ビジネスの場面でも日常生活でも多く使われる「となります」という表現ですが、誤用もあり、注意が必要です。ここでは「となります」の使い方を、例文を用いてわかりやすく紹介します。「になります」との違い、ビジネスの場面での正しい使い方がわかります。
「となります」の意味とは?
「となります」は「と(助詞)+なる(動詞)+ます(助動詞)」で構成されています。動詞「なる」にはさまざまな意味がありますが、変化の結果を表す助詞「と」が前に付いて、変化や変更の結果を意味します。「ます」は丁寧語で、「となる」を丁寧にした表現が「となります」です。
ビジネスの場面では、以下のように使われます。
- 雨天のため、イベントは延期となります。
- 来月より新体制となります。
- この度、新店舗をオープンする運びとなりました。
- 作業内容が一部変更となりますが、よろしいでしょうか。
「となります」の類義語・言い換え
「となります」は、他の表現で言い換えることが可能で、文脈によって使い分けることもできます。「となります」の類義語は「に至ります」「に変わります」です。これらは、変化の意味をより明確に伝える表現です。例えば、「新体制となります」は「新体制に変わります」と言い換えられますが、「に変わります」を使うと「変わった」というニュアンスが強くなります。
「となります」を別の表現で表すと、「です」「とします」「と相成ります」となります。「雨天のため、イベントは延期となります。」は「雨天のため、イベントは延期です。」と言い換えられますが、「です」を使うと変化の意味がなくなり、決定事項として伝えることになります。伝える相手や場面によって、使い分けることで表現の幅が広がります。
「となります」の敬語表現
「となります」は「となる」を丁寧にした表現ですが、「となっております」とさらに丁寧に表現する言い方もあります。例えば、「本日の日程は以下の通りとなっております」などの表現は、会社の会議や講演会などの改まった場で使えます。ただし、「となっております」は堅苦しい印象を与えることもあります。状況によって使用しましょう。
「となります」の誤用とは?
「となります」は誤用も多い表現です。「こちらが資料となります」のように、状態の変化がない場面で使うことはできません。また、「となりますでしょうか」と「ます」と「です」を重ねて使う二重敬語は誤用です。具体的に紹介します。
「となります」は変化や変更をした結果を意味するので、変化や変更を伴わず、単に事実を伝える場合には使用することはできません。
変化を伴わない際は、以下のように、「となります」ではなく「です」「ございます」を使うのが適切です。
- 応接室はあちらとなります。〇応接室はあちらです。/でございます。
- 応接室はあちらです。/でございます。
- 職場内は禁煙となります。
- 職場内は禁煙です。/でございます。
- こちらが資料となります。
- こちらが資料です。/でございます。
- 締切日は3月31日となります。
- 締切日は3月31日です。/でございます。
- お会計は〇〇円となります。
- お会計は合計で◯円です。/でございます。
丁寧すぎる表現「となりますでしょうか」は誤用
「ます」と「です」の二つの敬語が重なる表現は、二重敬語と呼ばれる誤用になります。より丁寧に表現したい場合に起こりがちです。二重敬語には、他にも、「問題ございませんでしょうか」(正しくは「問題ありませんでしょうか」)、「社長がお帰りになられる」(正しくは「社長がお帰りになる」)、「お相手させていただきます」(正しくは「お相手いたします」)など、さまざまな誤用があります。敬語を過剰に使う表現はかえって相手に失礼となるため、気を付けましょう。
以下の例文のように「ます」と「です」が重なった表現は、どちらか一方のみを使うことで正しい表現になります。
- いつ頃の到着となりますでしょうか。
- いつ頃の到着でしょうか。
「となります」と「になります」の違いとは?
「となります」とよく似た表現に「になります」があります。「と」と「に」の助詞一つの違いですが、両者にはニュアンスや使い方に違いがあります。
・社名を●●と改めた。
・社名を●●に改めた。
例えば、上記の例文はどちらも正しい表現ですが、「と改めた」では改めた社名(結果物)を提示するニュアンスが強く、「に改めた」では改めるという変化のプロセス自体を示すニュアンスが強いです。
また、「と」の方がやや表現が古く硬い感じがあり、フォーマルな場面や書き言葉で使われることが多いです。例文とともに両者の違いを理解し、正しい使い方を身に付けましょう。
ともに変化や変更の結果を意味する表現で、意味に大きな違いがない場合は置き換えることが可能です。その際は「となります」を「になります」に言い換えることは可能ですが、その逆は成り立ちにくいです。
「となります」と「になります」の使い方と例文集
では、例文とともに具体的な使い方をみていきましょう。
「となります」の使い方と例文
「となります」は、変化や変更を伴う場面でのみ使われます。そのなかでも、意外な変化、突発的な変化を表すことが多いです。
・週末は出勤日となります。
・週末は出勤日になります。
例えば、上記の表現では、「となります」は普段は出勤しない週末が出勤日となったというニュアンスになります。それに対して、「になります」は週末はいつも出勤日であることを表しています。
また、「(ニュースで)A会社の再建には長期的な支援が必要となります。」のように、「となります」はフォーマルな場面や発話・文章が不特定多数の人を対象としている場面で使われることが多いです。さらに、「長年の苦労の末に、私は社長となりました。」のように、変化や変更の意味に加えて、話し手や書き手が強調したい内容を示す場合にも使われます。
「となります」を使用するときの注意点
「となります」を変化や変更を伴わない場面で使用するのは誤りです。単なる事実を伝える場面では「です」「ございます」を使うのが適切です。
「となります」は「になります」と置き換えられる場合が多いのですが、形容動詞を用いる場面では、置き換えることはできません。例えば「にぎやかになります」を「にぎやかとなります」と用いるのは誤用です。注意して使用しましょう。
「になります」の使い方と例文
「になります」は、「となります」と同様に変化や変更を伴う場面で使いますが、無理のない自然な移行を表す場合に使われることが多いです。
・明日は休業となります。
