「旨」は「参加の旨お伝えください」「その旨よろしくお願いいたします」などの表現でビジネス場面でも頻繁に使われる言葉です。ここでは「旨」のビジネス場面での使い方を、意味や「宗」との違い、慣用表現「旨とする」、英語表現も含めて解説します。
「旨」の読み方と意味
「旨」という漢字は、「口」と匙(さじ)を表す「ヒ」とが組み合わさり、口に匙で食べ物を流し込むさまを表現しています。そこから、「美味しい」「うまい」という意味が発生し、明治時代以降に「中心」「主眼」の意味が生まれました。以下に「旨」の読み方と意味を紹介します。
読み方1訓読み「むね」
「旨」には訓読みで「むね」という読み方があります。「主な内容」と「中心とすること」という2つの意味があります。
意味1「主な内容」「意向」
「旨(むね)」の一つ目の意味は、主な内容です。「相談したい旨を告げる」「参加の旨を伝える」のように、思うことや述べたことの主な内容を表します。
意味2「中心とすること」
「旨(むね)」の二つ目の意味は、中心とすることです。「質素を旨とする」のように、第一の目的とすることを挙げる場合に使います。
読み方2訓読み「うまい」意味「美味しい」
「旨」には訓読みで「うま(い)」という読み方があります。「美味しい」「味がよい」という意味です。
参照:Weblio辞書「旨い」
読み方3音読み「シ」
「旨」には音読みで「シ」という読み方があります。「むね」「考えの内容」を意味する熟語に「旨意(シイ)」「趣旨(シュシ)」「要旨(ヨウシ)」などがあります。「うまい」「美味しい」を意味する熟語に「旨酒(シシュ)」「旨肴(シコウ)」などがあります。
「旨」と「宗」の違い
「旨」は「むね」と読む際には「宗」の字を使う場合もあります。「むね」と読む場合、「旨」と「宗」に意味の違いはありません。「宗」という漢字には、「おおもと」「根本の考え」という意味があり、そこから派生して「中心となるもの」の意味を持つようになりました。「質素を旨とする」は「質素を宗とする」と書いても間違いではありません。
「旨」のビジネス場面での使い方と例文集
「旨」はビジネス文書やビジネスメールなどでも頻繁に用いられる表現です。具体的にはどのように使われるのでしょうか。例文を踏まえながら、使い方と使用する際の注意点を確認していきましょう。
「旨」の使い方
「旨」は「~の旨」「その旨」の形でよく使われます。前の話題をまとめて指す場合に使われ、同じ内容を反復することを防ぎます。「旨」は丁寧でかしこまった表現であり、上司などの目上の人にも使えます。ビジネス場面での使用例も見ていきましょう。
「旨」を使用するときの注意点
「~の旨」「その旨」の表現を使うことで、長い説明を要する内容を省略できます。しかし、指し示す内容がはっきりしていないと、相手に正しく伝わりません。内容が多岐に渡り複雑な場合は、「~の旨」「その旨」で指す内容がどこなのか、わかりやすくまとめる必要があります。
ビジネス文書やビジネスメールで「~の旨」「その旨」を使う際は、内容が明確かどうか、相手に送る前に読み返すことも重要です。
「旨」の例文
ビジネス場面では「~の旨」「その旨」の形がよく使われます。頻繁に出てくる言い回しや例文を以下に紹介します。
よく使われる言い回しに「~の旨」があります。「~」には名詞が入ります。「参加の旨」「応募の旨」「出席の旨」「欠席の旨」「退職したい旨」「振込希望の旨」「契約内容の旨」などさまざまな表現があります。「~の旨」の「~」には簡潔な語句を使うようにしましょう。
また、「その旨」「この旨」もよく使われます。「その旨」「この旨」の後に「よろしくお願いいたします」「ご了承願います」「承知いたしました」「お伝えください」などさまざまな表現を伴います。「その旨」は、繰り返し説明せずとも前に述べた内容を提示できる便利な表現です。ビジネス場面では、以下のようにさまざまな場面で使えます。
- 確認にお時間をいただきます。その旨よろしくお願いいたします。
- 週末は店舗が休みのため連絡ができません。その旨ご了承願います。
- 事業の詳細をご説明いただきありがとうございます。その旨承知いたしました。
- この度は弊社のサービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。万が一サービスにご不満などあれば、その旨お伝えください。
- 明日は出席されるということですね。では、その旨を担当に伝えておきます。
- では、明日は会合ということで。この旨をお伝え願います。
「旨」の慣用表現「旨とする」
「旨」の慣用表現に「旨とする」があります。「~を旨とする」の形で「~を重んじる」「~を第一とする」という意味です。以下のように使います。
- 現場での対応は迅速丁寧を旨とする。
- 報連相を旨として仕事に励む。
「旨」の類義語・言い換え
「旨」には、さまざまな言い換え表現があります。類義語としていくつかを紹介します。
類義語1「~の旨」は「~とのこと」「~という考え」「~の意向」
「~の旨」は思うことや述べたことの内容をまとめる表現です。「~とのこと」「~という考え」「~の意向」と言い換えられます。
- 参加の旨を伝えておいてほしい。→参加ということを伝えておいてほしい。
「~の旨」と表現することで端的に伝わりますが堅苦しい印象も与えます。使うのに抵抗がある場合などは上記の類義語を使いましょう。
類義語2「その旨」「この旨」は「そのように」「今の話の内容を」「このことを」
「その旨」や「この旨」は前の話の内容を受けて用いられる表現です。「そのように」「今の話の内容を」「このことを」などと言い換えられます。
- その旨申し伝えます。→そのように申し伝えます。
「その旨」や「この旨」は少し堅苦しい表現ですので、相手にやわらかく伝えたい場合は、上記の類義語を使うのがよいでしょう。
「旨」の英語表現
「旨」の英語表現は、文脈によって使い分ける必要があります。伝えたい内容に合わせて、単語や熟語を選択します。以下にいくつか例文を紹介します。
「主な内容」「趣旨」は「to that effect」など
「旨」が「主な内容」「趣旨」の意味を持つ際は、「to that effect」などの表現を用います。
- We have received to the effect that the negotiations have come to a standstill.(交渉が行き詰った旨の連絡が入った。)
- I shall tell him to that effect.(その旨を彼へ伝えましょう。)
- I told her that I wanted to talk to her.(彼女に相談したい旨を告げた。)
「中心とすること」は「make it a principle~」(~を旨とする)
「旨」が「中心とすること」の意味を持つ際は「make it a principle~」を用います。「make it a principle~」は「~を旨とする」という意味になります。
- You should make it your principle to live a simple life.(質素を旨とすべし。)
- In writing you should aim at brevity.(文章を書くときは簡潔を旨とせよ。)
まとめ
「旨」は「~の旨」「その旨」「この旨」の形で、ビジネス場面においても頻繁に使われる表現です。思うことや述べたことの「主な内容」や「中心となること」を指します。よく使われる言い回しに「~の旨お伝えください」「その旨よろしくお願いいたします」などがあります。「旨」には、前に述べた内容をまとめる役割があるため、「旨」を使うことで、長い説明を要する事柄を簡潔に表現できます。「旨」を使った表現は少し堅苦しい印象も与えるので、相手にやわらかく伝えたい場合は類義語を使うのがよいでしょう。ビジネス場面でうまく活用して、相手とのコミュニケーションを円滑にしてください。