慣用表現「二の足を踏む」は、ふだんの会話でもよく耳にする言葉です。本記事では「二の足を踏む」の意味や語源、使い方、類語などを紹介します。間違いやすい使い方もチェック。「二の足を踏む」を正しく使えるようになりますよ。
「二の足を踏む」の読み方と意味
「二の足を踏む」の読み方、意味を説明します。「二の足を踏む」と間違って使われがちな言葉も確認してください。
「二の足を踏む」の読み方
「二の足を踏む」は、「にのあしをふむ」と読みます。
「二の足を踏む」の意味は?
「二の足を踏む」は、「決心がつかずにためらう、どうしようかと迷って悩む」の意味で使われる慣用表現です。「二の足」という言葉には、「ためらう」や「尻込みをする」などの意味があります。「ぐずぐずと決断できない」または「決断したはいいが実行する思い切りができない」様子を表すため、ネガティブな場面で使われることが多い言葉です。
間違いやすい言葉「二の舞を踏む」
「二の舞を踏む」は、「二の足を踏む」と間違えて使われることがあります。もともと「二の舞を踏む」という表現はなく、「二の舞を演じる」が正しい慣用表現です。「二の舞を演じる」は、「同じ失敗を繰り返す」という意味のことわざ。この「二の舞を演じる」と「二の足を踏む」が混同してしまった言葉が「二の舞を踏む」です。間違って使わないように気をつけたいですね。
2つの説がある「二の足を踏む」の語源
「二の足を踏む」の語源はハッキリわかっておらず、主に2つの説があります。「二の足」が何をさしているかに着目して、2つの説をそれぞれ解説します。
「2歩目をためらう」に由来しているという説
「二の足」は「2歩目」の意味だとする説です。「1歩目を踏み出したはいいが2歩目を踏み出す決断がつかず、ためらっている」状態が「二の足を踏む」の語源だといわれています。
武士に由来しているという説
かつて武士が使っていた刀の鞘についている「足金物(あしがなもの)」という金具が語源だという説です。刀の鞘には、ひもを通して腰帯に鞘を結びつけるための足金物がついています。足金物は「一の足」と「二の足」の2つあることから、「武士が刀を抜くのをためらっている」状態が「二の足を踏む」のもとになったという説です。
「二の足を踏む」の使い方を例文で確認
例文で「二の足を踏む」の正しい使い方を確認します。「ためらう」や「決心がつかない」といった意味を踏まえ、状況にあった使い方になっているかがポイントです。
- これだけ悪条件がそろっているプロジェクトを引き受けるのは、どうしても二の足を踏んでしまう。
- 彼女との話し合いに二の足を踏んでいるのは、彼女の本心を知るのが怖いからだ。
- 実力不足だからと受験には二の足を踏んでいたが、基礎から勉強し直してチャレンジしてみようと心に決めた。
慣用句「二の足を踏む」の類義語、似た言葉
「二の足を踏む」の類義語や似た意味を持つ四字熟語を紹介します。
「ためらう」意味をもつ言葉が「二の足を踏む」の類語
「二の足を踏む」の類語は、どれも「ためらう」という意味があります。例文とともにチェックしましょう。
「尻込みをする」
「尻込みをする」は、「怖気づいて後ずさりをする」という意味です。「気後れする」や「ためらう」、または「決心がつかずにグズグズ悩む」などの意味もあります。
- 友人たちと遊園地へ行ったのに、高所恐怖症のため尻込みしてジェットコースターに乗れずじまいだった。
- 取引先に謝罪に行くべきなのに尻込みをしてしまうのは、担当者がとても厳しいと評判だからだ。
- いまさら尻込みしていてもはじまらない。思い切って難題に取り掛かるとしよう。
「躊躇する」
「躊躇する」は「ちゅうちょする」と読み、「いろいろと悩んで決意が固まらない」という意味です。使われている漢字「躊」と「躇」には、両方とも「ためらう」や「決心がつかない」の意味があります。「躊躇」を訓読みすると「躊躇う(ためらう)」です。「躊躇する」には一度決めたものの実行できない、再度迷い始めてしまうといったニュアンスが含まれています。
- 覚悟はしていたものの、いざ計画を実行しようとするとどうしても躊躇してしまう。
- 彼女は新しいパソコンを買うつもりだが、今月は出費が続いたので躊躇している。
