最近は「バウチャーをお持ちですか?」と聞かれることが増えてきました。ホテルや飛行機、資格試験に出向いても「バウチャー」を求められることがあります。そもそも「バウチャー」って何なのかからその仕組みを利用する制度まで詳しく解説します。
「バウチャー」の意味とは?
同じようなものを「バウチャー」と呼んだり「クーポン」と呼んだり、何かとややこしいイメージがあります。この言葉の意味を確認しましょう。
「バウチャー」とは引換券
「バウチャー」とは、一言で言えば引換券のことです。費用は別に支払って当日は「バウチャー」だけで宿泊できたり、バウチャーを提示して飛行機に乗ったり、それだけでサービスを受けられるものを指します。
「クーポン」との違い
「クーポン」は、一般的には割引券を指します。クーポンを示せば商品を安く買えたり、安く食事ができたりするものを指します。100%割引になれば「バウチャー」と同じ働きをするわけです。そもそもの語源で言えば、「バウチャー」は英語に由来していて、「クーポン」はフランス語に由来しています。
英語ではvoucher
「バウチャー」はvoucherとつづられ、もともとの語意は証明書です。動詞のvouch(保証する)に~erを付して名詞化したものですが、動詞として、証明書を発行する意味も持っています。保証人や証書の意味もあります。日本語における「バウチャー」は、特定のサービスを受ける権利があることの証明書、の意味に用いられています。
「バウチャー」の使い方と例文集
「バウチャー」は最近よく用いられるようになってきている言葉です。ビジネスシーンでのこの言葉の使い方を見ていきましょう。
「バウチャー」の使い方
ビジネスシーンで多く用いられるのは、宿泊やフライトチケットの予約証明書としての用い方です。また、IT系の資格試験では、受験資格を証明するものとして「バウチャー」が発行されることもあります。
「バウチャー」の例文
- ご宿泊のバウチャーをご提示いただけますか?
- 明日のフライトのバウチャーの発行をお願いします。
ホテルのカウンターや空港のチェックインデスクなどで提示を求められる場面が多いですね。「バウチャー」は証明書の形で発行されるものが多いですが、身分証明できれば紙ベースを必要としない場合もありますので、事前に確認しておきたいですね。
「バウチャー」の関連語
「バウチャー」は、それ自体がビジネスシーンでよく見かけるものです。しかしビジネスシーンとしてみれば、この言葉はビジネスチャンスに結び付くトレンドワードと言えます。この言葉に関連したものを見ていきましょう。
「バウチャービジネス」
「バウチャービジネス」は、「バウチャー」の仕組みを利用してサービス提供するビジネスモデルのことを言います。飲食店やコンビニエンスストアなどで利用できる「バウチャー」を発行、利用者に提供して利用促進を図るビジネスで、バウチャーの対象企業からの手数料などで収益を上げるものです。従業員に電子食事カードを発行することで、利用履歴の確認が容易な福利厚生サービスとして利用する企業などが出てきています。
「ホテルバウチャー」
日常よく見かける「バウチャー」の代表格の一つです。ホテルの宿泊予約をした段階で「ホテルバウチャー」が発行され、宿泊時はこれによって予約を確認する仕組みです。最近は宿泊予約もネット経由が多いので、「バウチャー」もデジタルデータで付与され、必ずしも「バウチャー」としてプリントアウトしなくてよい場合が増えています。
「フライトバウチャー」
「フライトバウチャー」は、飛行機の搭乗に使用できる「バウチャー」システムです。フライト料金だけでなく、手荷物などの取扱料金やその他手数料、税金などの支払いに使用できます。バウチャーそのものがチケットに代わるわけではなく、空港カウンターなどで正規のフライトチケットに交換する形のものも多いので、そのままチェックインできるかどうかは確認しておく必要があります。
「バウチャーチケット」
「バウチャーチケット」は、ベンダー系の資格試験を受ける際に利用する有効期限付きの前売りチケットのことを言います。受験する資格に応じて、1試験に対して1枚の「バウチャーチケット」が必要になります。会社の研修の一環として受験する場合や、職務に直結する資格試験の場合など、会社から費用負担として「バウチャーチケット」が支給される場合もあります。
「バウチャーコード」
「バウチャーコード」は、「バウチャー」として利用できる暗証コードのことです。食事に使える「バウチャー」や音楽配信サービスで使用できる「バウチャー」など、「バウチャーコード」の形で発行されるケースは増えてきています。メリットとしては、紙ベースでないので紛失などのトラブルが少ないこと、コードの入力で支払いが完了するのでネット決済などで利用しやすいこと、などがあります。
「バウチャー制度」とは
「バウチャー」は生活のさまざまな場面に取り入れられてきています。海外ではこうした考え方を公的なサービスに導入することは珍しくありません。日本においても公的なサービスとして「バウチャー制度」を取り入れる動きが見られ始めています。「バウチャー制度」とはどんな仕組みなのでしょうか?
