「感謝の言葉」を伝えることはビジネスシーンではよくありますが、形式的になってしまったり、逆に失礼になってしまったりすることがあります。メールで伝える場合を含めて、よりよく「感謝の言葉」を伝えるポイントを解説します。
話し言葉・友達に使える「感謝の言葉」の例文
日常的な場面で、さりげなく出る「感謝の言葉」は人間関係を良好にするばかりでなく、仕事の能率アップにもつながります。
- 昨日はありがとう
- いつもきれいにしてくれてありがとうございます
「ありがとう」は「有り難し」が語源とされ、「滅多にないこと、得難い機会」のような意味になります。友達や同僚には「ありがとう」の一言で十分でしょう。少し距離のある関係の方や、直属の上司などには「ございます」を付けることで丁寧な表現になります。
- 先日はお世話になりました
- おかげさまで例の件はうまくすすめられました
少しかしこまった言い方にはなりますが、日常的な場面でも使える言葉です。「ありがとうございます」よりも具体的な感謝の対象が明確なので、気持ちが伝わりやすくなります。
ビジネスシーンでよく使う「感謝の言葉」の例文
過分なお気遣いをいただき、恐縮に存じます
ビジネスシーンでは、相手を立て自らがへりくだる謙譲語の表現が重要になります。「気を遣ってもらってありがとう」と伝えるのにも、気遣いは「いただく」ものであり、「感謝の言葉」は身を縮む思いという意味の「恐縮」を用います。
これはこれはご丁寧に、こちらこそよろしくお願い申し上げます
取引先の方からご挨拶をいただいたときなど、このような表現が役に立ちます。「これは」を重ねて言うことで恐れ入っている感情を伝えられます。「これはこれは素晴らしい頂きものを」や「これはこれはわざわざご来社いただき…」などの使い方もありますね。
恩師の先生や目上の人に使う「感謝の言葉」の例文
先生には、このたび論文発表に際し、格別なるご高配をいただき、拝謝申し上げます
お世話になった先生など、目上の方に対する「感謝の言葉」は、言葉もさることながら文章全体で尊敬の念を示す必要があります。大切なのは、まずしっかりした敬語を使うことです。「ご高配」は「配慮」の尊敬語で、相手が行った行為は尊敬語で書くのが基本です。「拝謝申し上げます」は、自分から相手に対する感謝を伝えるために最大級の謙譲語を用いています。次に注意するのは、何についての謝意なのかを明確にすることです。何について感謝しているのかが漠然とした文面では、相手によけいな気を遣わせることから失礼にあたります。
メールでよく使う「感謝の言葉」の例文
- 平素より大変お世話になっております
- 弊社までご足労いただき感謝申し上げます
- ご協力いただき誠にありがとうございます
- ご協力いただき誠にありがとうございます
- 会食にお招きいただき有難く存じます
- 資料を添付いたしましたので、ご査収ください
- 取り急ぎお礼まで申し上げます
メールで重要なのは簡潔かつ明瞭に用件を伝えることです。最初に短く日頃の感謝を述べます。「感謝の言葉」は敬語が基本なのは変わりません。メールでは相手の反応を見ながらというわけにはいきませんので、いつの、何に対する「感謝の言葉」なのか明らかにすることも大切です。件名でも「〇〇についての御礼」などのようにわかりやすく示しましょう。本文の冒頭や、末尾の署名などで発信者を明確にすることも忘れてはいけません。そして大事なのは発信のタイミングです。確実に相手に伝わり、かつ通知音などが鳴っても差し支えがない時間帯を考慮して発信するように心がけましょう。
「感謝の言葉」の英語例文
「感謝の言葉」はコミュニケーションの重要なツールですので、英語においても多様な言い方があります。
Thank you so much.(どうもありがとうございます)
もっとも一般的に使われる例文です。口をついて出るようにしておきたいフレーズです。
Thank you for calling me.(電話をいただいてありがとうございます)
何かしてもらったことに対する表現は、Thank you for~、で言い表せます。具体的な感謝の対象を明らかにするのは気持ちを伝えるうえでも重要です。
I appreciate your support.(あなたの援助に感謝いたします)
