「せっかく」は日常生活だけでなくビジネスシーンでも使えます。ただし、使うためには知っておくべき注意点もあります。本記事では「せっかく」の意味や正しい使い方、使うときの注意点など紹介します。正しく使い目上の人に失礼を与えないようにしましょう!
「せっかく」の意味とは?
「せっかく」には「努力する・力を尽くす」と「わざわざ」の2つの意味があります。それぞれ見ていきましょう。
意味1.努力する・力を尽くす
「せっかく」には、「努力する・力を尽くす」といった意味があります。日常会話で使われる「せっかく」からは、こういった意味があるとは想像しづらいですよね。「せっかく」の意味「努力する・力を尽くす」は、漢語の「折角(せっかく)」に由来します。
意味2.わざわざ
「せっかく」には、「わざわざ」といった意味もあります。ただし、日常的に多く使われている「わざわざ」と完全に同じ意味ではない点に注意が必要です。以下で「せっかく」と「わざわざ」のそれぞれの特徴を紹介します。
「せっかく」の後ろには、好ましいことや、価値があることなどの肯定的な内容の文を続ける必要があります。たとえば、「せっかくの助言を水の泡にしてしまった」の場合、「助言」には価値があったことを意味します。
一方で「わざわざ」の後ろには、本来は必要のないことや無駄な努力など価値がない行動を入れます。そのため、「わざわざご親切にありがとうございました」との発言は、「必要のない親切で迷惑だった」といったニュアンスが相手に伝わってしまう可能性も。
「せっかく」の後ろには肯定的な内容、「わざわざ」の後ろには否定的な内容と覚えておきましょう。
「せっかく」の由来・語源
「せっかく」の意味「努力する・力を尽くす」は、漢語の「折角(せっかく)」に由来します。以下は、由来となった話のかんたんな解説です。
「折角(せっかく)」の由来とされている漢書「朱雲伝」の中に、「朱雲が高慢な有識者を言い負かした話」がありました。人々はこれを、「立派な鹿の角を折るような快挙」と評価したのですが、そこから「努力する・力を尽くす」を意味する名詞である「折角(せっかく)」が生まれたそうです。
また、名詞である「折角(せっかく)」は後に副詞へと転じ、「努力・力を尽くしたすえに喜ばしい出来事が生じる」といった意味で使われるようになりました。「せっかくの機会」は、この意味を元にできた表現で、「本来ならば得られないような特別なチャンス」を意味します。
「せっかく」の使い方と例文集
「せっかく」の使い方を注意点と例文とあわせて確認しましょう。
「せっかく」の使い方
「せっかく」には「価値のある事柄」の分を入れて使います。また、「せっかく~」部分を、後に続く分の理由として扱うことが一般的です。
「せっかく」を使用するときの注意点
「せっかく」には以下の3つの誤用が多く見受けられます。日常的によく使われる馴染みのある言葉であるものの、誤用されているパターンも多いので、ここできっちり押さえておきましょう。
せっかくだから、は誤用
「せっかくだから」は誤用です。本来「せっかくだから」は、「せっかく」と「だから」を分けて使う必要があるからです。「せっかく~だから」のように「せっかく」の後ろに理由となる言葉を入れるのが正しい使い方です。
「せっかく~だから」の「~」部分が省略されるようになり、「せっかくだから」を使うことが定着された可能性があります。「せっかくだから頂きます」のように、「せっかくだから」を耳にすることが多いかもしれませんが、厳密には誤用なのでビジネスシーンでは使わないようにしましょう。
せっかくなのに、は誤用
「せっかくなのに」も誤用です。「せっかくだから」が誤用である理由と同様に、本来「せっかくなのに」は、「せっかく」と「なのに」を分けて使う必要があるからです。「せっかく~なのに」のように、「せっかく」の後ろに文を入れるのが正しい表現です。間に入れる文を省略しないように注意しましょう。
また、「せっかく~なのに…」の「…」部分には、「~」部分と矛盾する内容の文を入れる必要があります。「せっかくたくさん時間があったのに、何もできなかった」といった具合に使ってください。
せっかくなので、は誤用
「せっかくなので」も誤用です。「せっかくだから」や「せっかくなのに」が誤用である理由と同様に、本来「せっかくなので」は、「せっかく」と「なので」を分けて使う必要があるからです。「せっかく~なので」のように間を省略せずに使いましょう。
「せっかく」のビジネスで使える例文
「せっかく」のビジネスで使える例文を3つのシチュエーション別に紹介します。また、書き言葉としての「せっかく」の例文も紹介するので参考にしてください。
敬意を表す
「せっかく」は、敬意を表すときに使えます。
・せっかくお越しになったのですから、ぜひお上がりください。
・せっかくのお心遣いなので、ありがたく頂きます。
- 〇〇について確認してください。