補助金制度を指す
「バウチャー制度」とは、公的なサービスを受けた個人に対して補助金を交付する仕組み全般を指します。一般的な「バウチャー」のように、特定のサービスを受けるための利用券を交付するタイプや、ICカードなどで利用額を制限して支給するタイプがあります。このほか、日本育英会の奨学金や雇用保険として支給される教育訓練給付のように、サービスを利用後にその利用実績をもとに補助金が支給されるものも「バウチャー」と呼べます。
「バウチャー制度」のメリットは?
「バウチャー制度」は利用者の利便性向上とサービスの質的向上を目指すものです。従来の補助金は施設側に支給され、どうしても公立の施設に手厚くなりがちでした。「バウチャー」を導入すれば、補助金は直接利用者に支給されるため、利用先として公立や私立の区別なく選択できる利便性が生まれます。また選択される側として施設側には利用者を獲得するための競争が生まれ、サービスの質的向上につながると考えられています。
代表的な「教育バウチャー」
「バウチャー制度」が注目を集めるきっかけの一つになったのが、2006(平成18)年に当時の安倍首相が教育再生会議に諮問した「教育バウチャー」の提起でした。これはアメリカのミルウォーキー市やクリーブランド市、フロリダ州などで導入されていた、低所得者層の格差対策として取り入れられている制度をモデルとしたものでした。実際には教育格差を広げるのではないか、などの慎重論も多く、導入されることはありませんでした。
「バウチャー」の類義語・言い換え
「バウチャー」の考え方は決して新しいものではなく、すでに生活の中に根付いているものです。呼び方は違ってもよく似た意味の言葉があります。2つ紹介します。
クーポン
・宿泊用のクーポンは当日ホテルでご提示ください。
クーポンは、もともと切り離しができる金券や割引券を指す言葉です。クーポン自体に券の意味があるのですが、クーポン券のように用いられることも多いですね。「バウチャー」は特定のサービスに対する利用証明の意味なので用途が限られますが、クーポンはお金の代わりに使える自由度の高いものを指すことが多いですね。
チケット
・搭乗チケットは紛失しないようにご注意ください。
チケットは、入場券や切符などを指す言葉です。「バウチャー」よりも用途がはっきりと限られています。チケットはサービスを受ける権利そのものを示すものですので、それ自体に価値がある点でも「バウチャー」とは異なっています。
まとめ
「バウチャー」は徐々に紙ベースの証明書から、コードやIDによるデータ管理型に変化しつつあります。キャッシュレス時代にあっては、直接お金をやり取りすることなくサービスを受ける方法として広がっていくことが考えられますね。「バウチャー」は、信用に基づいてサービスをやり取りする点でビジネスシーンにもよくマッチする考え方です。いずれは日常的な取引などにも取り入れられていくかもしれません。その基本的な考え方や扱い方など、しっかり踏まえておきたいですね。