四文字熟語「七転八倒」の意味や由来を紹介します。「七転八倒」は耳にすることが多い言葉ですが、正しく使えていますか?本記事では読み方から意味、使い方の例文を徹底解説。英訳と間違いやすい四文字熟語も確認してくださいね。
「七転八倒」の読み方
「七転八倒」の読み方を説明します。「七転八倒」には複数の読み方と漢字表記があります。すべてチェックしましょう。
一般的な読み方は「しちてんばっとう」
「七転八倒」のもっとも一般的な読み方は「しちてんばっとう」です。
「七転八倒」のほかの読み方
「七転八倒」は、「しちてんばっとう」のほかに「しってんばっとう」や「しちてんはっとう」とも読みます。違いは「七」と「八」の読み方です。どれも意味は同じで、正しい読み方です。
「転」は「顛」の表記を使う場合もあり
「七転八倒」の「転」は「顛(てん)」を使い、「七顛八倒」と表記される場合があります。「顛」は「ものの先端」や「てっぺん、頂点」などの意味です。「顛」は「顚」の異字体です。異字体とは表記が違っても意味が同じ文字のこと。また、「顛」と「顚」はどちらも「転」で代用できます。そのため、「七転八倒」は「七顛八倒」または「七顚八倒」でも正しい表記です。
「七転八倒」の意味
「七転八倒」の意味を説明します。「七転八倒」には現在よく使われている意味のほか、もともと使われていた意味もあります。2つの意味を確認してください。
もとの意味は「世の中が乱れる」
本来「七転八倒」は、「世の中が大いに乱れるたとえ」の意味です。
「苦しみ、もがく」の意味で使われることが多い
現在では、「苦しみや痛みで悶絶する様子」や「大きな苦痛に何度ものたうち回る様子」などを表す意味で「七転八倒」を使うのが一般的です。
「七転八倒」の語源・由来
もともと「七転八倒」は中国に由来があります。その由来と出典を紹介します。
中国の故事が語源の言葉
中国で12世紀に活躍した儒学者・朱子(しゅし)の言葉をまとめた書物『朱子語類(しゅしごるい)』が、「七転八倒」の出典です。『朱子語類』のなかに「商(しょう)の季すえに当りて、七転八倒、上下崩頽(ほうたい)す」と記されています。「商」は「殷(いん)」ともいわれる、古代中国の王朝。この王朝末期に大いに世が乱れたさまを表した一文です。この故事がもとになって「七転八倒」といわれるようになりました。
「七」と「八」は数の多さを表す言葉
漢数字「七」と「八」は本来の数を表すのとは別に、「数多いこと」の意味でも使われます。「七」と「八」を使った「七転八倒」は、「何度も」や「非常に」の意味が強い言葉です。
「七転八倒」の正しい使い方と例文
例文で「七転八倒」の正しい使い方を解説します。「七転八倒」には大きく2つの意味があるため、意味ごとの例文を挙げます。どちらの意味で使う場合も、ネガティブな状況を表しています。
「乱れ、混乱する」の意味で使う場合
本来の意味「大いに乱れる」や「大混乱」で「七転八倒」を使う場合の例文です。
- 大臣の汚職発覚で国会の論戦は与野党入り乱れ、七転八倒の様相を呈した。
- はじめての海外1人旅は言葉の壁もあって七転八倒の連続だったが、今となってはいい思い出だ
- 午後からの会議は、まさに七転八倒。それもこれも上司が結論をまとめる寸前で話し合いをご破算にするような意見を出したからだ。
「苦しみ、もがく」の意味で使う場合
一般的な意味「苦しみ、もがく」で「七転八倒」を使う場合の例文です。
- 締め切り間際までまったくアイデアが浮かばずに追い詰められ、七転八倒の苦しみを味わった。
- 彼はうっかり賞味期限が切れている牛乳を飲んでしまい、腹痛で七転八倒するはめになった。
- 受験勉強に七転八倒しながら、彼女はもっと勉強しておくべきだったと後悔している。
「七転八倒」する原因は、精神的な苦しみと肉体的な苦しみのどちらも当てはまります。
「七転八倒」の類語・似た意味の四字熟語
「七転八倒」の類語、似た意味の四字熟語を例文とともに紹介します。どれも「乱れる」や「大いに苦しむ」などの意味が共通している言葉です。
「四苦八苦」
「四苦八苦」は「しくはっく」と読み「とても苦労すること」や「思うようにいかない」、または「あらゆる苦しみ」を表す四字熟語です。仏教用語に由来し、「四苦」は「生・老・病・死」の4つを指しています。
