべて済ませられます。緊急性が高い場合はメールではなく対面で相談をするようにしましょう。メールでは相手の回答を待つ時間や不足情報の確認など、時間のロスをする可能性があります。また、いずれの方法でも「〇〇の件でご指示をいただきたい」という目的を最初に伝えることが大切です。目的を明確にすることで、相手も話を聞きやすくなります。
定型文
指示を仰ぐときに便利な定型文を紹介します。
- ご指示を仰ぎたく存じます。
- お教えいただきたく存じます。
- ご教示いただけますでしょうか。
- ご指南いただけますでしょうか。
- 情報誌に載っている有名人のゴシップ記事には辟易している。
- 子供の野球をやりたいという熱意に圧倒され、辟易してしまった。
文末の表現は、状況や相手との関係性によって変えて使えます。例えば「ご指示を仰ぎたく存じます」を「ご指示を仰ぎたくお願い申し上げます」にすれば、より丁寧で依頼要求が強い印象に。
例文
「指示を仰ぐ」例文を紹介します。
対面で:
- 部長、〇〇の件で先方への回答についてご教示いただきたいのですが、お時間をいただけますでしょうか。
- 〇〇の件については、私個人では判断致しかねます。今後の営業方針を踏まえ、ご指示をいただけますでしょうか。
メールで:
- 次回の営業会議の場所ですが、通常のA会議室が補修作業で使用できないため、B会議室を予約しました。B会議室にはプロジェクターの設置がないのですが、会議の内容的に問題ございませんでしょうか。また、他にも必要機材がございましたら、ご教示いただけますようお願い申し上げます。
- 〇〇のプロジェクトについては、私の未経験分野であり不慣れな部分がございます。現場の進行など含め、ご指南いただけますでしょうか。
- 情報誌に載っている有名人のゴシップ記事には辟易している。
- 子供の野球をやりたいという熱意に圧倒され、辟易してしまった。
「指示を仰ぐ」の類義語・言い換え
「指示を仰ぐ」には次のような類義語や言い換え表現があります。あわせて覚えておきましょう。
「指示を仰ぐ」の類義語
・「判断を仰ぐ」
「判断」とは「物事について真偽・善悪などを見極めて決めること」また「決めた内容」を意味します。「さしずすること・命令」を意味する「指示」とは異なる意味を持ちますが、ビジネスでは上司が判断したことを部下が遂行するので、「判断を仰ぐ」は「指示を仰ぐ」と非常に似た意味をもつ表現です。
・「指導を仰ぐ」
「指導」とは「ある目的・方向に向かって教え導くこと」を意味します。上司に教えを乞うという点では共通しますが、直接的に動きを指図する「指示」とは異なりますので、具体的な案件について相談をしたい場合には適しません。
・「意見を仰ぐ」
「意見」は「ある問題に対する主張・考え」を意味します。「意見を仰ぐ」は「指示を仰ぐ」と近い意味を持ちますが、上司の考えを聞くという範囲に止まり、「指示」や「判断」のような強い意味合いは持ちません。
「ご教示」と「ご教授」
「教示(きょうじ)」は「知識や方法などを教え示すこと」、「教授(きょうじゅ)」は「学問や技芸を教え授けること」を意味します。
「ご教示いただく」「ご教授いただく」はいずれも教えを乞う表現で、「指示を仰ぐ」とは近い意味合いを持ちます。尊敬を意味する接頭語「ご」を付けて使いましょう。
熟語「ご指導ご鞭撻のほど」
「ご指導ご鞭撻のほど(ごしどうごべんたつのほど)」も「指示を仰ぐ」と似た表現です。「指導」は「ある目的・方向に向かって教え導くこと」、「鞭撻」は「努力するように励ますこと(鞭を打つという意味もあります)」を意味します。
「ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます」のように使うことで、目上の方が自分に指導をいただくことを敬う表現になります。スピーチやメールの最後に「今後の付き合いをよろしくお願いします」といった意味を込めて使えるフレーズです。
「指示を仰ぐ」を英語で言うと?
「指示を仰ぐ」を英語で言う場合は「ask for instructions」というフレーズを使いましょう。「ask for 〜」は「〜を求める」「〜を要求する」という意味の熟語、「instructions」は「指示」を表す名詞「instruction」の複数形です。
「〜に指示を仰ぐ」は「ask 〜 for instruction」という構文を使用し、「I asked my boss for instruction on the project.」(私はそのプロジェクトについて上司に指示を仰いだ。)のように表現できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は「指示を仰ぐ」について解説しました。
ビジネスにおいて「指示を仰ぐ」ことは日常茶飯事。上司と良好な関係を築き、ビジネスを円滑に進めるために、正しい使い方をマスターしたいですね。
最後に「指示を仰ぐ」のまとめです。
- 「指示を仰ぐ」は「しじをあおぐ」と読みます。
- ビジネスシーンでは「上司の指示を仰ぐ」「メールで指示を仰ぐ」といった使われ方をし、「目上の人に対して指示を求める」ことを意味します。
- 「指示を仰ぐ」ときのポイントは指示を求める内容や置かれている状況については簡潔にまとめることです。
- 「指示を仰ぐ」は敬語表現ではありません。目上の方に対して使いたい場合は、「ご指示を仰ぐことは可能でしょうか?」のように使います。
- 「指示を仰ぐ」の類義語は「判断を仰ぐ」「指導を仰ぐ」「意見を仰ぐ」です。
- 「指示を仰ぐ」を英語で言う場合は「ask for instructions」というフレーズを使います。