「捗る」という言葉をご存じでしょうか?ビジネスシーンのみならず、ネット上でも頻繁に使われる言葉になりました。今回は「捗る」の意味と使い方、類語・対義語や由来・英語表現に至るまで紹介します。また、ネットスラングとしての使い方も紹介します。
「捗る」の意味とは?
「捗る」という言葉の意味について説明します。言葉の意味やニュアンスを正確に把握することは、コミュニケーションをとる上で必要不可欠です。
「順調に物事が進むさま」を指す
「捗る」という言葉は「順調に物事が進む様」を表しています。 日常生活やビジネスシーンにおいてもよく使われる言葉で、「仕事の進捗」などで使われる「進捗」という熟語にも「捗る」の漢字が含まれています。「捗」という漢字は、人の手と左右の足跡の形から成立したもので、足跡を残しながら前進していく様子を表現しています。
参照:Weblio辞書「捗る」
「捗」の字に注意!
「 捗る」の「捗」の漢字は「手編」に「歩」ではありません。「歩」という漢字に非常によく似ていますが注意深く見ると、右の払いがありません。一般的には「手編」に「歩く」と書いて「はかどる」と読んでしまうことも多々ありますが、正しい漢字ではないので勘違いしていた方は注意しましょう。他の表記法として「果取る」とすることもありますが、万が一忘れてしまった場合は、ひらがなで表記しても問題ありません。
「捗る」の読み方
「捗る」の読み方は「はかどる」となります。進捗という熟語になると「しんちょく」と読みます。自分の得意分野で能力を発揮してスイスイと物事が進む様子を「兎の上り坂」と表現し、全ての物事がうまくいく様子を「順風満帆」という言葉で表します。いずれの言葉も「物事が都合よく捗っている様子」を表現する言葉です。
「捗る」の由来・語源
「捗る」という言葉の由来・語源について解説します。この言葉の生まれは「お米の生産高」にありました。「お米の生産高」と「捗る」という言葉がどのように結びつくのか詳しく見ていきましょう。
「捗る」の由来は「果が行く」から
「捗る」は「果が行く」(はかがゆく)という表現から派生した言葉です。「はか」とはそもそも何を表すかというと、ものの量や大きさを表現する言葉であるといわれています。米などの収穫量を「はかる」という言葉から、米の収穫量自体を「はか」と表現するようになりました。つまりこの「米の収穫量」は今でいうと「仕事の進捗具合」に置き換えられ、現代でも「捗る」という表現として日常的に用いられています。
「儚い」とも関係がある言葉だった
「儚い」という言葉も「捗る」と関係がある言葉になります。先ほど紹介した「はか」という言葉は、元々は米の収穫量を表す言葉であったことを説明しました。「はか」が米の収穫量を表すことが、「儚い」という言葉にも関係します。つまり米の収穫量がない状態のことを「はかない」と表現し、転じて米が食べられず貧しい状態を「はかない」という言葉で言い表していました。貧しくて消えてしまいたい状態を昔の人は「はかない」という言葉で表し、その言葉が現代でも生き残り「儚い」という言葉になったのです。
「捗る」の類義語・言い替え
「捗る」という言葉の類義語や言い換え表現について紹介します。同じ意味の言葉を把握することで、表現の幅が広がります。類義語について詳しく見ていきましょう。
「進捗する」
「進捗する」とは、「物事の進み具合」や「どの程度順調に進んでいるのか」を表現する言葉になります。ビジネスシーンにおいては、最初に定められた目標に対して納期内に達成できるかどうかを問われることがあります。そのようなときにある時点で仕事がどの程度進んでいるのかに注意を払う必要があり、進捗状況を把握し管理することが管理職の主な役割になります。「進捗」という言葉を分解すると「進んで捗る」になるため、仕事をどの程度こなせているかを表現する言葉になります。
「捗捗しい」
「捗々しい」は、「物事が順調に進んでいるさま」を表現する言葉です。この言葉の使い方として主に打ち消しの語と共に用いられます。例えば、「最近仕事の進み方が捗々しくない。」といった具合に、うまくいっていない様子を「捗々しくない」という言葉で表現しています。他の意味としては、「際立っている」や「行動がちゃんとしている」、「したたかである」などが存在しますが、主な使われ方としては「捗々しくない」で「物事が思うように進んでいない」という意味を持つ表現になります。また、「果果しい」と表記することも可能です。
「捗る」の対義語
「捗る」という言葉の対義語について説明します。ここで紹介するのは「滞る」と「膠着」の2つの言葉です。反対の意味の言葉を知ることで、言葉のニュアンスを相対的に理解できるようになります。
「滞る」
