ことわざ「能ある鷹は爪を隠す」の正しい意味、どんな場面で使うかを知っていますか?本記事では「能ある鷹は爪を隠す」の由来にはじまり、使い方や類語を紹介します。職場やふだんの会話で「能ある鷹は爪を隠す」をどう使うかがわかるようになりますよ。
「能ある鷹は爪を隠す」の読み方
「能ある鷹は爪を隠す」は「のうあるたかはつめをかくす」と読みます。「鷹」を訓読みすると「たか」で、音読みでは「ヨウ」または「オウ」です。四字熟語で「能鷹隠爪(のうよういんそう)」ともいいます。
「能ある鷹は爪を隠す」の意味
「能ある鷹は爪を隠す」の意味を解説します。「能ある鷹は爪を隠す」の意味は主に2つ。それぞれの意味とニュアンスを確認してください。
ギャップや「見かけによらない」の意味
「ふだんはあまり目立たない人が、意外なところやいざという場面で実力を発揮する」意味で「能ある鷹は爪を隠す」を使います。いつもの姿とのギャップや「見かけによらない」などのニュアンスがある意味です。
「謙虚な人」の意味
「本当に高い能力や才能をもっている人は、ふだんから実力をひけらかさない」意味でも「能ある鷹は爪を隠す」を使います。「実力はあるが控え目」または「才能を誇示しない」など「謙虚な人だ」のニュアンスがある意味です。
称賛する意味で使われる場合が多い
「能ある鷹は爪を隠す」は、「見かけによらずすごい実力だ」や「謙虚な人」のように称賛する意味合いで使われることが多いことわざです。人から言われる場合が多く、あまり自分で自分には言いません。
「能ある鷹は爪を隠す」の由来・語源
ことわざ「能ある鷹は爪を隠す」の由来と出典を紹介します。
出典は戦国時代のことわざ集
「能ある鷹は爪を隠す」の出典は、戦国時代のことわざ集『北条氏直時代諺留』です。北条氏直は16世紀の戦国大名。『北条氏直時代諺留』は1599年ごろの書物だといわれています。
鷹の性質が由来
鷹は狩りのとき、獲物に襲い掛かる直前まで爪を隠す性質が「能ある鷹は爪を隠す」の由来です。実力や才能のある人を、鋭い爪という武器を持ちながらふだんはそれを見せない鷹にたとえています。
「能ある鷹は爪を隠す」の使い方・例文
例文で「能ある鷹は爪を隠す」の使い方を説明します。また、「能ある鷹は爪を隠す」を使わない方がよい場面もチェックしてください。
例文
「能ある鷹は爪を隠す」には主に2つの意味があるため、それぞれの意味に沿った例文を挙げます。まず「ギャップがある」の意味で使う例文です。
- いつもおっとりしている彼女が新プロジェクトではテキパキと難題を片付けていた。能ある鷹は爪を隠していたんだね。
- 能ある鷹は爪を隠すというが、あなたはいつになれば実力を見せてくれるんだろうか。
- スポーツには興味がなさそうな彼だったが、能ある鷹は爪を隠しているだけだった。先日の野球大会では投打に大活躍だったよ。
次に「謙虚な人」の意味で使う「能ある鷹は爪を隠す」の例文を挙げます。
- 語学が堪能なのにそれを自慢しないとは、あなたは能ある鷹は爪を隠すの見本です。
- 能ある鷹は爪を隠すのが賢明ですよ。あまり成功をひけらかすと嫌味になります。
- チームの窮地を思わぬリーダーシップを発揮して救うと、いつもののんびりした彼に戻った。能ある鷹は爪を隠すものなんだね。
職場では目上の人に使わない
「能ある鷹は爪隠す」は基本的に「思わぬ実力をもっている」や「謙虚な人」と称賛する、いい意味で使うことわざです。しかし、職場で目上の人に使わない方が無難。「ふだんは能力のない人に見える」と受け取られる可能性があるからです。また、自分を指して「私は能ある鷹は爪を隠すタイプだ」などというのも要注意です。逆に「自分はすごい実力を持っている」と誇示しているとも受け取られます。「能ある鷹は爪を隠す」は「謙虚な人だ」と称賛の意味がありますが、自分に使っても謙遜の意味にはなりません。
「能ある鷹は爪を隠す」の類義語・言い換え表現
「能ある鷹は爪を隠す」と似た意味のことわざ、四字熟語を紹介します。どれも「実力を見せない」や「謙虚」の意味が共通しています。
「上手の猫が爪を隠す」
