「利便性」とは使う人にとって都合がよいこと、役に立つことをいいます。「便利」は「利便」の同義語ですが、「便利性」とは使えないので注意しましょう。「利便性を図る」や「利便性が高い・低い」などの使い方を例文とともに紹介します。
「利便性」の意味とは?
「利便性(りべんせい)」とは、「便利で都合がよいこと」や「便利さの程度」のことをいいます。役目を果たすのに適していることをいう「利」と行いやすいことをいう「便」、ものごとの性質をいう「性」が合わさった言葉です。
「利便性」の類義語・言い換え
「利便性」の類義語には、便利なことや役に立つ様子をいう言葉があります。それぞれの意味と細かいニュアンスの違いを知って、適切に使い分けましょう。
1.重宝
「重宝(ちょうほう・じゅうほう)」とは便利で役に立つことをいいます。便利なことを意味する「調法(ちょうほう)」と混同されるようになったことから、便利で役立つものも「重宝」といわれるようになりました。便利なゆえに、「常に使っている」のニュアンスも持っている言葉です。
- 最近購入した掃除機が軽くて使いやすく、とても重宝している。
- 電子辞書は重宝で手放せない存在だ。
2.有益
「有益(ゆうえき)」とは当事者に利益がある、ためになることをいいます。「利便性」とくらべ、「当事者にとって」のニュアンスが強い言葉です。
- 時間を有益に使おうと思い、通勤電車の中で英語の勉強を始めた。
- 先輩はいつも、私に有益なアドバイスをくれる存在だ。
3.役立つ
「役立つ」とは間に合うことや役に立つことをいいます。役目を十分に行える、役目を果たす適任であることを指すこともあります。
- 彼は機転が利き、スキルも高いので、我が社にとって役立つ人材と考えます。
- これを持っていけば何かと役立つだろう。
4.有用
「有用(ゆうよう)」とはなにかの役に立つことやその様子をいい、「利便性」の言い換え表現にも使えます。「有用」の対義語は、役に立たないことを意味する「無用(むよう)」です。
- チャットツールは、テレワーク中のコミュニケーションに有用だ。
- 有用な資源には、限りがあると考えた方がよい。
5.実用性
「実用性(じつようせい)」とは、実際に用いる、日常生活などで実際に役立つ度合いのことをいいます。実際の生活で活用できるかどうかを問う点が「利便性」とは異なります。
- この製品は、安全性を損なわずに実用性を向上させたい。
- ものの価値は、実用性で決まると考えている。
6.便宜
「便宜(べんぎ)」とは、必要なものやある目的にとって都合がよい、便利がいいことをいいます。「利便性」とは違い、「適したやり方や特別な計らい」と「音信、便り」の意味も持っている言葉です。「便宜上」とは、その場においては好都合であることを意味しています。
- 今回は便宜上、部長の方針で進めることとなった。
- 顧客の便宜性を考慮し、商品価格は据え置きとなった。
7.至便
「至便(しべん)」とは、とても便利な様子をいいます。「交通至便」や「アクセス至便」とは交通の便がよく、どこへ行くにも不自由しないことを意味します。
- マイホームは、通勤に至便な場所を選択したい。
- このマンションは交通至便な上、徒歩圏内にスーパーや公園もあるのが魅力的だ。
8.使いやすさ
「使いやすさ」とは、使うのに困難がない程度のことで、「使い勝手」や「ユーザビリティ」も似た意味を持ちます。「利便性を高める」は、「使いやすさを向上させる」と言い換えられます。
- 今回のアップデートは、機能の使いやすさを向上させるためのものだ。
- ユーザーの使いやすさを考慮したサービスを提供する。
9.アクセシビリティ
「アクセシビリティ」は英語「Accessibility」が語源のカタカナ語で、便利であることや利用のしやすさを意味しています。もともとの意味はアクセスのしやすさ、近づきやすさであり、それが転じて交通の便のよさや、誰もが情報にアクセスして便利に使える様子についても表現するようになりました。
- アクセシビリティの高いサイトからは、必要な情報をすぐに見つけ出せる。
- エレベーターがなかったのでアクセシビリティが悪く、ビルの入居率が低下している原因になっていた。
「利便性」の対義語
「利便性」の対義語は、「不便さ」です。便利ではないことをいう「不便」に、ものの状態や程度をいう接尾語「さ」が合わさった言葉です。「非利便性」や「不便性」とはいわないので注意しましょう。
- 家の周りは静かで環境は申し分ないが、通勤には不便さを感じる。
- 心に余裕がある人は、不便さを楽しみながら生活している。
「利便性」と「便利性」の違い
「利便性」は便利であることや便利さの程度を意味しますが、「便利性」は存在しない言葉なのを覚えておきましょう。「利便」と「便利」はどちらも便利であることを意味する言葉ですが、「性」を付けられるのは「利便性」だけです。また、「便利」は「利便性」のように形容詞と一緒に使えないため、「便利が良い」などと使うこともできません。
「利便性」を英語でいうと?
