「いただく」「頂く」「戴く」を正しく使い分けられますか?「いただく」はビジネスシーンで頻繁に使われるため、正しい使い方をマスターしておきましょう。「いただく」のひらがなと漢字表記の意味と違いや使用時の注意点、類語など解説します。
「いただく」の意味とは?
「いただく」には、大きく分けて「もらう」と「食べる・飲む」の2つの意味があります。順に解説します。
意味1.「もらう」の謙譲語
「いただく」は、人からものを「もらう」の謙譲語です。誰かからものをもらったときに、「いただきました」と表現します。特に、自分が兼ねてからお願いしていたものをもらったときに、「いただきました」と表現する場合が多いです。
意味2.「食べる」「飲む」の謙譲語
「いただく」には、「食べる」や「飲む」の謙譲語としての意味もあります。「食べる」、「飲む」を目上の人に表現するときは、「お先にご飯をいただきました」「コーヒーをいただきました」などといいます。
「いただく」と「頂く」の違い
補助動詞として「いただく」を使うときはひらがなで、本動詞として「いただく」を使うときは漢字表記、またはひらがなで表記します。
- 「いただく」(補助動詞、あるいは本動詞)
- 「頂く」(本動詞)
補助動詞とは、ほかの動詞のうしろについて補助的に使われる動詞のことをいいます。たとえば、「お越しいただく」、「ご覧いただく」の「いただく」は補助動詞として使われています。補助動詞として使うときは必ず「ひらがな」で表記しましょう。
本動詞とは、本来の意味で独立的に用いられる動詞のことをいいます。「食べる」、「飲む」、「もらう」などは、本動詞なので「頂く」と表記して問題ありません。本動詞「いただく」の場合、漢字で「頂く」と表記するか、ひらがなで「いただく」と表記するかはシチュエーションに応じて好きな方を選びましょう。
「頂く」と「戴く」の違い
「頂く」と「戴く」では、「戴く」の方がより敬意を示した表現となります。広辞苑では、「頂く」と「戴く」ともに同じ意味である「もらう」の敬語表現として扱われていますが、強く敬意を示したいときは「戴く」を使う方が最適です。また、「戴く」には「もらう」だけでなく「ありがたくもらう」といったように、感謝のニュアンスも含まれます。
- お金を頂く。(お金をもらう。)
- お金を戴く。(お金をありがたくもらう。)
「いただく」の使い方と例文集
「いただく」の使い方や使用するときの注意点、例文を紹介します。
「いただく」の使い方
「いただく」は、「もらう」や「食べる、飲む」を謙譲語で表現するときに使いましょう。
「いただく」を使用するときの注意点
「いただく」を使用するときの注意点は3つあります。ビジネスシーンで頻繁に使うことが多い「いただく」ですが、正しく使うためには注意しておくべきことも。ここで注意点を確認しておき、恥をかかないようにしてください。
迷ったときはひらがな表記
「いただく」をひらがなで表記するか、「頂く」か「戴く」など迷ったときは、ひらがな表記にしましょう。前述したおさらいを下記に示します。
- 「いただく」(補助動詞、あるいは本動詞)
- 「頂く」(本動詞)
- 「戴く」(頂くよりも強い敬意を示す本動詞)
補助動詞か本動詞かわからない場合は、ひらがなで「いただく」と書いておけばどちらにしても間違いにはなりません。ですが、補助動詞であったものを漢字表記してしまうと誤りになってしまいます。
また、「頂く」か「戴く」で迷ったときは、「頂く」にしておくことをおすすめします。「戴く」は常用漢字外で一般的にはあまり使われないからです。
「させていただく」に注意する
「~させていただく」は、相手からの許可を得た行為に使う表現です。「~させていただく」は「~させてもらう」の謙譲語となります。「~させてもらう」のは相手の許可を得たシチュエーションであるように、「~させていただく」も許可を得たといったニュアンスを含みます。
そのため「ご連絡させていただきます」や「伺わせていただきます」は場合によっては間違った敬語表現です。「連絡」、「お伺い」ともに相手からの許可が必要でない場合は、「ご連絡いたします」、「伺います」などシンプルに表現しましょう。
