「ましてや」とは、いうまでもなく、またはいっそう、なおさら、という意味です。文章のあとに続く内容を強調する表現です。耳にしたことのある言葉だけれど、具体的にどんな風に使うのかと聞かれると、少しわかりにくい言葉ですね。「ましてや」の意味や使い方、漢字表記、敬語表現、類語、類義語、英語表記、例文も紹介します。
「ましてや」の意味
「ましてや」とは、いうまでもなく、またはいっそう、なおさら、という意味です。 「ましてや」は、話し言葉でも書き言葉でも使える表現です。なんとなく意味がわかっているつもりでも、使い方を間違えてしまうと、言いたいことが正しく伝わらない可能性があります。正確に「ましてや」を使うために、その意味をしっかり理解しておきましょう。
「ましてや」は強調する表現
「ましてや」は、文章のあとに続く内容を強めていう表現です。否定的な文章、肯定的な文章のどちらにも使えます。「なおさら」や「言うまでもなく」という意味を含み、「Aの場合にBなのだから、ましてやCの場合は言うまでもない」という使い方をします。
2つの事例(AとC)を並べて、その結果(B)が同じになる場合に「ましてや」を用います。否定的な文章の場合は「Aの場合にできないのなら、Cの場合もできないのは当然だ」となり、肯定的な文章の場合は「Aの場合にできるのだから、Cの場合ももちろんできる」という意味になります。
「ましてや」の漢字
「ましてや」を漢字で書く場合は、「況してや」と「増してや」の2つの表記があります。どちらも正しい表記になります。「況してや」は、漢文から生じた語である「況や(いわんや)」が、現代語の「ましてや」と同じ意味をもつため、この漢字があてられるようになりました。古文ではよく見かける表現ですが、現代ではあまり馴染みのない字です。
一方で「増してや」は、増えるという漢字を使っていることから「さらに・ますます」という言葉を連想しやすい表現ですね。漢字で書く場合は、一般的には「増してや」が使われることが多いです。
「ましてや」の敬語表現
「ましてや」は敬語表現とともに使えますが、使う際には少し注意が必要な場合があります。「ましてや」を目上の人に対して使いたい場合について詳しく見ていきます。
敬語表現や目上の人との会話でも使用できる
「ましてや」自体は副詞なので、敬語表現は存在しません。ですが、一緒に使う言葉に丁寧語の「です」「ます」などを付けて、敬語の文章で使うことは可能です。話し言葉、書き言葉どちらにも使用可能なので、ぜひ適切に使って表現の幅を広げましょう。
敬語表現とともに使用するときの注意点
敬語表現とともに「ましてや」を使用するときは、控えめな言い方にするように注意しましょう。「ましてや」の「や」は、間投助詞といって文章に勢いを加えたり、気持ちを込めたりする場合に使う言葉です。目上の人に対しては、自分の気持ちや意見を押し付けることになり、失礼にあたってしまいます。その場合は、「ましてや」を「まして」と言い換えると少し控えめな表現にできます。
「ましてや」の類義語・言い換え
「ましてや」の意味を正しく理解したうえで、状況に応じて別の言葉で表現できれば、語彙が増えてより文章に深みを持たせられます。「ましてや」と似た意味を持つ言葉には、どのようなものがあるのかを詳しく解説します。
「ましてや」の類義語にはいくつか種類がある
「ましてや」にはいくつかの類義語があり、それぞれの言葉が持つ意味に応じて言い換えができます。ただし、その場にふさわしくない言葉を選んでしまうと、恥ずかしい思いをしてしまいかねません。それぞれの類義語とその意味をきちんと整理しておきましょう。
「ますます」「なおさら」
「ますます」「なおさら」は、物事の程度が前より進むさまを表します。つまり、どちらも文章の意味を強調したいときに使えます。文章のあとに続く内容を印象に残したい場合に使うとよいでしょう。
以下に例文を紹介します。
- ただでさえ高所恐怖症なのに、ましてやバンジージャンプなんてできるわけがない。
- 私は高所恐怖症なので、バンジージャンプをするなんてますます怖い。
- 高所恐怖症の私にとっては、バンジージャンプはなおさら恐怖だ。
「当然」「言うまでもない」
「当然」「言うまでもない」は、誰にでもわかりきったことを述べるときに使う言葉です。わざわざ言う必要のないほど結果が目に見えることについて触れる場合に使うとよいでしょう。
以下に例文を紹介します。
- 高所恐怖症の私が、バンジージャンプができないのは当然だ。
- 高所恐怖症の私にとって、バンジージャンプが恐怖なのは言うまでもない。
「ましてや」と「ましては」は別の言葉なので注意
「ましてや」と混同しやすい言葉に、「ましては」があります。「〇〇につきましては」や「〇〇におかれましては」などの表現は、ビジネスの会話やメールの文章でよく使われますが、「ましてや」のように強調する意味は持ち合わせていません。「ましてや」とよく似ていますが、まったく違う言葉なので注意しましょう。
「ましてや」を英語でいうと?
