目上の人に「嬉しい」気持ちを伝えるとき、どう表現すればいいのか迷いますよね。「嬉しいです」と言ってしまいがちですが、「嬉しいです」は文法的に誤りです。本記事では、ビジネスで使える「嬉しい」の正しい敬語表現や類語を紹介します。
「嬉しい」の丁寧語
「嬉しい」の丁寧語には、「嬉しく思います」と「嬉しい限りでございます」があります。また、「嬉しいです」は誤りです。順に解説していきます。
嬉しく思います
「嬉しく思います」は、「嬉しい」気持ちを丁寧語で伝える正しい表現です。「嬉しい」と「思います」を合わせた言葉となります。また、「お心遣い嬉しく存じます。ありがとうございます。」などと感謝の言葉も後ろに添えるとより丁寧に表現できます。
嬉しい限りでございます
「嬉しい限りでございます」も、「嬉しい」気持ちを丁寧語で伝える正しい表現です。「嬉しい」と「限りでございます」を合わせた言葉です。語尾の「ございます」を「です」に変えて、「嬉しい限りです」と表現しても問題ありません。
目上の人から「ありがとう」と感謝の言葉を受けたときには、「お役に立てて嬉しい限りでございます」と返答できます。感謝の言葉をいわれたときの定型文として覚えておくととても便利です。
「嬉しいです」は誤り
「嬉しいです」は、誤った表現なので注意しましょう。形容詞「嬉しい」に「だ」の丁寧語である「です」は付けられないからです。
「嬉しい」気持ちを表現するときには、とっさに「嬉しいです」と言ってしまいがちですが、ここで誤りだと記憶に定着させておきましょう。
「嬉しい」の謙譲語
「嬉しい」を謙譲語で表現すると「嬉しく存じます」となります。「存じます」は、「思う」や「知る」の謙譲語「存じる」に丁寧語の「ます」を付けた表現です。
丁寧語「嬉しく思います」と謙譲語「嬉しく存じます」は、敬語の種類が異なるだけで意味は同じです。「嬉しく存じます」の方がより丁寧な表現となりますが、どちらを使うかは相手は誰なのか、相手とはどの程度気が知れているのかなどシチュエーションに応じて選択しましょう。
「嬉しい」のビジネスに適さない敬語表現
「嬉しい」のビジネスに適さない敬語表現には以下の2つがあります。
喜ばしく思います
「喜ばしく思います」は、敬語として正しい表現ではありますが、ビジネスシーンにおいて適した言葉ではありません。多少表現が大げさなため、失礼な印象を与える恐れがあるからです。
嬉しゅうございます
「嬉しい」ですの敬語表現には、「嬉しゅうございます」もあります。ただし、「嬉しゅうございます」は、とても古い言葉なのでビジネスには適しません。日常的にも使われることは少ない言葉ではありますが、ビジネスには適さないことを頭の片隅に入れておきましょう。
「嬉しい」気持ちを表す敬語表現の使い方・例文
ビジネスシーンでは「嬉しい」気持ちを表すときに、「嬉しさ」が伝わるほかの敬語表現を使うことが一般的です。ここでは、「嬉しい」気持ちを表す敬語表現を9つ紹介します。
光栄です
目上の人から褒められたとき、「光栄です」を使えば「嬉しい」気持ちをスムーズに表現できます。
- そのようなお言葉をいただけてとても光栄です。
- ありがとうございます。お褒めいただき光栄です。
「お褒めの言葉をいただき、嬉しく存じます」と表現しても問題ありませんが、「光栄です」を使うことで、褒めてくれた相手を立てるニュアンスを伝えられます。
恐縮です
目上の人から褒められたとき、「恐縮です」を使って「嬉しい」気持ちを表現する場合もあります。
- ~様からお褒めの言葉をいただけるとは大変恐縮です。
- そのようなお言葉大変恐縮でございます。ありがとうございます。
「光栄です」と同じように、褒めてくれた相手を立てるニュアンスを伝えられます。「光栄です」と「恐縮です」はともに褒められたときに使える言葉としてセットで覚えておきましょう。
お力添えのおかげです
目上の人のサポートのおかげで何かを成し遂げたときには、「嬉しい」と「感謝」の気持ちをあわせて伝えられる、「お力添えのおかげです」といった表現が便利です。
- このようにうまくいったのも~さんのお力添えのおかげです。
- 皆さまのお力添えのおかげです。ありがとうございます。
