「的を得る」と「的を射る」の正しい意味と使い方|違いや類語・英語表現も解説

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    「君の意見は的を得ているね」といったら、「的を射る、だろ?」といわれて赤面した経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか?「的を得る」は誤用と言われていますが、実はそうではありません。類義語とあわせて腑に落ちるように解説します。

    目次

    「的を得る」と「的を射る」の違い

    「的を得る」と「的を射る」の違い

    「的を得る」という言葉をよく見ると、「的」を「得る」、つまり的を手に入れるという表現で、確かに妙な気がします。本当は「的を射る」で、言い間違いから「得る」が誤用されるようになったという説明を聞いて、「なるほど」と思ったものです。ところが最近になって、どうやら「的を得る」も決して間違いではないとわかってきました。その経緯を説明します。

    「的を得る」は誤用、は間違い

    「的を得る」が誤用であるという主張の大きな論拠となっていたのが、三省堂国語辞典にはっきりと誤用だと掲載されていることでした。よく似た意味の言葉に「当を得る」や「正鵠を得る」という慣用句があり、これと混同されて「的を得る」という言い方が定着したというのがその説明でした。

    ところが、2013年になって「的を得る」も辞典に採用されるようになりました。「得る」には理解する、とらえるという意味があり、「的」を本質的なものだとしてそれを理解しているという意味で誤用とはいえない」というのが採用の理由でした。江戸時代の文献に「的を得ず」という用例もあり、そうした点でも単なる誤用とは結論できないといえそうです。

    「的を射る」の方が無難

    「的を得る」は誤用であるという理解は否定されつつあります。しかし、完全に誤用ではないと言い切る証拠もありませんし、例えば広辞苑には「的を射る」は掲載されていても「的を得る」については触れられていません。ビジネスシーンや改まった場などでは、「的を射る」を用いる方が無難といえます。

    「的を得る」の意味

    「的を得る」の意味

    「的を得る」は「的」という言葉からも想像できるように、弓道から意味を発した言葉です。「的」を「得る」、つまり的をとらえるように、正しく表現されている、理解されているという意味を表す慣用句です。大きく2つの意味で用いられます。

    意味1 本質をつく

    ・彼の立てた戦略は的を得ている。
    ことの本質をついていて、的確にとらえられているという意味です。的のど真ん中を貫き通すようなするどいものの見方を表現していますね。

    意味2 理にかなっている

    ・クレームに対して的を得た対応ができた。
    理にかなった、筋道の通ったことだという意味です。この意味では「得る」の方がかえってしっくりくるかもしれません。筋道である「的」をしっかりと「得て」いる(理解している)という意味になります。

    「的を得る」の類義語・言い換え

    「的を得る」の類義語・言い換え

    「的を得る」には、その誤用疑惑の原因ともなった言葉を含めていくつか類似した意味をもつ慣用句があります。言い換え表現を含めて3つ紹介します。

    当を得る

    「当」は「道理」といった意味で、「当を得る」で理にかなっている、筋が通っている、という意味になります。
    ・当を得た発言で、会議は一気にまとまった。
    ・君の意見は当を得ていないので、誰も納得はしないだろう。
    意味的には「的を得る」とほぼ同義ですが、本質や要点をとらえているという意味よりは、道理にかなっている、筋が通っているという意味により近い表現です。この慣用句があるために「的を得る」が誤用と考えられたという説があります。ちなみに「当を射る」という表現を見かけることがありますが、これは「的を射る」に影響された表現と考えられています。

    正鵠を得る

    「正鵠」は「的の中心」を意味する言葉で、「正鵠を得る」は的の中心をとらえていることを表すので、物事の要点を的確につかんでいるという意味になります。
    ・彼女の発言はいつも正鵠を得ている。
    ・正鵠を得た提案は、誰にでも理解してもらえるものだ。
    この言葉も「正鵠を射る」という表現があるほど、「的を得る・的を射る」と似通った慣用句です。こちらは「正鵠を得る」の方が一般的に用いられており、その意味でも「的を得る」の方が本来的な表現ではという意見もあります。用法としては「的を得る」とほぼ同じように使えます。

    核心をつく

    「核心」は、物事の本質や要点、「つく」はするどく強く当てることを表しますから、「核心をつく」は、本質や要点を鋭くとらえているという意味になります。
    ・彼の報告は今回の事態の核心をついている。
    ・マーケティングは、消費者心理の核心を突くことが重要だ。
    「的を得る」に比べると、理にかなっているという意味は薄く、本質をついているという意味により近い表現です。言い換え表現をする場合も、そうした意味的な違いを踏まえて用いる必要があります。

    「的を得る」を英語でいうと?

