「腑に落ちる」という表現をご存じですか?
普段は「腑に落ちない」という表現の方よく耳にするかもしれません。今回は「腑に落ちる」の意味や使い方、由来や類語・対義語、英語表現に加え「腹に落ちる」との違いも徹底解説します。
「腑に落ちる」の意味とは?
「腑に落ちる」の言葉の意味について解説します。日常的にもよく使われる表現である為その意味をしっかりおさえておきましょう。
「腑に落ちる」の意味は「納得できる」「理解できる」を指す
「腑に落ちる」とは「理解できる」や「納得できる」という意味を表す言葉です。
ビジネスシーンにおいてもよく使われる言葉で、相手の言うことに納得できなかったりするときに「腑に落ちない」という表現で使われることが多いです。
表面的な理解ではなく、感覚的には理解できている状態を指し、根本的な理解をできた状態を表す言葉になります。反対に考えると、「腑に落ちない」という言葉は根本的な理解に至っていないという意味になるため、相手に対してさらなる説明を求めるタイミングで使われることが多いです。
目上の人には使わない方が無難
「腑に落ちる」という表現自体は「理解できました」という意味になるため上司に対して使ったとしても問題はありません。
一方「腑に落ちない」という言葉は理解できませんという意味になるので、上司に対して使うのは避けた方がよいです。とはいえ、理解できないという状態はきちんと相手に伝える必要があるので「理解できなかったので、教えていただいてもよろしいですか」というように、丁寧表現で教えを請いましょう。
「腑に落ちませんでした」と言うと「理解できない」というニュアンスに加えて、「納得いかない」「不服である」という印象を相手に与えてしまうため、反感を買ってしまう可能性が高くなります。「腑に落ちない」という表現は目上の人に使うのはやめておきましょう。
「腑に落ちる」の読み方
「腑に落ちる」は「ふにおちる」とよみます。「腑」という漢字は「はらわたや内臓」という意味があります。「不甲斐ない」という言葉も、難読漢字として「腑甲斐ない」と表記することがあります。日常生活ではほとんど使われない表記ですが、覚えておいて損はありません。
「腑に落ちる」の由来・語源
つぎに「腑に落ちる」という言葉の由来や語源について説明します。
「腑」ははらわたや内臓のことで、 特に食物や液体が収まる臓器を指します。つまり「腑に落ちる」という言葉は、体の中の食べ物が収まるところ、つまり、胃にストンと落ちた状態を「理解できた」と例えて表現した言葉であるといえます。
また、「腑」には心臓という意味もあり「心にしっくりくる」という意味合いから来ているという説もあります。いずれにしても理解できている状態を、体内の臓器に対して「しっくりきている」という感覚で表現している言葉になります。
「腑に落ちる」の類義語・言い換え表現
「腑に落ちる」の類語や言い換え表現について紹介します。似た意味の言葉がたくさんあるため、一つ一つ使い方をマスターしておきましょう。
「目からウロコ」
「目からウロコ」とは、何らかのきっかけで突然物事がわかるようになることを指します。例えば数学の問題を解いていて、何時間と考えてもわからなかった問題が翌日になって考え直してみたらはっとひらめいてわかるようになった状態になることなどを表します。このように「目からウロコ」は、そのきっかけが思いがけないものでそれによって深いところまで理解できるようになるというニュアンスがあります。
「膝を打つ」
「膝を打つ」とは納得したり感心したりした場合に使われる慣用句です。この言葉はわかりやすく何かにひらめいた瞬間に、ポンと膝を叩く様子がそのまま慣用句になったものです。頭の中で何か閃いた時にこういった動作を無意識にとることがあり、先ほど紹介した「目からウロコ」と近い意味を持つ言葉になります。
「承知する」
「承知する」とは、「事情などを理解すること」や「相手の依頼などを聞きいれること」を表します。「腑に落ちる」という言葉は、「根本的に理解した」という意味であるのに対し、「承知する」という言葉は理解した上で許可を出すというニュアンスも持ちます。つまり、目上の人が腑に落ちた状態でないと承知してもらえないという状況になります。そのためビジネスシーンにおいては、上司に状況を正確に理解してもらうことが大切になり、そのためにはきちんと伝える姿勢やスキルが欠かせません。
「腑に落ちる」の対義語