「お力添えのおかげです」は、助けてもらったときにお礼を述べる表現のひとつとして覚えておきましょう。また、「お力添えの」を抜いて、「おかげです」だけで表現しても問題ありません。
ありがとうございます/感謝します
目上の人に配慮してもらったときは、「お心遣い大変嬉しく存じます」の代わりに「ありがとうございます」や「感謝します」の言葉を使えます。
- お心遣い大変ありがとうございます。
- この度はご配慮いただきとても感謝しております。
「お心遣い大変嬉しく存じます」などと「嬉しい」気持ちを伝えるにとどまらず、上記のように感謝の言葉を伝えれば、より丁寧な印象を相手に与えられます。
恐れ入ります
「恐れ入ります」を、「嬉しさ」や「感謝する」気持ちを伝えるシチュエーションで使うこともできます。「恐れ入る」の意味は、「迷惑を掛けて申し訳ない」です。そこから転じて、「心が苦しいほどにありがたい」といった意味で使われます。
- お忙しい中お時間を作っていただき大変恐れ入ります。
- このような素晴らしい場所にお呼びいただき大変恐れ入ります。ありがとうございます。
感謝の気持ちを強調する必要がある場合は、「ありがとうございます」を前後に付けてあげることで対処しましょう。
痛み入ります
「嬉しい」気持ちは「痛み入ります」といった言葉でも表現できます。「痛み入る」の意味は、「相手の親切に恐縮し感謝すること」です。「恐縮です」や「恐れ入ります」などと同じ意味で使用されます。
- ~様のお心遣い、大変痛み入ります。
- 身に余るほどのお褒めの言葉をいただき痛み入ります。
また葬儀や身内に不幸があった際に「お悔やみ申し上げます」への返答として「お悔やみ痛み入ります」「ご丁寧に痛み入ります」のようにも使えます。
幸いです
「嬉しい」気持ちは「幸いです」と言い換えることも可能です。
- そのようなお言葉をいただきとても幸いです。
- 本日はお会いできてとても幸いでございます。
また、「幸甚(こうじん)でございます」とすれば、「とても幸せ」といった気持ちを伝えられます。幸甚の意味とは、非常に幸いなことです。ビジネスシーンにおいてよく使われる言葉なので覚えておきましょう。
何よりです
「何よりです」は、「何より嬉しいです」の「嬉しい」が省略された言葉です。相手の喜びに共感して、自分の「嬉しい」気持ちを表現するときに使用されます。
- お元気になって何よりです。
- とても充実した日々を過ごしておられるようで何よりです。
「何よりです」は省略語ではありますが、慣用表現としての扱いなので、目上の人に使っても問題ありません。ビジネスシーンで使えるシチュエーションは多くあり知っておくと便利です。
喜ばしい限りでございます
「嬉しい限りでございます」の似た表現に「喜ばしい限りでございます」があります。「喜ばしい限りでございます」は、喜ぶ気持ちしか湧いてこないといった意味になります。
- こういった賞をいただけるとは、喜ばしい限りでございます。
- そのようなお褒めの言葉をいただき、喜ばしい限りでございます。
「喜ばしい限りでございます」よりは、「嬉しい限りでございます」を使う方が多いので、こういう表現もあると知っておく程度で問題ありません。
「嬉しい」を英語でいうと?
「嬉しい」を英語で表現するには、たとえば以下の3つの表現があります。
- I’m glad to hear that.(そう言っていただけて嬉しく思います。)
- Thanks for saying that.(その言葉を聞けて嬉しく思います。)
- It is such an honor to hear that.(そんな言葉を聞けて光栄です。)
3つ目の「It is such an honor to hear that.(そんな言葉を聞けて光栄です。)」は、少し堅いイメージがあり、コンテストやスピーチで賞を受賞した人が使う言葉として定着しています。
まとめ
「嬉しい」の敬語表現は、「嬉しく思います/嬉しく存じます」や「嬉しい限りでございます」です。「嬉しいです」はよく使われますが、文保的に誤った表現なので注意しましょう。また、ビジネスシーンでは、「嬉しく思います/嬉しく存じます」や「嬉しい限りでございます」のほかに、「嬉しい」気持ちを示す「光栄です」や「幸いです」などの敬語表現も多く使われます。これらの語彙を増やし、さまざまな用語を使いこなしていきましょう。