社会人になると結婚式や授賞式などで「執り行う」という言葉を耳にする機会が増えます。この「執り行う」は「行う」ことを丁寧に表現した言葉ですが、どのような場面で用いるのが適切なのでしょうか。ここでは使い方や敬語表現を含め詳しく解説します。
「執り行う」の読み方と意味とは?
「執り行う」という言葉は改まった場面で耳にする言葉が多く、日常会話ではなかなか用いられない言葉です。そのため、読み方や意味に戸惑う方もいるのではないでしょうか。ここでは「執り行う」の読み方と意味について説明します。
「執り行う」の読み方
「執り行う」は「とりおこなう」と読みます。
「執り」は「執りす」という言葉の応用です。熟語では「執行」という言葉もありますが、こちらは「しっこう」と読みますので、一緒に覚えておくと便利でしょう。
「執り行う」の意味
「執り行う」の意味は、「式典や儀式を実施すること」という意味です。
「執り」には「心を傾けてする」という意味が含まれますので、単純に「行う」と言うよりもより丁寧な言い回しとなるのが「執り行う」という言葉です。意味自体には「行う」と大きな差はありません。
「執り行う」の使い方と例文
「行う」をより丁寧にした「執り行う」を用いるシーンについて考えていきましょう。基本的には日常会話で使うことはない言葉ですが、どのような場面で用いるのが適切なのでしょうか。
かしこまった場で利用する丁寧な表現
「執り行う」は友人同士でのランチや身内だけの会など比較的カジュアルな場では使われず、主に表彰式や結婚式などの冠婚葬祭に当てはまる場で使われることが多い表現です。
冠婚葬祭などを実施する場合は、単に「行う」や「始める」という言葉使いでも間違いではありませんが、「執り行う」を使うことでより格式高く立派な印象を与えます。
主に用いられる場面と例文
利用する場面として適切な「冠婚葬祭」にあたるシーンとはどのような場面かを詳しく説明します。また、そのシーンに応じた例文もここでいくつか紹介します。
まず「冠」にあたる行事は、入学式や卒業式などの学校行事です。また、ビジネスシーンでは表彰式なども該当します。「婚」は結婚式のことですので、結納の儀式や結婚式、披露宴などが当てはまります。「葬」は「葬式」です。「祭」は「祭りごと」の意味ですが、これは法事や法要など祖先をまつるものやお正月などが該当します。
また、冠婚葬祭には当てはまりませんが、ビジネスシーンでは株主総会や経営会議など重役が揃う会議でも使われる場合があります。
では、それぞれのシーンに合わせた例文を見ていきましょう。
- 〇〇中学校では、4月1日に入学式を執り行います。
- これから告別式を執り行います。
- 先日、結婚式を執り行いました。
- 祖父の法要は身内のみで執り行う予定です。
- これより株主総会を執り行わせていただきます。
「執り行う」の敬語表現
「執り行う」はそれ自体が「行う」を丁寧にした表現ではありますが、「執り行う」自体は敬語表現の分類にはあたりません。「執り行う」を敬語表現で表す場合の言い回しについて紹介します。
丁寧語
丁寧語は「執り行う」に丁寧語表現の「ます」をつけた形の「執り行います」です。
「執り行う」という言葉それ自体に丁寧な意味合いが含まれますので、「ます」をつけるだけで非常に丁寧な言い回しになるのがこの言葉の特徴です。よって、尊敬語や謙譲語にせず単純に「執り行います」と使うのが最も一般的です。
尊敬語
尊敬語の表現は、「れる・られる」を用いて「執り行われました」とします。
ただし、「執り行われる」は受け身表現としても意味がある言葉になるため、尊敬語として使う場合は誤解を生まないよう注意が必要です。
「られる」を使うことにより紛らわしい表現になってしまう心配がある場合は、「行う」の尊敬語である「なさる」に言い換えることも可能です。「なさる」を用いた表現は「神主が厄祓いをなさるようです」となります。
謙譲語
謙譲語の表現は「させていただく」を用いて、「執り行わせていただく」です。
ここで注意が必要なのは、「執り行わさせていただく」のように「させていただく」をそのまま繋げず、「さ」を省略し「執り行わせていただく」という表現が正しい点です。謙譲語は自分が主催する場合などによく使われる表現ですので、間違いのないよう覚えておきましょう。
「執り行う」とあわせて用いられる表現
「執り行う」は改まった行事に用いられる言葉ですので、添えられる表現も日常会話ではあまり使われない言葉が多いです。ここでは、「執り行う」とあわせて用いられやすい表現を紹介します。
「運び」
結婚式などの招待状でよく目にするのが「運び」を添えた「執り行う運びとなりました」という表現です。
