甘んじてという言葉を時々使いますが、正しい意味を理解していますか?甘いという言葉を使用するのでやさしい印象ですが、本当の意味は仕方なく、もろてを上げられないがという意味になります。甘んじての類語や対義語なども含めて詳しく紹介します。
「甘んじて」の意味とは?
「甘んじて」はあまんじてと読みます。意味は「仕方なく受け入れる」「満足ではないけれど許容する」「大目に見る」などです。根底に、全部は納得していない、本当は受け入れたくないというニュアンスがあります。「甘」という言葉が使われていますが、動詞である「甘んじる」の連用形で、渋々、我慢して従うといった意味で使われます。
「甘んじて」の由来・語源
「甘んじて」は、「甘味す(あまみす)」からきています。あまみすが濁って、「あまんず」となり、さらに「あまんずる」が口語的な文語になって「あまんじる」になりました。「甘んじて」は、「甘んじる」の連用形です。「甘味す」は、もともとよいものを味わうというという意味ですが、「甘んじて」は、意味が変わって「仕方なく認める」になっています。これは「100%ではないがよしとする」のニュアンスからきているといわれています。
「甘んじて」の類義語・言い換え
「甘んじて」の類義語や言い換えられる言葉を紹介します。「甘んじて」を使う状況には、相手からの提案や申し入れを我慢して受け入れる、相手の言い分を十分ではないが良しとする、相手の言っていることを静かに聞き入れるなどさまざまなシチュエーションが考えられます。
類義語を使ったり言い換えたりするときには、本来の「甘んじて」を使う状況をよく考えて、同じ意味になる言葉を選ぶ必要があります。
仕方なく
「甘んじて」の本来の意味にも通じる「仕方なく」が使えます。「ほかに方法がなかったため」や「やむを得ない」というニュアンスがあり、「甘んじて」よりも渋々またはいやいや受け入れる、受諾する印象が強い言葉です。
- 他に立候補する人がいないかったので仕方なく委員長をやることになった。
- 注文した商品が品切れだったため、仕方なく他の商品を選んだ。
嫌々の様子が強く現れる表現の仕方は「仕方なく」の他にも「忸怩たる思い(じくじたるおもい)」や、「苦汁の選択(くじゅうのせんたく)」といった言葉もあります。
大目に見る
「大目に見る」は、人の悪いところや失敗などを、過剰に指摘したり厳しく問い詰めたりせず、寛大に受け入れることをいいます。
- 新人なので多少の失敗は大目に見る。
- 3回目の交通違反だったが、免停になってしまうため大目に見てもらった。
十分ではないが
「十分ではないが」は、「完璧ではないが」という意味があります。「不本意ながら」なども同じニュアンスがあります。例文を紹介します。
- 今回の対策は十分ではないが、ひとまずこれで様子をみよう。
- 単なる謝罪の言葉だけでは十分ではないが、とにかくまずお詫びを申し上げたかった。
「甘んじて」の対義語
「甘んじて」の対義語とその使い方を紹介します。
甘んじることなく
「甘んじることなく」は、「甘んじて」の否定の形です。そのため甘受せずにという意味になります。
- 現状に甘んじることなく、今後も粛々と努力を重ねて参ります。
- いただいた評価に甘んじることなく、ますます新しいことに挑戦していきたい。
「甘んじることなく」は、現状に満足しないでという意味で使われます。
甘んじず
「甘んじず」も、「甘んじて」の否定形になります。「許容しない」、「受け入れない」、「さらに厳しく追求する」といった意味で使われます。甘んじずの例文です。
- この結果に甘んじず、これらも日々勉学に励みなさい。
- 彼は今までの成功に甘んじず、常に次のビジネスのチャンスを探っている。
「甘んじることなく」も「甘んじず」もほぼ同じ意味で用いられます。
満足せずに
「満足せずに」も、「甘んじて」の対義語になります。
- この程度の点数で満足せずに満点を目指して勉強しなさい。
- ノルマを達成したからと満足せずにさらに新しい顧客の開拓をするように。
「甘んじて」の英語表現
「甘んじて」に匹敵する英語を紹介します。「甘んじる」の意味に一番近い単語は、「accept」を使った「accept as it is」です。意味は、ありのままをそのまま受け入れるというニュアンスです。「as it is」で、そのままでという意味合いがあります。そのままのものを「accept (受け入れる)」となります。他にも「甘んじて」と訳せる英語はいくつかあります。
settle for
「settle for」は、「手を打つ」や「仕方なく我慢する」という意味があります。「settle」は、人が環境、仕事や場所などに落ち着くという意味があります。また解決するという意味もあります。「for」をつけて使うことで、「甘んじて」と同じニュアンスの意味になります。
She wanted to live in Tokyo but settle for Osaka.(彼女は東京に住みたかったが大阪に住むことで納得した。)
content
「content」は「現状に満足する」という意味になります。形容詞で、それ以上望まないという意味合いがあるので、「甘んじて」という訳し方ができます。
He is content with this job.(彼女はこの仕事に満足している。)
「甘んじて」の使い方と例文集
「甘んじて」の使い方や例文集を紹介します。
「甘んじて」の使い方
「甘んじて」は、「仕方なく」や「満足していないけれど受け入れる」というニュアンスがあると共に、「大目に見る」という意味もあわせ持ちます。そのため、「こちらの意図した100%のものではないが、許容する」というおおらかさや柔らかさが出せます。「仕方なく」や「十分ではないが」などの言葉を使うと、きつい言い方に聞こえたり、いやいやながらという印象を与えたりしてしまいますが、「甘んじて」を使うことでソフトな印象を与えられます。
「甘んじて」を使用するときの注意点
「甘んじて」は人のことを言い表すときには注意が必要です。「彼は平社員の立場に甘んじている」などと使うと、彼は能力があるのに出世できていないという意味になってしまいます。
また、自分が失敗したときに「甘んじて」を使うのもやめましょう。「どんな批判も甘んじてお受けします」は一見、正しく見えますが、「批判を受けるのは納得いかないが、とりあえず受け止める」という意味に捉えられてしまい、反省していないと思われてしまいます。
「甘んじて」の例文1
「甘んじて」を「大目に見る」や「完璧ではないけれど受け入れる」の意味で使う例文です。
- 今回は、彼の妻が一生懸命謝っているのに甘んじて許してやろう。
- 今月の営業成績は、初回ということで甘んじて評価を少し高くした。
「甘んじて」の例文2
「甘んじて」は「甘んじている」という動詞として使うこともできます。
- 一時的な処置なので、今はこの状況に甘んじている。
- 次期昇進は確実なので、今のところ部長の役職に甘んじている。
まとめ
「甘んじて」は、「100%納得はしていないけれどおおむね認めて受け入れる」という意味があります。「仕方ない」や「否応なく」などよりも柔らかい表現になるので、ビジネスでうまく活用すると相手との関係を良好に保つ助けになるでしょう。
また自分がミスを犯したときや、人に対して「甘んじる」を使うと、反省していないような印象を与えたり、相手を侮辱するような意味になったりと誤解される場合もあるので注意しましょう。