「貧すれば鈍す」の意味や使い方とは?類語・対義語・英語訳も例文解説

貧すれば鈍す
目次

「貧すれば鈍す」の読み方は?

「貧すれば鈍す」の読み方は?

「貧すれば鈍す」は「ひんすればどんす」と読みます。漢字「貧」は音読みで「ヒン」、訓読みでは「まず(しい)」です。「まずしい、みすぼらしい」または「足りない」の意味で使います。漢字「鈍」は音読みで「ドン」または「トン」、訓読みでは「にぶ(い)」や「にぶ(る)」または「なま(る)」です。「(刃物などの切れ味が)にぶい」や「(頭の回転などが)のろい」といった意味で使います。

「貧すれば鈍す」の意味とは

「貧すれば鈍す」の意味とは

「貧すれば鈍す」の意味とニュアンス、「貧」は何が貧しいのか、どんな場面に適したことわざなのかを解説します。

「貧しさが精神にまで影響する」の意味

「たとえ賢い人でも貧しい暮らしが続けば、その苦しさから精神や頭のはたらきまでが鈍ってしまうものだ」が「貧すれば鈍す」の意味です。

「貧」は金銭的な困窮を指す

「貧すれば」の「貧」は何が貧しく足りないかといえば、「お金」です。「貧しい」は知識や発想、精神に対しても使う言葉ですが、「貧すれば鈍す」の「貧しい」は金銭的な貧しさを指します。

もともと優れていた人に対して使うことわざ

もともとは才知に長け、能力がある人なのに生活が貧しくなったせいで精神的にも鈍ってしまった場合のみ、「貧すれば鈍す」が当てはまります。もともと能力がない人が貧しさのせいでより鈍ってしまったとしても、「貧すれば鈍す」とはいいません。

「貧すれば鈍す」の由来・語源

「貧すれば鈍す」の由来・語源

「貧すれば鈍す」の「貧する」の語源は「貧乏」です。「貧乏になると思考能力まで影響して鈍くなるものだ」の教訓が、「貧すれば鈍す」の由来です。

「貧すれば鈍す」の使い方と例文

「貧すれば鈍す」の使い方と例文

「貧すれば鈍す」のよく使うかたちや別の言い回し、例文を紹介します。

「貧すれば鈍する」の形が多い

「貧すれば鈍す」は「貧すれば鈍する」の形でよく使われます。ほかにも「貧すりゃ鈍す」などの言い回しがあります。

「窮すれば鈍す」ともいう

「貧すれば鈍す」は「窮すれば鈍す(きゅうすればどんす)」ともいいます。漢字「窮」は音読みで「キュウ」、訓読みで「きわ(める)」または「きわ(まる)」です。「きわまる」のほか、「行き詰って身動きできない」または「苦しむ」の意味があります。「窮すれば鈍す」では、後者の「行き詰って身動きできない」意味で「窮」を使っています。意味はほぼ同じですが「貧」が金銭的な苦境を指すのに対し、「窮」はもう少し広く「追い詰められた状況」のニュアンスを含む言葉です。

例文

「貧すれば鈍す」を使った例文を挙げます。

・貧すりゃ鈍すというが、あのアーティストは人気が落ちてからプロモーションまでもが迷走しはじめた。
・会社が行き詰ったときほど、冷静に判断しなくてはいけない。貧すれば鈍するというからね。
・貧すれば鈍するじゃないが、彼も昔は立派な実業家だったのに、事業が傾いてからはかなり怪しい商売に手を出しているらしい。

「貧すれば鈍す」の類義語・似た意味のことわざ

「貧すれば鈍す」の類義語・似た意味のことわざ

「貧すれば鈍す」と似た意味のことわざを紹介します。いずれも「人は貧しかったり、本当に困ったりしたときには、考えや行動が愚かになってしまう」のような意味で使うことわざです。

「窮すれば濫す」

「窮すれば濫す」は「きゅうすればらんす」と読み、意味は「切羽詰まると、人は見境がなくなって悪事を働くものであるから気をつけなくてはならない」です。「窮すれば濫る(みだる)」ともいいます。

出典は中国の思想書『論語』。「小人(しょうじん)窮すれば斯(ここ)に濫す」 という一文がもとになっています。これは孔子が弟子たちと旅の途中、軍隊に囲まれて食料が尽きてしまったときのエピソードです。

弟子の1人は孔子に対して「立派な君子なのにこんな困窮することがあるんですか」と詰め寄りました。すると孔子は「君子は困窮して当然のことで、小人ほど困窮によっておこないが乱れるものだ」と答えたそうです。「小人」とは「徳がない、器量が小さい人」を指します。「窮すれば濫す」の言い回しだと、「貧すれば鈍す」とほぼ同じ意味です。「小人窮すれば濫す」の言い回しだと、「もともとは賢い人」の意味で使う「貧すれば鈍す」とニュアンスが異なります。

