「シニカルヒステリーアワー、面白いよね」「シニカルナイトプラン、聞いた?」漫画や初音ミクの話題で盛り上がっているあなた、「シニカル」の正しい意味や使い方などはわかっていますか?口にする以上は正しく使えるように、さまざまな側面から解説します。
「シニカル」の意味とは?
「彼はシニカルだからね」と聞いて「乾燥剤みたいにドライってことですか?」と聞き返し、「そりゃシリカゲルだろ?」と呆れられたなんて話を聞いたことがあります。ここまでいかなくとも「シニカル」と言われてピンとこない人は少なくないのではないでしょうか。「シニカル」の意味を解説します。
皮肉な態度をとるさま
「シニカル」とは、皮肉な態度をとる様子をいう言葉で、ほかに冷笑的、嘲笑的の意味もあります。なんとも素直に反応しない同僚などを「シニカルなやつだな」と評するときなどに用いられます。
「シニシズム」や「シニスム」とも言う
「シニカル」な人を指してシニシズムやシニスムと表現することもあります。犬儒主義や冷笑主義と訳されますね。冷笑主義者の中には、学問や芸術、文化などを否定する反文化的禁欲的生活を提唱する人も見られます。
「シニカル」の由来・語源
「シニカル」は外来語ですから、元になる言葉があります。元の言葉やさらにその語源を探ってみましょう。
「シニカル」は英語
「シニカル」は元は英語で、綴りはcynicalです。皮肉な様子や、世をすねた様を表す形容詞として用いられます。
- a cynical smile(皮肉な笑み)
- He is cynical about my opinion.(彼は私の意見に冷笑的だった。)
語源はギリシャ哲学
英語のcynicalの語源をさらにたどると、ギリシャ哲学のkynikos(キュニコス)まで遡ります。ソクラテスの時代に提唱された哲学の一派で、kynikosは英語ではdog-like(犬のような)の意味で、犬儒学派とも呼ばれます。人々の生活を、犬のように施しを受けている状態とみなす、冷笑的な学派でした。このkynicosが名詞のcynic(皮肉)になり、形容詞化してcynicalになりました。
「シニカル」と間違いやすい言葉
外来語はどうしても意味が曖昧になってしまい、よく似た言葉と混同されることが多くなりがちです。「シニカル」もよく似た意味の「アイロニカル」と「ニヒル」がよく混同されています。その違いをしっかり把握しておきましょう。
アイロニカル
「アイロニカル」はやはり英語がもとでironicalと表記します。ironicとすることも多く、訳語としては「シニカル」と同じ、皮肉な、になります。しかし「アイロニカル」はユーモアを目的として、わざと反対の表現を返す態度の意味があり、必ずしも否定的なニュアンスを含みません。名詞のirony(アイロニー)は「反語」と訳され、わざと反対の受け答えをすることとされています。そうしたあまのじゃくな態度が「皮肉な」の訳になったのだと考えられます。「シニカル」が自己中心的で他人をさげすむような皮肉であるのと違って、「アイロニカル」はユーモアを含んで反対のことをいう皮肉であるわけです。
ニヒル
「ニヒル」も英語がもとでnihilと書き表します。訳語としては「虚無」となり、すべてのことに興味関心を持っていない状態を指します。つまり「ニヒル」は冷笑的でさえなく、関心を持つこともできない状態を表すわけです。
「シニカル」の使い方と例文集
「シニカル」には、なんとなくかっこいい印象を持たせる雰囲気があるかもしれません。しかし意味を見てもわかるようにこの言葉は決して肯定的なニュアンスを持ってはいません。使い方には十分な注意が必要です。
「シニカル」の使い方
「シニカル」は基本的に物事に対して毒づくような意味を持つので、前向きな言葉として使うことはできません。辛辣な、あてこすった、のような意味もあるので、この言葉を口にする人こそが「シニカル」に見えかねないわけです。その意味では、よほどの覚悟を持って、「皮肉」としての意味合いが必要なとき以外は用いない方が無難です。
「シニカル」の例文集
- 古臭い考えによる経営が会社を傾けているというシニカルな批判を受けています。
- 破れかぶれの方策が結果的に好評だっただけだとシニカルな分析を示した。
耳に痛い話をするときには「シニカル」の表現は効果的かもしれません。もちろんこれを口にした人は、その発言に対する批判を覚悟する必要があることはいうまでもありません。
- ボーナスは期待通りではなく、彼はシニカルに笑った。
- シニカルな態度は、営業するうえではマイナスの効果しかない。
「シニカル」を笑い方や態度を形容する意味でのみ使用している例です。日常的な使用としてはこの程度にとどめるのがよいかもしれません。
「シニカルリスニングモード」とは?