この「運び」とは「物事が進行し、ある段階に至ること」という意味の言葉です。この「運ぶ」を添えることで、「執り行うことになりました」よりも柔らかな印象を与える表現に変化します。
「しめやかに」
「しめやかに」も「執り行う」に添えられる言葉として代表的なものです。
「しめやかに」とは「物静かに、もの悲しげに、ひっそりと」という意味の言葉です。基本的には結婚式や祝賀会など晴れやかな場には適さない表現とされており、主に葬儀や法要の場で用いられます。
「滞りなく」
「滞りなく」は対象の式典が終了した後に用いられる言葉です。「滞りなく執り行われました」と使います。
「滞りなく」とは「問題なくスムーズに、予定通りに」という意味ですので、「滞りなく執り行われた」は無事にその式典が開催し、問題なく終了したことを報告する際に用いられます。
「執り行う」の類義語・言い換え表現
「執り行う」の類義語は以下です。いずれも「執り行う」に含まれる「心を傾けて行う」のような丁寧な表現ではありませんが、「行う」ことを表す場合に言い換えられます。
- 実行する
- 開催する
- 執行する
- 営む
「執り行う」の対義語・反対語
「執り行う」の反対の意味で用いられる表現で代表的なのは「取り止める」です。
「取り止める」は「予定していたことを中止する」という意味の言葉です。「中止する」よりも丁寧に聞こえる表現ですので、「執り行う」の反対の意味としてしばしば用いられます。
また、中止ではなく延期する場合に関しては、そのまま「延期する」という言葉を用いるのがよいでしょう。
「執り行う」の英語表現
「執り行う」を英語で表現する場合、「する」という意味の「do」では表現が荒く「執り行う」を適切に表現できない場合があります。ここでは、「do」よりも丁寧な表現で「執り行う」を表現できる英語を紹介します。「執り行う」に含まれるいくつかの意味合いに応じて複数の単語が考えられますので、それぞれ見ていきましょう。
「行う」は「perform」
「行う」という表現では、「perform」を用います。
「perform」は演劇などを上映する場合に使われる言葉ですが、表彰式や入学式のような観覧する人がいる会を「執り行う」という意味でも使える言葉です。
「実行する」は「carry out」
「実行する」や「遂行する」という意味合いで近しいものは「carry out」です。
「carry」には一般的にイメージのある「運ぶ」の意味の他に、「行う」の意味でも用いられる単語です。似た用法として「継続する」という意味の「carry on」も「行う」という使い方をされている表現ですので、あわせて覚えるとよいでしょう。
「催す」は「hold」
「開催する」や「催す」という表現の場合は「hold」を用います。
「hold」は「開催する」という意味になりますので、主語は主催者である必要があります。「開催される」という表現で用いたい場合は「be held」という受動態を使います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は執り行うについて解説しました。
「執り行う」は結婚式や葬儀をはじめとして、ビジネスシーンでも改まった場面ではしばしば用いられる表現です。カジュアルなシーンでは用いない言葉ではありますが、適切なシーンで利用すると相手に対して丁寧な印象を与えられる言葉です。
「実施する」をはじめとした類義語を含め、シーンによって使い分けるのがよいでしょう。
最後に「執り行う」のまとめです。
- 「執り行う」は「とりおこなう」と読みます。
- 「執り行う」の意味は、「式典や儀式を実施すること」という意味です。
- 「執り行う」は友人同士でのランチや身内だけの会など比較的カジュアルな場では使われず、主に表彰式や結婚式などの冠婚葬祭に当てはまる場で使われることが多い表現です。
- 「執り行う」を敬語表現で表す場合の言い回しについて、丁寧語は「執り行う」に丁寧語表現の「ます」をつけた形の「執り行います」です。尊敬語の表現は、「れる・られる」を用いて「執り行われました」とします。謙譲語の表現は「させていただく」を用いて、「執り行わせていただく」です。
- 「執り行う」とあわせて用いられる表現は「運び」「しめやかに」「滞りなく」があります。
- 「執り行う」に含まれるいくつかの意味合いに応じて複数の単語が考えられます。「行う」という表現では、「perform」を用います。「実行する」や「遂行する」という意味合いで近しいものは「carry out」です。「開催する」や「催す」という表現の場合は「hold」を用います。