「馬痩せて毛長し」

「馬痩せて毛長し」は「うまやせてけながし」と読みます。「栄養状態が悪く、痩せてしまって毛ばかり長くなってしまった馬」に「貧しいと生きているだけで精一杯になり、知恵が回らなくなってしまう状態」をたとえたことわざです。

「馬痩せて毛長し」のもとになった四字熟語「馬痩毛長(ばそうもうちょう)」の出典は、中国南宋時代の灯史『五灯会元』。「人貧しければ智短く、馬痩せて毛長し」の一文があります。「馬疲毛長(ばひもうちょう)」も「貧すれば鈍す」と似た意味の四字熟語です。

「仇の金でもあれば使う」

「仇の金でもあれば使う」は「かたきのかねでもあればつかう」と読み、意味は「人は困窮すると使うべきではないお金も使ってしまうものだ」です。「仇(かたき)」は「憎むべき相手や敵」の意味で、そんな相手のお金ですら困ったときには使ってしまう状況を指しています。「貧しいときには知恵が回らなくなる」のニュアンスが「貧すれば鈍す」と共通しています。

「人貧しければ智短し」

「人貧しければ智短し」は「ひとまずしければちみじかし」と読みます。意味は「貧すれば鈍す」とほぼ同じで「人は貧しいと知恵が足りなくなってしまう」です。「短い」は幅や丈を表すだけでなく、「思慮が浅く、劣っている」の意味もあります。「人貧しければ智短し」の「短し」は、後者の「思慮が浅い」が当てはまります。

出典は、「馬痩せて毛長し」と同じ中国南宋時代の灯史『五灯会元』です。「人貧しければ智短く、馬痩せて毛長し」の一文のうち、前半が「人貧しければ智短し」のもとになっています。また、鎌倉時代の軍記『曽我物語』には「馬やせて毛長く、いばゆるに力なし。人貧にして智みじかく、言葉いやし」と記されています。

「貧には知恵の鏡も曇る」

「貧には知恵の鏡も曇る」は「ひんにはちえのかがみもくもる」と読み、「貧しいと頭が働かなくなり、判断力が落ちる」の意味です。「知恵の鏡」は「知恵が秀でて優れていること」を鏡にたとえた表現。この鏡が「曇る」ことで、「頭が働かない」意味です。

室町時代の大江山酒呑童子を描いた御伽草子には「どうじ、うんのきはめなれば、ちゑのかかみもくもりけるにや」と「知恵の鏡」の記述があります。「貧には」をつけず「知恵の鏡も曇る」だけでも使いますが、この場合は金銭的な困窮だけでなく運のなさも含み、その点が「貧すれば鈍す」と異なります。

「貧すれば鈍す」の対義語・反対の意味のことわざ

「貧すれば鈍す」の対義語・反対の意味のことわざ

「貧すれば鈍す」と反対の意味のことわざは「貧にして楽しむ」です。「貧にして楽しむ」は「ひんにしてたのしむ」と読み、「たとえ貧しくても楽しく過ごす」または「貧しくても心穏やかに道徳をおさめ、それを実行することを楽しむ」意味です。出典は『論語』。「貧にして道を楽しむ」ともいいます。「貧しいのに精神的にネガティブな状態ではない」点で、「貧すれば鈍す」とは反対です。

「貧すれば鈍す」の英語表現

「貧すれば鈍す」の英語表現

「貧すれば鈍す」の英語表現を紹介します。

「Poverty demoralises.」

「poverty」は「貧困」、「demoralise」は「不道徳にさせる」や「堕落させる」意味の英単語。「Poverty demoralises.」で「貧困は人を不道徳にさせる。」の意味です。

「poverty dulls the wit.」

「dull」は「鈍くする」または「弱める」、「wit」は「賢さ」を意味する英単語です。「poverty dulls the wit」で「貧しさは賢さを鈍らせる」を意味します。「wit」の「賢さ」は知識など学力の賢さではなく、機転が利いたり頭の回転が早かったりする賢さを指します。やや堅い言い回しですが、「貧する」状況の厳しさや深刻さを伝えられる英語表現です。

まとめ

「貧すれば鈍す」は「貧しいと、人は頭の回転や道徳心がはたらかなくなるものだ」の意味で使うことわざです。貧しくなる前は優秀であった人に対して使い、ネガティブな意味合いがあります。よく使われる言い回しは「貧すれば鈍する」や「貧すりゃ鈍する」、「窮すれば鈍する」などです。ぜひ日常会話のボキャブラリーに「貧すれば鈍す」を加えてください。

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