・明日は休業になります。
例えば、上記の表現では、「となります」は意外な変化を示します。何か不測の事態が起こり、休業にせざるを得なくなったというニュアンスになります。それに対して、「になります」は休業が普段通りのことであるというニュアンスがあります。突然の休業や中止の伝達では、「〇日は臨時休業となります。」を使うのが自然です。
・会社が移転して3年となります。
・(友人に対して)この街に引っ越してきて3年になります。
また上記の表現からわかるように、「になります」は「となります」と比べて、くだけた場面や私的な会話で使われることが多い表現です。さらに、「になります」は、「にぎやかになります」など形容動詞を用いる場面にも使われます。
「になります」を使用するときの注意点
慣用表現の場合は、「となります」と「になります」は置き換えられません。例えば「会場が騒然となりました」では、「騒然となる」は慣用表現であるため、「騒然になりました」とは表現できません。
ビジネス場面での「となります」の使い方と例文集
「となります」は目上の人や取引先の方にも使用できる表現ですが、実際のビジネス場面ではどのように使ったらよいのでしょうか。
ここでは、仕事で使える表現として、「励みとなります」「運びとなります」の2つの表現をみていきます。
励みとなります
仕事に使える表現に「励みとなります」があります。以下のように使われます。
- あなたの活躍が大きな励みとなりました。
- そう言っていただけると我々も励みとなります。
「励みとなります」は、ある人の言動などが自分の仕事の力になるという意味で、感謝の意を表す表現として使います。相手から褒められた際に「いいえ、そんなことはありません」と謙遜する場合もありますが、過度な謙遜は失礼にあたることもあります。「ありがとうございます!励みとなります。」と返答すると、素直に感謝の意を伝えられます。「励みになります」と、「になります」に置き換えることもできます。
運びとなります
「運びとなります」も仕事に使える表現です。使い方をみていきましょう。
- 新規事業と立ち上げる運びとなりました。
- 年度末でサービスを終了する運びとなりました。
「運びとなります」は、「運びとなりました」の形で用いられることが多く、「~することが決まりました」という意味です。決定事項を多くの人に伝える場面で使います。ここでの決定事項は、会社の方針に関することや事業や催しの開催などの比較的規模の大きなものです。
ビジネスの場面では、会社の移転や大きな会の開催、転勤・転職の報告、退職のあいさつ、業務やサービスの終了の通知、会議などの日程変更、プロジェクトの進行報告など、さまざまな場面で使えます。ただし、「今度個人旅行に発つ運びとなりました」のように、個人的な事柄や自ら決定を下した事柄に「運びとなります」を使うと、大げさな印象を与えるので注意しましょう。
「となります」は、業務上の変更を伝える際にも使えます。「となります」をうまく活用することで、スムーズに相手の承諾を得たり、変更を受け入れてもらったりできます。
となりますので
- 変更となりますので、ご了承ください。
上記のように使う「となりますので」は、「となります」に接続助詞「ので」が付いて、さらに文章を続ける表現です。相手に変更が決定事項であることを伝える表現です。変化や変更を既に決まったものとして受け入れてほしい場合に使用します。「となりますので」のあとに、「ご了承ください」「よろしくお願いいたします」などを続けることで、相手に変更点を事務的に伝え、次の行動を促します。
となりますが
- 規模縮小のため業務が変更となりますが、よろしいでしょうか。
「となりますが」は、「となります」に接続助詞「が」が付いて、さらに文章を続ける表現です。「が」には前置きや補足的な説明を表す意味があり、「となりますが」と表現することで変化や変更することを相手に提示し、その確認をとりたい場合に使用します。「となりますが」のあとに、「よろしいでしょうか」「いかがでしょうか」などを続けることで、相手に変更点についての判断を促します。
「となります」の英語表現
日本語の「となります」は丁寧語を使った敬語表現ですが、英語には敬語表現は存在しません。「となります」の英語表現にはさまざまな表現があり、文脈に合わせて表現を選ぶことになります。「change to(~に変更する)」「shift to(~に移る)」 「turn A into B(AがBに変わる)」といった変化や変更の意味が含まれる単語や前置詞を使って表現したり、「彼は部長となりました」を「彼は部長に昇進した」と動詞を用いて直接的に表現したりなど、さまざまです。
いくつか例文を挙げますので、参考にしてください。
・He was promoted to the position of department manager.
(彼は部長となりました。)
・If it rains, the event will be canceled.
(雨天の場合、イベントは中止となります。)
・If it rains, the event will be canceled.
(雨天の場合、イベントは中止となります。)
・The meeting of representative is changed to Friday night.
(代表者会議は金曜日となります。 ※日程変更があった場合の表現)
・In order to work efficiently, the system is shifted to new one from next month.
(効率的な作業のため、来月から新しいシステムとなります。)
・That remark encouraged me.
(その一言が私の励みとなりました。)
・The meeting is going to be held in March.
(会議は3月開催の運びとなりました。)
まとめ
「となります」は、「となる」を丁寧にした表現です。変化や変更の結果を表す場面で使われ、ビジネスでも幅広い場面で活用されています。状態の変化がない場面で使うことや、二重敬語は誤用です。「になります」と置き換えられる場合もありますが、「になります」と比べてフォーマルな場面や書き言葉で使われることが多く、変化や変更に意外性があるニュアンスを含みます。誤用に注意して、「となります」を正しく使いこなすことで、ビジネス上のコミュニケーションもより円滑になるでしょう。