「滞る」という言葉は「物事が順調に運んでいない様子」や「流れが止まっている様子」を表す言葉です。「滞納」という熟語は「お金を支払うべき期限になっても支払っていない状態」を表します。「滞る」が持っているニュアンスは、物事が思い通りに進んでいない状態になります。 ビジネスシーンにおいても仕事が滞ってしまうと、定められた期限に間に合わない可能性があります。仕事が期限内に間に合わなかった場合は、次の仕事に影響が出るため、周囲に迷惑がかかります。つまり、仕事が滞るといった状態は全体の生産性を下げる可能性があるため、できる限り避けるべき状態であるといえます。
「膠着」
「膠着」は「こうちゃく」と読み、「へばりつくこと」「しっかりくっついて離れないこと」という意味があります。これはネバネバしたものがあるものにへばりついていることを表します。例えば「餅がお椀に膠着している。」という文では、餅がお椀にへばりついている様子を表せます。またもうひとつの意味として、「ある物事が同じところから次に動けず止まってしまっている状態」を表します。ビジネスシーンにおいても会議なので両者の意見が真っ向から対立した時に「会議が膠着して先に進まない。」と表現することがあります。仕事においても、いろいろな意見によって決断が下せないときなど、次に仕事が進まない状態を「膠着状態」といいます。そうならないためにも、普段から相談は綿密にして仕事を進める必要があります。
「捗る」はネット用語としても浸透
「捗る」という漢字はその使用頻度の低さから、紙媒体ではあまり目にすることがありませんでした。一方インターネット上の書き込みにおいては「捗る」という表現が多用されるようになりました。ネット上のスラングとしての用法であるため文法的には正しくありませんが、主語を明記しない使い方が流行し、「かなり捗る」といったように捗っている内容は読み手側が察する必要があります。いずれにしても、これらはネット上のスラングです。ビジネスシーンにおいては正しく、「仕事が捗る」「プロジェクトが捗る」といったように主語を明記し、正しい使い方をすることが求められます。
「捗る」の英語表現
「捗る」の英語表現について紹介します。日本語表現に留まらず英語表現にも理解の幅を広げておくことで、海外へ行った際に役立つ可能性があります。さっそく見ていきましょう。
「to make progress」
「to make progress」で「捗る」の英語表現になります。例を挙げると「I have made good progress in my work.」で「仕事がよく捗った。」という意味になり、「progress」が「前進」を意味する言葉になるので、ニュアンスとして適切な英語表現になります。
「to move right ahead」
「to move right ahead」も「捗る」の英語表現になります。「right ahead」で正しい方向という意味になるので、正しい方向で動いていくというイメージがつかめます。正しい方向へ動くというニュアンスは「捗る」という言葉にマッチする表現だといえます。
「捗る」の使い方と例文集
最後に「捗る」の使い方と例文について紹介します。正しい使い方や使う際の注意点を把握しておくことで、ビジネスシーンにおいても自信を持ってコミュニケーションをとれるようになります。
「捗る」の使い方
「捗る」は物事が順調に進んでいる様子を表す言葉で、基本的にはプラスのニュアンスを持ちます。また、客観的状況を表現する言葉でもあるため褒め言葉というイメージはありません。つまり、「捗る」は自分の仕事ぶりに対しても用いても失礼のない言葉になります。自分の仕事ぶりに対して「今日の仕事はとても捗った」と表現することは、なんら間違いではありません。1日の終わりにこういった一言が呟けるように、効率的に仕事を進めることはモチベーションにつながります。
「捗る」を使用するときの注意点
「捗る」を使う上での注意点としては、 手編に「歩」ではないという点です。非常に勘違いしやすいため、紙の上に書くときは注意が必要です。パソコンなど手で打ち込む際は自動的に変換されるため意識するタイミングは少なくなりがちですが、ここで正しい表記を把握しておきましょう。
「捗る」の例文
「捗る」という言葉を用いた例文を紹介します。
- 彼がつまずきポイントをて前に教えてくれたおかげで、初めて担当した仕事なのにもかかわらずてとても捗った。
- 作業環境を整えることで、ルーチンワークがとても捗った。
まとめ
「捗る」という言葉は、「物事が順調に進む様子」を表す言葉です。ビジネスシーンにおいても日常生活においてもよく使える言葉になるので、使い方を理解した上で使っていきましょう。