- 彼が転職を躊躇しているのは、希望する業種が不況の真っただ中だからだ。
「煮え切らない」
「煮え切らない」は、「態度をはっきりさせない様子」の意味です。「ぐずぐずして態度を決めない」や「決断できない」といった意味でも使われます。「煮え切らない態度」や「煮え切らない気持ち」のように、どっちつかずであいまいな態度や心情を表現する言葉です。「二の足を踏む」や「躊躇する」は「一度は決めたものの、再度迷う」の意味合いがあるのに対し、「煮え切らない」には「そもそも決断できない」の意味合いがあります。
- 結婚するのかしないのか、いつまでたっても煮え切らない彼の態度に彼女は見切りをつけて別れることにした。
- 煮え切らない返事ばかりの取引先には本当に困っている。こちらも何を準備すればよいかわからないからだ。
- こんな煮え切らない気持ちのままでは、どちらを選んでも失敗するだろう。
四字熟語では「躊躇逡巡」と「遅疑逡巡」
「二の足を踏む」と似た意味の四字熟語は、「躊躇逡巡」と「遅疑逡巡」です。「躊躇逡巡」は「ちゅうちょしゅんじゅん」と読み、「ためらう」意味の「躊躇」と「尻込みする」意味の「逡巡」を組み合わせています。意味は「ぐずぐずとためらう」です。「遅疑逡巡」は「ちぎしゅんじゅん」と読み、「いつまでも疑って決心がつかない」意味の「遅疑」と「逡巡」を組み合わせています。意味は「いつまでも決断がつかず、ぐずぐずと迷う」です。
- あとは連絡して決断を伝えるだけなのだが、彼女の落胆する顔が目に浮かんで躊躇逡巡してしまう。
- 最後までプロジェクトを遂行するか撤退するか、上司は遅疑逡巡するばかりで指示を出せないままだった。
「躊躇逡巡」と「遅疑逡巡」にはどちらも「ためらう」や「迷う」意味の四字熟語です。しかし「躊躇逡巡」は「一度決めたことに対して迷う」、「遅疑逡巡」は「そもそも決断できない」というニュアンスがあります。その点では、「躊躇逡巡」のほうが「二の足を踏む」に近い意味です。「決めかねる」や「迷う」意味の四字熟語は「優柔不断(ゆうじゅうふだん)」や「狐疑逡巡(こぎしゅんじゅん)」、「首鼠両端(しゅそりょうたん)」などもあり、いずれも「二の足を踏む」の類語といえます。
「二の足を踏む」の対義語
「二の足を踏む」の対義語、反対の意味を持つ四字熟語を紹介します。
「思い切って」の意味をもつ言葉が「二の足を踏む」の対義語
「二の足を踏む」の対義語は、「思い切って」を意味する言葉です。「思い切る」のほか「決断」や「決心」「決意」などが「二の足を踏む」の反対の意味があります。
四字熟語では「一気呵成」や「即断即決」
「一気呵成」と「即断即決」は、「二の足を踏む」と反対の意味をもつ四字熟語です。「一気呵成」は「いっきかせい」と読み、「物事を中断せず、一気に仕上げる」の意味。「二の足を踏む」の「迷う、ためらう」の意味とは対極にあります。「即断即決」は「そくだんそっけつ」と読み、「直ちに決断をくだす」や「物事の判断に迷わない」などの意味の四字熟語です。「いつまでもぐずぐずと決心がつかない」意味の「二の足を踏む」とは、決断の速さが異なります。「当機立断(とうきりつだん)」や「迅速果敢(じんそくかかん)」「剛毅果断(ごうきかだん)」などの四字熟語も「思い切って決断し、行動する」という意味で「二の足を踏む」の対義語です。
「二の足を踏む」の英語表現
英語に「二の足を踏む」を直訳した言葉はありませんが、「ためらう」や「決心がつかない」などの英語表現があります。単に「ためらう」意味では、「hesitate」です。「一度は決めたものの、思い直す」意味では「have second thoughts」を使います。また、「悩んだ挙句に実行を避ける」意味の英語表現は「fight shy of 」です。英語で「二の足を踏む」を使う場合は、言いたいことのニュアンスや悩んだ結果どうしたかによって適した表現を選びます。
まとめ
「二の足を踏む」は、「決断できない」や「ためらう」意味で使われる慣用表現です。決断そのものができない場合だけでなく、決断したことを実行できない場合も「二の足を踏む」といえます。ネガティブな意味合いの言葉なので、ビジネスシーンでは使う機会がないのがベストですね。