ビジネスシーンやテレビCMでよく耳にする「コミット」はどういった意味なのか、正しく理解できているでしょうか。実は現在ビジネスシーンで利用されている「コミット」には2つの意味があります。意味を正しく理解して適切に使えるようにしましょう。
「コミット」とは?
「コミット」は日常会話では聞き慣れない言葉ですが、ビジネスシーンの中ではよく使われる用語です。初めて聞いた場合は意味が曖昧にしかわからず、戸惑われる方も多いかもしれませんね。まずは、「コミット」の正しい意味を理解しましょう。
「コミット」はコミットメントの略語
「コミット」は「コミットメント」を省略した言葉です。英語で「commit」という単語もありますが、ビジネスシーンで利用される「コミット」では主に「コミットメント」の意味合いで利用されます。
英語の意味
ここでは、日本語で用いられる「コミット」の由来となった「コミットメント(commitment)」の意味を深掘ります。
英語の「コミットメント(commitment)」の意味は以下のとおりです。
・罪や過失を犯すこと、犯行
・収容、収監、投獄
・委託
・約束、公約、言質
・献身、参加、傾倒
日本語の意味
日本語で「コミット」を利用する場合は、上記の英語の意味のうち主に以下の意味合いで用いられます。
・約束、公約、言質
・参加
ビジネスでの「コミット」の意味
日本語での意味を理解したところで、ビジネスシーンでは特にどのような意味をもって利用されるかをみていきます。
公約・約束・承認する
ビジネスシーンでも、一般的な意味として用いられる「公約・約束・承認する」という意味合いで利用されます。
例えば、「得意先のコミットメントが得られた」などの場合は「承認」と言った意味で用いられています。また、ビジネスシーンでは一般的な「約束」というよりも、責任の所在を明確にするニュアンスが強くなる点がひとつ特徴と言えます。
責任を持って関与する
「コミット」のビジネスシーンでは「責任を持って関与する(参加する)」という意味でも用いられます。
例えば、「このプロジェクトにコミットして欲しい」などと言う場合、「プロジェクトに積極的に参加する」というニュアンスが含まれます。
「コミット」も「コミットメント」と同じ名詞表現として使われる
英語では「コミット(commit)」は「委託する」などの動詞として使われますが、日本語の場合は「コミット」も「コミットメント」ど同様に名詞表現として用いられます。
ですので、ビジネスシーンで利用する場合にも「コミット」に「〜する」などをつける必要があります。例えば、「君はあの会議にコミットしているか?」などのように使われます。
ビジネスでの「コミット」の使い方と例文
では、ビジネスシーンで「コミット」という言葉を用いる場合、シーンによってその意味が変わります。ここではそれぞれの意味を利用した例文を用いて、シーンごとの使われ方を見ていきましょう。
「コミット」は責任が伴うニュアンスが含まれる
先ほども軽く触れましたが、ビジネスシーンで「コミット」を利用する場合は「責任の所在を明確にする意図」や「責任を伴う関与の仕方」というニュアンスが含まれます。
この「責任」というニュアンスが伴うことで、「約束」や「参加」という言葉の意味よりも重みのある言動と受け取られます。結果を出すことや責任を持って関与できるか明確でない場合は「コミット」という言葉を用いることで逆に信頼を失ってしまう場合もありますので、利用する際は注意しましょう。
「約束」などの意味の例文
「約束」という意味で用いられる場合の例文を見ていきましょう。
この場合でも「責任を伴う約束」というニュアンスになりますので、主語を明確にする必要があります。
- 鈴木くんが部長に、営業目標達成をコミットしたようだ。
- 私を昇進させてくれれば、業績悪化の改善にコミットします。
- このプロジェクトが成功するとコミットしてくれ。
「関与する」などの意味の例文
「関与する」という意味の場合も、ただ「参加する」という意味に加えて「責任を持って参加する」というニュアンスが加わります。これは「主体性を持って参加する仕事(会議)に臨む」ことを暗に示している表現です。
- 今回部長はこのプロジェクトにコミットしない。
- この会議にコミットしているのはほんの数人だ。
- 事業拡大に向けてコミットできる人材が必要だ。
「コミット」の類義語・言い換え表現
「コミット」の類義語言い換え表現はその意味によってさまざまです。
「約束」を意味するニュアンスの場合、類義語は「確実な約束をする」という意味である「確約」が近しい言葉です。「参加・関与」を意味するニュアンスの場合、類義語は「アサイン」が近しい言葉と言えるでしょう。
「コミット」の対義語
「コミット」の対義語は「オミット」です。
「オミット」は「除外する」という意味のビジネス用語であり、現在では主にIT分野で用いられる言葉です。例えば、「私の企画はメリットが少ないという評価でオミットされた」という文章の場合、「企画内容からメリットが少ないと評価され、企画を除外された」という意味になります。
また、「コミット」の意味のひとつである「約束」の対義語にはならない点も覚えておきましょう。
「コミット」の英語表現
日本語で利用されている「コミット」と同じ意味合いで英語表現をする場合も「commit」や「commitment」を利用できます。
「commit」は他動詞のため、「be committed to〜 」という文法で利用されます。例えば「私は売上拡大にコミットします」の場合、英語表現は「I am committed to sales growth」という表現になります。
「コミット」に専門的な意味がある分野
「コミット」はビジネスシーン以外でもさまざまな分野で用いられる言葉です。分野によっては独自の意味を持つ場合もありますので、今回は専門的な意味を持つ分野での使われ方を紹介します。
経済学での意味
経済学における「コミット(コミットメント)」は「その行動しかとれないような実効性のある仕組み」を意味します。
身近な例ですと、家電量販店が「他店の方が安い場合は同じだけ値引きします」と宣言することは経済学のコミットメントの実例です。この宣言では、「他店と同じ安値で購入できる」ことから顧客が他店に奪われることを防ぐ効果もあります。
心理学での意味
心理学における「コミット(コミットメント)」は「決断する」や「積極的に関わる」という意味で用いられます。
意味としては一般的な「コミット」と大きな違いはありませんが、心理学ではこの「コミット(コミットメント)」がアイデンティティの確立に影響を及ぼすひとつの要素だと位置付けられています。
IT分野での意味
IT業界における「コミット(コミットメント)」は「トランザクション処理(データベース上での一連の更新処理)がすべて正常に完了した結果」を意味します。
IT業界ではシステムの動作を完了させるために、複数の作業が必要な場合があります。これらの複数の作業をすべて完了し、正常にシステムを動作できた場合などに用いられる専門用語です。
「コミットメントライン」は「コミット」とは異なる意味
「コミット」に似た言葉として「コミットメントライン」という単語を耳にする機会もあるかと思います。
「コミットメントライン」は金融業界の専門用語として用いられており、別名では「銀行融資額」と呼ばれる言葉です。
「コミットメントライン」は、「銀行と顧客(企業等)が事前に設定した期間・融資枠の範囲内で、顧客の請求に基づき、銀行が融資を実行することを約束(コミット)する契約」を意味します。
この「コミットメントライン」の契約期間内であれば、顧客は融資枠内であれば審査なしで融資を受けられる仕組みです。これは主に安定的な経常運転資金枠の確保や、マーケット環境の不測事態への対応手段の確保などを目的に利用されるものです。
まとめ
「コミット」は現在では日常的に耳にする言葉になりましたが、それぞれの分野で意味が違う場合やビジネスシーンで用いる場合には、責任を伴う発言になる点をよく理解した上で、利用することが必要な表現です。
関わる分野で用いられる意味やニュアンスをよく理解し、適切な使い方を意識しましょう。