「ましてや」は英語でも表現できます。基本的には日本語と同じように、言いたい事柄を強調する使い方をします。文章の内容によっていくつか表現方法があるので、詳しく解説していきます。
much less/much moreが日本語に最も近い表現
英語の否定的な内容の文章ならば「much less」肯定的な内容の文章でならば「much more」を使い、を使います。この2つはどちらも「ましてや」と和訳されるので、日本語に最も近い表現です。
以下に、否定文・肯定文それぞれの例文を紹介します。
- He can’t speak English, much less French.
(彼は英語が話せない。ましてやフランス語は言うまでもない。) - He won’t listen to his parents, much less his teachers.
(彼は両親の言うことを聞かない。ましてや先生の言うことなんてもってのほかだ。)
強調する表現には色々な種類がある
「ましてや」を意味する英語には、他にも「let alone」や「not to mention」などがあります。どちらも、「もちろん」「言うまでもなく」と訳せて、文章の内容を強調する役割を持ちます。
以下にそれぞれの例文を紹介します。
- She doesn’t want to see anyone, let alone her friends.
(彼女は、友人たちはもちろん、誰とも会いたがらない。) - I can’t cook a cookie, not to mention a cake.
(クッキーすら作れないのに、ケーキなどは言うまでもない。)
「ましてや」の使い方と例文集
ここまで、「ましてや」の意味や類語などについて解説しました。それを踏まえて、より実践的に「ましてや」を使いこなせるように、具体的な使い方や使うときの注意点、例文も紹介します。
「ましてや」の使い方
「ましてや」は否定的な内容の文章と、肯定的な内容の文章のどちらにも使えます。また、話し言葉と書き言葉の両方に使える便利な言葉です。先述した通り、言い換えのできる類語がたくさんありますので、場面や言いたいことに応じて使い分けられれば、ビジネスシーンでも普段の会話でも役立ちます。
「ましてや」を使用するときの注意点
「ましてや」は、文章の中で2つの例を挙げ、前述した内容と後述した内容を比較しながら、強調したり印象づけたりする使い方をします。しかし、前後が関連性の薄い事柄に使うのは誤りです。
例えば、「大人になってもまだピーマンが食べられないなんて、ましてやあなたは医者でしょう」という文章では、「ピーマンが食べられない」ことと「医者である」ことに直接の関連性がないため、「ましてや」を使うのには適していません。
「ましてや」の例文
「ましてや」を使った例文を紹介します。
- 大人にも有害だと言われているなら、ましてや子どもには言うまでもない。
- 予算を切り詰めて店舗を運営しているのに、ましてや新店舗を出すなんてもってのほかだ。
- 先生でさえご存じないことを、ましてや学生の私が知るはずもありません。
- 7合目からもなかなかの眺めだが、ましてや山頂からの景色は言葉にできない美しさだ。
- 先生が知らないのだから、ましてや私が知っているはずがありません。
- 高所恐怖症で高いところが苦手なのに、ましてやバンジージャンプなんてできるはずがない。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、「況してや(ましてや)」の意味や使い方、漢字表記、敬語表現、類語、類義語、英語表記、例文について解説しました。
最後に「況してや(ましてや)」のまとめです。
- 「ましてや」とは、いうまでもなく、またはいっそう、なおさら、という意味です。
- 「ましてや」は、文章のあとに続く内容を強めていう表現です。
- 「ましてや」の漢字表記は、「況してや」と「増してや」があります。一般的に使われるのは、「況してや」ですがどちらも正しい表記です。
- 「ましてや」自体は副詞なので、敬語表現は存在しません。
- 「ましてや」を敬語表現とともに使用するときの注意点は、控えめな言い方にすることです。「ましてや」の「や」は、間投助詞といって文章に勢いを加えたり、気持ちを込めたりする場合に使う言葉です。目上の人に対しては、自分の意見を押し付けることになり、失礼にあたってしまうので気をつけましょう。
- 「ましてや」の類義語にはいくつか種類があります。「ますます」「なおさら」「当然」「言うまでもない」です。それぞれの言葉が持つ意味に応じて、言い換えができます。「ましてや」と「ましては」は、よく似ていますが、まったく違う言葉なので注意しましょう。
- 「ましてや」を英語表記すると、「much less/much more」です。この2つが日本語にも最も近い表現です。ほかにも、「let alone」や「not to mention」などがあります。