「利便性」の英訳は「convenience」で、便利なものや設備、衣食住の便、好都合なことなどの意味があります。「to consult one’s convenience」で「人の利便性を図る」を意味します。
- His house is full of convenience.(彼の家はさまざまな理由で利便性が高い。)
- To enhance convenience for retrieval.(検索のときの利便性を向上させる。)
「利便性」の使い方と例文集
「利便性」の使い方を例文とともに紹介します。「利便性を図る」や「利便性が高い」、「利便性を向上する」など、後につながる言葉によって使い方が変わることを知っておきましょう。
1.利便性を図る
「利便性を図る」とは、便利になるように考える、計画することをいいます。似たような表現には「利便性の向上を図る」や、「利便性を考慮する」などもあります。
- 乗り継ぎの利便性を図るため、ダイヤ改正が実施された。
- 利用者の利便性を考慮して、マンションの1階にコミュニティ機能が設けられた。
2.利便性が高い・良い
「利便性が高い・良い」とは便利であることをいいます。
- 交通利便性の高い駅周辺は人気があるため、家賃相場も高い。
- ユーザーにとって、利便性の良いシステムを構築したいと考えている。
3.利便性が低い・悪い
「利便性が低い・悪い」とは便利ではない、不便であることをいいます。「利便性を損なう」や「利便性に欠ける」も、同様の意味を持ちます。
- 公共交通機関は1時間に1本の路線バスしかないため、利便性が低いのが悩みだ。
- A社の製品と比較すると利便性に欠け、価格も高いように思える。
4.利便性を向上・改善する
「利便性を向上・改善する」とは、利便性が高まり、より便利になることをいいます。
- 近くに大型複合商業施設ができたので、生活の利便性が向上した。
- 利便性を改善し、多くのお客様にご満足いただけるサービスを目指したい。
5.利便性を提供する
「利便性を提供する」とは、対象者が便利に思える、使いやすいと感じる商品やサービスなどを利用できるようにすることをいいます。
- 当社の強みは、ワンストップで顧客の利便性を提供することです。
- 建物の総合管理事業により、社会に広く利便性を提供することを目指す。
6.利便性を考慮する
「利便性を考慮する」とは、対象者が使いやすく便利になるよう、よく考えることです。ものごとを決定する前にさまざまな要素について考えることを、「考慮」といいます。
- 生活の楽しさとともに、利便性を考慮した住宅づくりを目指しています。
- 利便性を考慮したリモートワーク環境の構築は、最近の企業の課題の一つだ。
まとめ
「利便性」とは、便利で都合がよいこと、役に立つ程度のことをいいます。堅苦しいと感じる場合は、文脈により「役立つ」や「使いやすさ」などと言い換えるのがよいでしょう。「便利性」や「便利が高い」は誤用なので、使わないよう注意しましょう。