    「的を得る」を英語でいうと?

    「的を得る」は、中国由来の言葉である「正鵠を得る」と同様に東洋的な概念のようで、ぴったり合致する英語表現は見当たりません。「要点を押さえている」や「道理に合っている」のような表現がそれにあたります。4つ紹介します。

    to be to the point

    ・A good email is important to be to the point.(よいメールは的を得ていることが重要だ)
    to the pointで、要領を踏まえていることを表しますから、to be to the pointで、要領を得ていることという意味になります。ずばり言い当てている、のようなするどさはありませんが、納得いく内容という意味で「的を得る」の意味を表しています。

    to be pertinent

    ・I find your question to be pertinent one.(あなたの質問は的を得ていると思います)
    pertinentは、「適切な」という単語ですので、to be pertinentで、適切であるという意味になります。この表現も、「的を得る」ほどに目を見張るような印象はありませんが、意味的に通じた表現です。

    have a point

    ・You have a point.(君は的を得ている)
    pointは日本語のニュアンスと同じく要点を表しますので、have a pointで「要点をとらえている」という意味になります。「要点をよく踏まえている」という表現なので、「的を得る」と同じように筋の通った考えに対する称賛の意味が含まれます。

    hit the nail on the head

    ・I think he has hit the nail on the head.(彼は的を得ていると思う)
    釘の頭を打つ、正確にくぎを打ち込む様子から、「核心をつく」「的を得る」という意味になります。この表現は、慣用句として用いられている点でも「的を得る」に近いものがあります。

    「的を得る・的を射る」の使い方と例文集

    「的を得る・的を射る」の使い方と例文集

    「的を得る」は意味的に称賛の意味を含んでいるので、相手や話題の人物の言動をもち上げる場合に用いられます。要領を得ていますね、などというよりは機知を感じさせる言葉ですので、うまく使いこなしたいものです。ここでは「的を得る」の形で例文を挙げますが、もちろんすべて「的を射る」でも使用できます。

    「的を得る・的を射る」の使い方

    ・部長の市場分析にかかわる話はいつも的を得ている。
    ・的を得ているばかりでなく、とても斬新な提案だった。
    ・君の話は的を得ていないので、企画をまとめるのは難しいね。
    要領よく、うまくまとめられた話に対したときには、敬意をこめつつ使える言葉ですね。否定形で用いるのは慎重であるべきですが、突拍子もない部下からの提案などに対して、やんわりと考え直させるときには有効かもしれません。

    「的を得る・的を射る」を使用するときの注意点

    「的を得る」が誤用だと思っている人はまだ少なからずいます。対外的な文書や上司への報告書など、やり直しがきかない場面では特に「的を射る」と表現しておく方がよいでしょう。妙なところで誤解を受けて、印象を悪くする必要はありません。

    また一般に敬意を表する「的を得る」ですが、次のように使うとどうでしょう。
    ・あなたのおっしゃることは的を得ているかもしれませんが、少々突飛な気がいたします。
    否定的なニュアンスで使われると、皮肉として受け取られかねません。相手によっては、大きく自尊心を傷つけてしまう可能性もあります。目上の方に対しては、否定的なニュアンスでの使用は慎む方がよいでしょう。

    まとめ

    「的を得る」は「的を射る」の誤用ではないことも説明しましたが、大事なことはこの言葉をうまく使いこなすことにあります。定型的な内容を話しているときに「的を得ていますね」などといえば、かえって言葉の使い方にこなれていない印象を与えます。本当に素晴らしい話や発言があったときに「実に的を得ていますね」と使うことで、相手への敬意や称賛の思いも伝わり、自分の印象もよくなることを心しておきたいですね。

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