「シニカルリスニングモード」とは、はじめから相手の考えを決めつけて受け入れようとしていない態度のことを指します。思春期の子どもが親の説教を聞いているときのイメージですね。ビジネスシーンでは全く得るもののないモードで、初めからコミュニケーションを断つ態度といえます。
「シニカル」の類義語・言い換え
「シニカル」はかなり使い方に気を遣う言葉です。同じような意味で別な言葉に言い換えられると、ニュアンスが伝わりやすくなることもあります。2つほど紹介します。
冷笑や嘲笑
- 彼の傍若無人な振る舞いは周囲の冷笑の対象だ。
- そんなバカなことをしていると先方から嘲笑されるぞ。
「シニカル」の訳語ではありますが、冷たい扱いを受ける様子を言い表すには適しています。冷笑にしても嘲笑にしても「笑う」行為でやや和らげられている印象があります。とはいうものの、褒められた行為ではないことを十分に伝えられますね。
斜に構える
彼は斜に構えていて、自らの成績不振にまじめに対応していない。
「斜に構える」は物事をまともに見ようとしていない意味で、「シニカル」の持つ投げやりな態度と通底しています。「斜に構える」は、きちんと向き合っていない態度を表しているので、現実逃避しているニュアンスがあります。
「シニカル」の対義語
「シニカル」が否定的な意味を持つ言葉なので、対義語は肯定的なものが挙げられます。「シニカル」に複雑なニュアンスがあるためか、もろ手を挙げて前向きな言葉ばかりでないところは注意が必要です。4つ紹介します。
ユーモラス
一般的に対義語として挙げられるのが「ユーモラス」です。「シニカル」が否定的で厭世的なだけに、明るく楽天的な「ユーモラス」が対義ととらえられるわけです。「ユーモラス」は機知に富んだものであればビジネスシーンでも有用なものです。「皮肉」でさえも、ユーモアを含む「アイロニカル」なものであれば、コミュニケーションの活性化につながりますね。
リスペクト
相手を尊敬する意味の「リスペクト」は、相手の否定から始まる「シニカル」の対極にある態度です。「シニカル」な態度では関係性は反発的なものにしかなり得ませんが、お互いを「リスペクト」する態度からは肯定的な高め合う関係性が構築されるはずです。
トラスト
信頼を意味する「トラスト」は、相手の言うことを全く受け入れない「シニカル」と本質的に対義語です。ビジネスにおいて最も大切なものの一つが「トラスト」であるとすれば、やはり「シニカル」は最も避けるべきものなわけです。
世辞
日本語の「皮肉」の対義語が「世辞」です。「世辞」は相手の機嫌を取るために、心にもないことを言うことです。確かに「世辞」を言われれば、悪い気はしないかもしれません。しかしこれは本当の意味で相手を立てているわけでないことは当然わかりますよね。「皮肉」もよくありませんが、「世辞」も同様にいただけないものです。
まとめ
思春期の頃は、何となく世の中は間違っているように思い、「シニカル」な友人を見てかっこよく感じることがあります。しかしこれはまさに若気の至りで、社会人となれば、いろいろ矛盾をはらんでいることを含めて現実を受け入れなければならないことがわかります。「シニカル」であることは、ビジネスシーンにおいては、誰からも受け入れられることのない非生産的な態度といえるでしょう。いろいろうまくいかないことがあり、他人と意見がぶつかるのは当然で、そこを何とかうまく回るように工夫するのが一人前のビジネスパーソンです。