「せざるを得ない」は日常生活やビジネスシーンにおいても比較的よく使われる表現です。ことばの組み合わせを考えあわせてみると、正確な意味を理解できていない可能性もあります。今一度、ことばの意味と使い方や同義語なども含め確認しておきましょう。
「せざるを得ない」の意味
「せざるを得ない」の意味について解説していきましょう。
「せざるを得ない」の意味とは
「せざるを得ない」は「他に選択肢がなくそのようにしないわけにはいかない」「そのようにするしか他に方法はない」という意味です。ある理由のために全く、他の選択の余地がなく本来は選択したくないが、自分としてはどうしようもない状態を表すことばに言い換えられます。例えば、新製品の発表タイミングを来週に予定していたけれど、トラブルにより延期するしか他に取る方法がない場合には「新製品の発表を、本来は来週行うべきところですが、今の状況では延期せざるを得ません。」などと言います。
「せざるを得ない」の語源
「せざるを得ない」の語源について解説します。
「せざるを得ない」は「せざる」「を」「得ない」に分解できます。「せざる」は「~をしない」の意味で「得ない」は「~をできない」の意味を表します。
つまり「せざるを得ない」で2回否定された表現となり、その結果、「そのようにしないわけにはいかない」のように強く意思を表示する場合に使われるようになりました。
「せざるを得ない」の使い方
「せざるを得ない」を日常会話とビジネスで使用する場合に分けそれぞれの使用例をいくつか挙げてみましょう。
日常会話における使用例
日常会話の中で「せざるを得ない」状況は結構ありそうです。
- 大会前のため、日曜日といえども練習せざるを得ない。
- 胃腸の調子が悪いため、当面の間食事を制限せざるを得ない。
- 母が病のため私が家事を代行せざるを得ない。
- 急な所用のため楽しみにしていた食事会に遅刻せざるを得なかった。
- 私以外の全員が酒を飲んでいたため私が運転せざるを得なかった。
ビジネスにおける使用例
ビジネス上でも思い起こしてみると「せざるを得ない」状況はいろいろとありますね。
- 大変に恐縮ですが、先約があり来週の会議は延期させていただかざるを得ません。
- ご要求頂きました見積ですが、御社のご期待に沿えずお断りせざるを得ません。
- 報告書を本日中に提出しなければならないため残業せざるを得ない。
- 開発過程でトラブルが発生したため製品発表は延期せざるを得ない。
- 顧客への対応方針が未定のため、来週の出張は中止せざるを得ない。
「せざるを得ない」を使用する上での注意点
「せざるを得ない」を分解すると「せざる」「を」「得ない」となります。
「を」を同じ発音である「お」と勘違いし「せざるお得ない」とするのは間違いです。また「を得」を「を」+「終え」と勘違いし「せざるを終えない」としたり、「を得」を「を」+「言え」と勘違いして「せざるを言えない」としたりする表現は全て誤りです。
「せざるを得ない」の同義語・言い換え
「せざるを得ない」と同じ意味のことばや言い換え可能な表現について解説していきましょう。
「仕方がない」
「仕方がない」は「他に回避する方法がなく、やむなく受け入れざるをえない状況」を意味することばです。主に日常会話に用いられる表現です。
- 彼は病のために長期間休業せざるを得ないのは仕方がないことだ。
「やむを得ない」
「やむを得ない」は「他にどうしようもない状況」を意味し「仕方がない」に置き換えもできる表現です。
- 彼は病のために長期間休業せざるを得ないのはやむを得ないことだ。
「止められない」
「止められない」は「行動や言動を行わずにはいられない状況」を意味する表現です。
- 全校生徒が見守る中で、誰も彼の発言を止められなかった。
「抑えられない」
「抑えられない」は「行動や言動を抑えられない状況」を意味し「止められない」に置き換えられます。
- 全校生徒が見守る中で、誰も彼の発言を抑えられなかった。
「余儀なくされる」
「余儀なくされる」は「他の選択肢がない状態」を意味する表現です。
- 報告書を本日中に提出しなければならないため残業を余儀なくされる。
「せざるを得ない」の英語表現
「せざるを得ない」のいくつかの英語表現について使用例を含め解説しましょう。
「can’t but do」
「can’t but do」は「~せざるを得ない」の意味で使われます。
- He could not but cry for regret. (彼は後悔のあまり叫ばずにはいられなかった。)
- She could not be absent the school for disease for a long time.(彼女は病気のために長い間、学校を休まざるを得なかった。)
- I could not be late for the dinner party because of the sudden jobs.(急な所用のため食事会に遅刻せざるを得なかった。)
「can’t help but」
「can’t help but」は「~せざるを得ない」の意味で使われます。
- Whenever I see the girl, I can’t help but smiling. (私は少女を見るといつも微笑まざるを得ない。)
- We can’t help but practicing even on Sunday because of big meet coming on.(大会前のため、日曜日といえども練習せざるを得ない。)
- She could not help but being absent the school for disease for a long time.(彼女は病気のために長い間、学校を休まざるを得なかった。)
「be compelled to」
「be compelled to」は「~するよう強要される」「~しないわけにはいかない」の意味で使われます。「be forced to」で置き換えられます。
- He was compelled to cry for regret. (彼は後悔のあまり叫ばずにはいられなかった。)
- She was compelled to be absent the school for disease for a long time.(彼女は病気のために長い間、学校を休まざるを得なかった。)
- I was compelled to be late for the dinner party because of the sudden jobs.(急な所用のため食事会に遅刻せざるを得なかった。)
その他、同じような意味のことばとして「must」「have to」などがあり「~しなければならない」の意味で使われます。
- We have to practice even on Sunday because of big meet coming on.(大会前のため、日曜日といえども練習しなければならない。)
- She had to be absent the school for disease for a long time.(彼女は病気のために長い間、学校を休まざるを得なかった。)
まとめ
「せざるを得ない」は「他に選択肢がなくそのようにしないわけにはいかない」の意味で、他の選択の余地がなく自分としてはどうしようもない状態を指します。
今回紹介した使用方法を理解した上で、使う場所やタイミングを考えながら使い分けていきましょう。