- 不得手な英語でレポートをまとめなくてはならず、準備に四苦八苦している。
- 四苦八苦の末に予定どおりプロジェクトの完成までたどり着いた。
- 新天地で四苦八苦する日々だが、大きな充実感を得られている。
「七難八苦」
「七難八苦」は「しちなんはっく」と読み、「あらゆる困難や災厄」や「苦難や災難に出会うこと」を意味する四字熟語です。由来は仏教用語で「七難」は「7つの苦しみ」、「八苦」は「8つの災い」を表します。「七難」は火難や水難などをさすといわれますが、諸説あります。「八苦」は「生・老・病・死」の4つに愛する者との別れなどを加えたものです。
- ようやく大ケガから回復したと思ったら、今度は会社が倒産。私の人生は七難八苦そのものだ。
- 七難八苦のあの頃があったからこそ、人には優しくしようと思えるようになった。
- 周囲の反対を押し切り、七難八苦の日々を覚悟してでも自分の会社を作りたい。
「艱難辛苦」
「艱難辛苦」は「かんなんしんく」と読み、「非常に辛い困難にあって悩み苦しむこと」を意味する四字熟語です。「艱難」と「辛苦」はそれぞれ「苦しむ」や「つらい」を意味する言葉で、その2つを重ねた「艱難辛苦」は「とてもつらく苦しい思いをする様子」を表します。
- 艱難辛苦を乗り越え続けた末、彼女は大きな栄光をつかみ取った。
- 退職するまで艱難辛苦の連続だった。これからは自分の時間を楽しみ、穏やかに暮らしたい。
- 戦時中は、国民のだれもが艱難辛苦に満ちた生活を強いられていた。
「千辛万苦」
「千辛万苦」は「せんしんばんく」と読み、「あらゆる困難や苦しみ」または「そうした困難に出会って苦しむこと」を表す四字熟語です。「千」と「万」は「とても多いこと」を意味し、「七転八倒」と同じく重ねて使うことで苦しみの重さや多さを表現しています。
- 会社のスタートアップからここまで大きくするのは、創業者にしかわからない千辛万苦の道のりだっただろう。
- 彼の柔和な笑顔からは、その裏にある千辛万苦の人生を想像することが難しい。
- 千辛万苦を重ね、ついに皆が納得する試作品を完成させた。
間違わないで!「七転八倒」と「七転八起」の違い
「七転八倒」と間違いやすい四字熟語が「七転八起(しちてんはっき)」です。「七転八起」はことわざで「七転び八起き」といい、「どんなに失敗しても最後までやり抜く」や「粘り強く困難に立ち向かう様子」という意味があります。「七転八倒」はネガティブな意味合いが強いのに対し、「七転八起」はポジティブな意味合いが強め。座右の銘などに使われるのは「七転八起」です。1文字違いの四字熟語なので、誤用に注意してください。
「七転八倒」の対義語
「ありとあらゆる災い」や「非常に悩み苦しむ」などの意味がある「七転八倒」の対義語は、「順風満帆」です。「順風満帆」は「じゅんぷうまんぱん」と読み、「すべてがうまくいっているたとえ」や「問題が何も起こらず順調」を意味する四字熟語です。例文を挙げます。
- 入社後から頭角を現した彼女はメキメキと出世し、順風満帆にキャリアを積んでいる。
- 転職も結婚も実現し、公私ともに順風満帆だ。
- 順風満帆なときこそ、足元をすくわれないよう注意しなくては。
「七転八倒」の英語表現
英語に「七転八倒」の直訳はありませんが、「苦しみのあまり悶絶する」という意味の表現があります。「writhe in agony」は、「苦しみにもがく」意味。「writhe」は「もがく」、「agony」は「苦しみ」と訳します。また「転げまわる」という意味の「toss about」は、「toss about in pain(痛みで転げ回った)」のような使い方ができます。
まとめ
四字熟語「七転八倒」はもともと「世の中が混乱している様子」を表す言葉でしたが、いまでは「非常に大きな困難、災厄」や「とても悩み苦しむ」などの意味で使われています。ネガティブな意味合いが強いので、座右の銘には向きません。「何度でも諦めずに挑戦する」といったポジティブな意味合いの「七転八起」と混同しないよう注意。「七転八倒」の状況に陥るのも避けたいですね。