ビジネスシーンでよく使われるappreciateは、人ではなく行為に対して感謝します。ここでは「援助」に対して感謝しているわけです。
I am indebted to you for this.(このたびはお世話になりました)
大きな助力を得たときなど、かしこまった言い方として使われます。
有名人の「感謝の言葉」の名言集
感謝に関する言葉には印象的なものがたくさんあります。有名人の言葉を3つ紹介します。
「感謝の心が高まれば高まるほど、それに正比例して幸福感が高まっていく」(松下幸之助)
世界的な大企業の創業者の言葉です。「感謝の言葉」は相手のために用いるものですが、実は自分自身の心のためなのですね。
「感謝は、過去を意味あるものとし、今日に平和をもたらし、明日のための展望を創る」(メロディ・ビーティ)
アメリカの作家の言葉です。「感謝の言葉」が時間の流れの中で、生き方を考える基盤となることを示しています。
「お礼を言っても、心で感謝してないのは、「お礼お礼詐欺」だよ」(ながれおとや)
なぞなぞ作家のことばです。ウィットに富んだ一言ですね。
「感謝の言葉もない」の使い方
「昨日の件では、感謝の言葉もありません」この文をどういう意味に受け取りますか?「感謝の言葉もない」は裏表のある言葉なので、使い方には注意が必要です。
2つの意味がある
「昨日の件では(とてもよくしてもらったので)感謝の言葉が言えないほど感謝している」という意味に受け取る人が多いでしょう。確かに「感謝の言葉もない」は、言葉に尽くせないほどの感謝の念があります、という慣用的な表現として用いられます。
しかし「昨日の件では(あなたの方から)感謝の言葉さえ言ってもらっていない」という意味に受け取ることもできます。一般に「~もない」という表現は「当然あるべきものさえないことをさげすむ表現」としても使われます。「あれだけしてやったのに挨拶一つもない」のような場合ですね。文脈から判断できることがほとんどではありますが、誤解を招かないようにしっかりと気持ちを伝えるようにしましょう。
「感謝の言葉」を伝えるときに避けたい表現
「感謝の言葉」を伝えるときには、最も重要なのはそこに込められた気持ちを伝えることです。ふさわしくない表現を使ってしまうと肝心の気持ちが伝わらなくなってしまいます。
あまりにも堅苦しい表現は考えものです。同僚などふだんから付き合いのある人に「ご高配を賜り」などとやってしまうと、いかにも空々しく聞こえてしまいます。またよく「ありがたいです」「感謝したいです」のように「~たい」という表現を使う人がいますが、こういった婉曲的な表現は最近は避けられる傾向にあるので注意が必要です。さらに一般常識として、訃報などの不幸に関わるときは「ありがとうございます」を避け、「恐れ入ります」を使うことがよいとされています。
「感謝の言葉」を伝えるポイント
「感謝の言葉」はただ言えば伝わるというものではありません。伝え方によって、より効果的、印象的に相手に気持ちを伝えられます。
素直な感謝の気持ち
「感謝の言葉」を敬語に注意してとか、言い回しを変えてとか、表面的なことにとらわれすぎると本当の気持ちが伝わらなくなるものです。まず素直に自分の「ありがとう」という気持ちを込めることを意識しましょう。「今日は来社いただきありがとうございました」というときに、時間も取ってしまったな、と思えば「~貴重なお時間を頂戴して~」と一言添えるのもよいことです。「まことに」「大変」など意味を強める言葉を使うことも、素直な感謝を表すうえでは効果的です。
具体的な内容
何について感謝されているのかよくわからないようでは、上っ面の言葉のように受け取られてしまいかねません。具体的なことを添えるのは気持ちを伝えるうえで有効です。「お心遣いに感謝いたします」というときに、「おいしいお菓子を頂戴して~」と添えるだけで、何についての感謝なのか、何を嬉しく思っているのかとともに、感謝の気持ちがよりよく伝わります。
まとめ
例えばクレームを申し入れてきた人にでも「教えていただいてありがとうございました」という感謝の気持ちがなければなりません。ビジネスのあらゆるシーンには陰に陽に多くの人の働きや協力があります。「感謝の言葉」はそうしたさまざまな恩恵に対して、自分がどう向き合うのか、その気持ちをどう表すのか、という意味をもちます。時と場、相手に応じて適切に使いこなせるようにしたいですね。