「腑に落ちる」の対義語について紹介します。反対の意味の言葉を理解することは、それぞれの言葉のニュアンスを相対的に把握することにつながります。表現の幅を増やすためにも、しっかり理解しておきましょう。
「腑に落ちない」
「腑に落ちない」という表現は、「納得がいかない」や「違和感がある」という意味があります。 学術的な意味において理解できないというニュアンスではなく、相手の主義主張が理解できないという時に「腑に落ちない」という表現は使われます。
「腑に落ちない」という言葉についても少し深掘りすると、相手に対して反対意見であるという態度を表明する言葉でもあります。そのため、使い方やタイミングによっては相手に反感を抱かせる可能性があるため、使い方には注意が必要な言葉になります。少なくとも目上の人には使わない方が無難でしょう。
「後味が良くない」
「後味が良くない」とは「もやもや感が残ること」や「すっきりしない状態」を表す言葉になります。よく小説や映画、漫画などのストーリー仕立ての作品においてその評価に使われることが多いです。
主人公が最後まで浮かばれなかったり、非道な行動ばかりしている悪役が最後まで幸せに暮らしていたりするなど、気持ちが晴れない物語に対して後味が良くないという表現をします。後味が良くない物語が文学的に優れていないというわけではなく、後味が悪くても素晴らしい作品がたくさんあります。
「腑に落ちる」と「腹に落ちる」の違い
結論として、「腑に落ちる」と「腹に落ちる」の意味合いに大きな違いはありません。
異なる点は使われ方で、「腑に落ちる」よりも「腑に落ちない」という否定表現の方が日常的によく使われている言葉になります。一方「腹に落ちる」という言葉は肯定でも否定でも同程度に使われる言葉になります。
ただ「腹に落ちる」の否定は「腹に落ちない」ではなく「腹落ちしない」という表現になるので注意が必要です。言葉の由来としては「腑に落ちる」と同じで、「ストンと胃にモノが収まった状態」を理解したと表現する言葉になります。
「腑に落ちる」の英語表現
「腑に落ちる」の英語表現について紹介します。英語での表現方法を身につけておくと、海外に行ったときに役に立つことがあるかもしれません。
「understand」
「understand」で「理解する」という意味の言葉になります。つまり「腑に落ちる」の英語表現であるといえます。否定表現の「I cannot understand.」では「腑に落ちません。」という日本語訳になります。
「feel comfortable with」
「feel comfortable with」も「腑に落ちる」の英語表現になります。
「comfortable」で心地よいという意味になるため、心地よい状態は腑に落ちている状態と近い意味であるといえます。つまり「違和感がない」という意味になり、「腑に落ちる」というニュアンスになります。
「腑に落ちる」の使い方と例文集
最後に腑に落ちるの使い方や例文について紹介します。使い方や注意点を完璧にマスターして、正しい日本語を使いこなせるようになりましょう。
「腑に落ちる」の使い方
「腑に落ちる」という言葉の主なニュアンスは「理解できた」になります。つまり理解できたタイミングで「腑に落ちる」という言葉を使うのが適切です。例えば相手の言い分が心の底から納得できたときや、今までわからなかった複雑な問題を理解できた瞬間などに「腑に落ちる」を用いるのは正しい使い方になります。
「腑に落ちる」を使用するときの注意点
「腑に落ちない」という表現が日常的に多用されているため、「腑に落ちる」という表現が誤用であると言われることがあります。しかし、これは誤りで「腑に落ちる」という表現は日本語として正しい使い方になります。「腑に落ちる」という表現は聞きなれないかもしれませんが、誤用ではないことに注意しましょう。
「腑に落ちる」の例文
「腑に落ちる」を用いた例文を紹介します。
- 彼の説明は大変わかりやすいので、 今までこんがらがっていた問題について腑に落ちた。
- あの時先生が私を叱ったわけがわからなかったが、自分が先生の立場になって腑に落ちた。
まとめ
いかがでしょうか?今回は「腑に落ちる」の意味や使い方、由来や類語・対義語、英語表現に加え「腹に落ちる」との違いについて解説しました。
「腑に落ちる」という言葉は「納得できる」や「理解できる」といった意味を表します。基本的には「腑に落ちない」という言葉の方がよく用いられますが、目上の人に対して腑に落ちないという表現を使うのは、失礼にあたるので使い方に注意しましょう。