「いただくことは可能でしょうか」は言い換える
「いただくことは可能でしょうか」は、「いただけますか」に言い換えた方が自然です。「いただくことは可能でしょうか」は、文法的に間違ってはいませんが、不自然な印象の表現となってしまいます。「いただけますか」と簡潔に表現しましょう。より丁寧にしたい場合は、「いただきますようお願い申し上げます」を使ってみてください。
「いただく」の例文
「いただく」の使い方を例文を見て確認しましょう。ここでは「いただく」、「頂く」、「戴く」の3つに分けて紹介します。
「いただく」の例文
「いただく」の例文は以下のとおりです。
- お手数ですがこちらまで来ていただけますか。
- ご確認いただけましたか。
- 本日はお休みさせていただきます。
- お先に上がらせていただきます。
「頂く」の例文
「頂く」の例文は以下のとおりです。
- ごちそうを頂きました。
- 飲みものを頂きます。
- 失礼ながらお先にご飯を頂きました。
「戴く」の例文
「戴く」の例文は以下のとおりです。
- サッカー選手にサインを戴く。
- 新人賞を戴いた。
- 社長からお金を戴く。
「いただく」の類義語・言い換え
「いただく」の類義語・言い換えには3つの表現があります。
頂戴
「頂戴(ちょうだい)」は「いただく」の言い換え表現です。もらう、食べる、飲むの敬語表現で、「いただく」をより丁寧にしたいときに「頂戴」を使います。
賜る
「賜る(たまわる)」も「いただく」の言い換え表現です。「賜る」は、 「もらう」の謙譲語、「与えられる」の尊敬語として使います。とても丁寧な表現なので、上司のような身分が近い人に使うと不快に感じられる恐れがあります。日常的にはあまり使うことのない表現として頭の片隅にだけ入れておきましょう。
承る
「承る(うけたまわる)」も「いただく」の言い換え表現です。「承る(うけたまわる)」は、受ける、聞くの謙譲語となります。意味は、慎んで受ける、承知する、拝聴するなどといった意味があります。たとえば、自分より身分の高い人からの指示や命令に対して「ご指示を承りました」と使います。
「いただく」と「くださる」の違い
「いただく」と「くださる」の違いは、謙譲語か尊敬語かです。「いただく」は謙譲語、「くださる」は「くれる」の尊敬語となります。目上の人から何かをもらったシチュエーションでは、自分が基準の場合は「いただく」、目上の人を基準にする場合は「くださる」と表現します。
- お菓子をいただきましてありがとうございます。(自分が基準)
- お菓子をくださいましてありがとうございます。(目上の人が基準)
「いただく」と「くださる」をどのように使い分けるかですが、自分がお願いしたことに対しては「いただく」を、それ以外は「くださる」を使うようにしましょう。「いただく」を使うことで、感謝の気持ちもあわせて伝えられます。
「いただく」を英語でいうと?
「いただく」と同じように使える英語表現はありません。「もらう」を意味する英語には、以下のものがあります。
- have
- get
- receive
- accept
「食べる」や「飲む」ならば、以下のものがあります。
- eat
- drink
- have
ただし英語で敬意を表したいときは、以下のように疑問文の単語を変えることで対応できる場合があります。
- Can I have that book?(その本をもらえますか?)
- May I have that book please?(その本をいただけますか?)
「Can I~?」よりも「May I ~?」の方が、丁寧な表現となります。
まとめ
「いただく」は、「もらう」や「食べる、飲む」の謙譲語です。また、補助動詞として使う場合はひらがなで「いただく」と表記し、本動詞として使う場合は、ひらがなまたは漢字で表記します。「いただく」はビジネスシーンでも頻繁に出てくる言葉なので正しい使い方を身に付け、きちんと使いこなせるようになっておきましょう。