「上手の猫が爪を隠す」は「じょうずのねこがつめをかくす」と読み、「真に実力があるものは、ふだんから自慢したりしないものだ」の意味で使うことわざです。「能ある鷹は爪を隠す」と同じく能力を「爪」にたとえ、「上手」とはネズミ捕りを指しています。「鳴かない猫は鼠捕る」と「鼠捕る猫は爪を隠す」も、「上手の猫が爪を隠す」や「能ある鷹は爪を隠す」と同じ意味のことわざです。
「大智は愚の如し」
「大智は愚の如し」は「だいちはぐのごとし」と読み、中国北宋時代の文学者・蘇軾(そしょく)の詩に由来したことわざ。「本当の賢者は知識をひけらかさないので、一見すると愚者のように見える」の意味です。四字熟語で「大智如愚(だいちじょぐ)」ともいいます。
「大巧は拙なるが如し」
「大巧は拙なるが如し」は「たいこうはせつなるがごとし」と読み、「小手先の技で上手に見せようとしない真の名人は、一見すると拙いように思える」の意味です。中国春秋戦国時代の思想家・老子(ろうし)の言葉が由来です。
「食いつく犬は吠えつかぬ」
「食いつく犬は吠えつかぬ」は「くいつくいぬはほえつかぬ」と読み、「真の実力者はむやみやたらに騒ぎ立てたりしない」の意味で使います。「弱く臆病な犬ほど吠えたて、強い犬は吠えずに行動を起こすものだ」のたとえがもとになったことわざです。
「自己韜晦」
「自己韜晦」は「じことうかい」と読みます。「韜晦」は「才能や知識を隠す」を表し、「自分の地位や才能、本心などを隠す」意味の四文字熟語です。能力を隠す部分は「能ある鷹は爪を隠す」と同じですが、「本心」など心や思考も隠す点が少し異なります。
「韜光晦迹」
「韜光晦迹」は「とうこうかいせき」または「とうこうまいせき」と読みます。出典は中国の類書『太平御覧』六五六引「高僧伝」。「才能や実力のある人が、世間にはそれを隠してひっそりと暮らす」意味の四字熟語です。「悟りを開いたものが俗世を離れて暮らす」という意味の仏教用語でもあり、この意味でが「能ある鷹は爪を隠す」とは少し異なります。
「被褐懐玉」
「被褐懐玉」は「ひかつかいぎょく」と読み、老子が記した『老子』が出典です。「秀でた才能を表にはださない」意味で使います。「被褐」は「粗末な衣服を着ている」こと。「粗末な衣服を着ているが、懐には宝玉をもっている」のたとえがもとになっています。
「能ある鷹は爪を隠す」の対義語
「能ある鷹は爪を隠す」と反対の意味があることわざを挙げます。どれも「見掛け倒し」や「実力がともなわない」の意味で使われることわざです。
「浅瀬に仇波」
「浅瀬に仇波」は「あさせにあだなみ」と読み、「思慮が浅い人ほど、ささいなことで大騒ぎするものだ」の意味です。『古今集』の「底ひなき淵やは騒ぐ山川の浅き瀬にこそあだ波は立て」がもとになっています。
「光るほど鳴らぬ」
「光るほど鳴らぬ」は「ひかるほどならぬ」と読みます。すさまじい稲妻のわりに雷鳴は大したことがないというたとえから、「口ばかり偉そうな人ほど、実は弱い」の意味です。「口うるさい人ほど、実は怖くない」の意味でも使います。
「鳴く猫は鼠を捕らぬ」
「鳴く猫は鼠を捕らぬ」は「なくねこはねずみをとらぬ」と読み、「口数が多い人ほど実力はない」の意味です。「口ばかり」のたとえに使います。
「能無し犬の高吠え」
「能無し犬の高吠え」は「のうなしいぬのたかぼえ」と読み、「口先ばかりで実力がともなわない人」の意味です。「弱いものほど力を誇示したがる」の意味でも使います。
英語で「能ある鷹は爪を隠す」を何という?
英語では鷹ではなく猫で「Cats hide their claws」と表現します。訳は「能ある猫は爪を隠す」です。また、「He who knows most, speaks least」という表現もあります。「もっともよく知る者がもっとも語らない」の意味で、「大智は愚の如し」と近い表現です。
まとめ
「能ある鷹は爪を隠す」は、「見た目ではわからない、優れた実力」や「実力をひけらかさない謙虚な人」の意味で使うことわざです。誉め言葉として使う場合がほとんどですが、とくにビジネスシーンでは失礼に当たらないよう気を付けてください。また「謙虚」が美徳にならない場合もあります。爪を隠すのもほどほどにした方がいいかもしれませんね。