- 〇〇様に、外出から戻った旨をお伝え願います。
「せっかく」で敬意を表す場合は、目上の人の行為に対して「せっかく~(行為)」を使いましょう。
お詫びする
「せっかく」は、お詫びをするときに使えます。「せっかく」の後ろに「なのに」や「にもかかわらず」をおく場合が多いです。
・せっかくのご厚意を無駄にしてしまい、大変申し訳ございません。
・せっかくご足労いただいたにもかかわらず席を外しており誠に申し訳ありませんでした。
- 〇〇について確認してください。
- 〇〇様に、外出から戻った旨をお伝え願います。
ただ謝罪するよりも、「せっかく」をつけることで、相手の努力や苦労をねぎらうニュアンスを強く伝えられます。
断わる
「せっかく」は、断わるときに使えます。「せっかく」の後ろに逆接の意味を持つ「~ですが」などを入れて文を作ります。
・せっかくお誘いいただきましたが、あいにく都合が悪いためご遠慮させていただきます。
・せっかくのお言葉ですが、お気持ちだけ頂戴します。
- 〇〇について確認してください。
- 〇〇様に、外出から戻った旨をお伝え願います。
「せっかく」を使って断わるときは、「嬉しく思うが、仕方なく断わる」といったニュアンスを相手に伝えられます。
夢に向かって励む(書き言葉)
「せっかく」には、「夢に向かって励むこと」を意味する、古い書き言葉も存在します。たとえば、「せっかく勉強するように」や「せっかく精進しなさい」などと使います。慣用句として年賀状に書かれることもあります。
「せっかく」を敬語で使う時は要注意
「せっかく」を敬語で使うときは、自分の行為に対して「せっかく」を用いないように注意しましょう。たとえば、「せっかくご用意しましたので」は誤りです。「せっかくご用意いただいたのに、食べられず申し訳ございません。」といったように、相手の行為に対して「せっかく」を使います。
「せっかく」の類義語・言い換え
「せっかく」には類義語・言い換え表現がたくさんあります。使える言い回しを増やして、シチュエーションに応じた言葉選びをしていきましょう。ここでは、6つの言い換え表現を紹介します。
はるばる
相手が遠くから自分のいる場所に来てくれたシチュエーションでは、「せっかく」を、「はるばる(相手がかけてくれた労力を表す言葉)」に言い換えられます。たとえば、「海外からはるばるお越しいただきありがとうございます。」などと使います。
ご足労いただき
相手が自分のいる場所に出向いてくれたシチュエーションでは、「せっかく」を、敬語表現の「ご足労いただき(足を運んでいただくこと)」に言い換えられます。たとえば、「お忙しい中ご足労いただきありがとうございます。」などと使います。
お時間をかけて
相手が自分のために時間を割いてくれたシチュエーションでは、「せっかく」を、「お時間をかけて」に言い換えられます。たとえば、「お忙しいところお時間をかけていただき誠にありがとうございます。」などと使います。
骨を折る
精一杯物事に取り組んだシチュエーションでは、「せっかく」を、「骨を折る(苦労する、尽力すること)」に言い換えられます。たとえば、「彼女がプロジェクトのために骨を折ってくれたおかげで無事に成功した。」などと使います。
生憎ですが
何かを断わるときや、よくない状況を伝えるシチュエーションでは、「せっかく」を、「生憎ですが(都合の悪い様)」に言い換えられます。たとえば、「生憎ですがすでに予定が入っており出席できません。」などと使います。
申し訳ありませんが
謝罪するシチュエーションでは、「せっかく」を、「申し訳ありませんが」に言い換えられます。たとえば、「申し訳ありませんが、都合がつかないため欠席させていただきます。」などと使います。
「せっかく」を英語でいうと?
「せっかく」にあたる英語表現はありません。ただし、「せっかく」に近いニュアンスには、「might as well(ついでだから)」や「Since(だから)」があります。
・We might as well go together.(せっかくなので、ご一緒しましょう。)
・Might as well.(せっかくだし。)
・Since you’ve traveled all the way to Kyoto, let’s go to Kinkakuji.(せっかく京都に来たのだから金閣寺に行こう。)
- 〇〇について確認してください。
- 〇〇様に、外出から戻った旨をお伝え願います。
まとめ
「せっかく」には、「努力する・力を尽くす」と「わざわざ」の2つの意味があります。また、「せっかくだから」や「せっかくなのに」、「せっかくなので」といったように「せっかく」の後ろの理由に当たる部分を省略することは誤りです。「せっかく」の後ろには、「価値のあること柄」を入れて文を作りましょう。ビジネスシーンで「せっかく」を正しく使って、上司や取引先の人に好印象を持たれるきっかけにしてくださいね。