スピーチや改まった場での挨拶などで使う「万感の思い」について解説します。本記事で読み方から意味と類語、どんな場面で使うのが適しているかなどがわかります。使い方は例文でチェック。スピーチでのひと言に「万感の思い」を加えてください。
「万感の思い」の読み方
「万感の思い」は「ばんかんのおもい」と読みます。漢字「万」は音読みで「マン」または「バン」、訓読みで「よろず」です。音読みの場合はほとんどが「マン」です。「バン」の読み方は「万感の思い」のほか、「迷惑千万(めいわくせんばん)」などがあります。
「万感の思い」の意味とは?
「胸にさまざまな感情が湧きあがり、広がる」が「万感の思い」の意味です。
「万感」とは?
漢字「万」は数字の単位のほか、「数が多いこと」や「たくさん」を表します。「万感」は、「とてもたくさんの、さまざまな感情」の意味です。
「さまざまな感情」の意味
「万感の思い」が意味する「さまざまな感情」とは、ポジティブな感情もネガティブな感情も含みます。喜怒哀楽、さまざまな感情をまとめて「万感」の言葉で表現しています。
「万感の思い」がふさわしい場面とは?
「さまざなま感情が湧きあがる」意味の「万感の思い」は、どのような場面で使うのがふさわしいかを説明します。いずれも「これまでのさまざまな苦労、喜びが思い起こされる場面」が共通しています。
卒業式や結婚式など人生の節目
卒業式や結婚式、成人式、退職のときなど人生の節目は、「万感の思い」を使うのにふさわしい場面です。人生の門出、ある種のゴールでは自然と胸にさまざまな感慨が湧いてくるもの。そのような心の動きを「万感の思い」で表現できます。結婚式でスピーチを求められたさい、退職の挨拶などに「万感の思い」が使えます。
ビジネスシーンではプロジェクトの完成などひと段落したとき
ビジネスシーンでは難航していたプロジェクトを完遂できたとき、やっと交渉をまとめて契約に至ったときなどが「万感の思い」にふさわしい場面です。苦労や悩みを越え、成功に至る喜びなどあらゆる感情をひっくるめて「万感の思い」で表します。プロジェクト完成でのスピーチ、打ち上げなどでの挨拶に「万感の思い」を使ってみてください。
葬式など悲しい場面でも使う
「万感の思い」は結婚式や創業記念などおめでたい場面で使われることが多い表現ですが、葬式など悲しい場面でも使われます。生前の故人をしのび、故人との思い出を振り返ったときに湧きおこるさまざまな感情を「万感の思い」で表します。
「万感の思い」の使い方
「万感の思い」の使い方、よく耳にする言い回しを紹介します。
「浸る」などの言葉が続く場合
「万感の思い」を使った言い回しには「万感の思いに浸る」や「万感の思いがこみ上げる」、または「万感の思いがあふれる」などがあります。「万感交到る(ばんかんこもごもいたる)」も、よく使われます。いずれも「さまざまな感情が胸に次々とあふれ、広がる」というニュアンスを表現する言い回しです。
「万感」だけで使う場合
「万感」自体に「さまざまな思い」という意味が含まれるため、「思い」をつけずに使われる場合もあります。「万感胸に迫る」や「万感に浸る」、または「万感あふれる」などです。「万感」だけで「さまざまな感情、思い」を表しています。
「万感の思い」を使った例文
「万感の思い」を使った例文を挙げます。いずれも「さまざまな思い」を表す文章です。
- 息子の卒業式に列席したときは、息子が生まれてからいままでのことが浮かんできて万感の思いだった。
- 苦節3年、ついに資格試験の合格通知を手にした瞬間は万感の思いが胸にこみ上げてきた。
- 万感の思いがあふれるのは、今回のプロジェクトがいかに紆余曲折あったかという証拠だ。
- 新卒で就職した会社だったので、いざ転職の挨拶をするとなると万感の思いと涙があふれてきてしまった。
- 引っ越しの荷造りをしながら、この家ではいろいろな出来事があったなぁと万感の思いに浸っている。
「万感の思い」の類義語・言い換え表現
「万感の思い」の類義語、言い換えられる表現を紹介します。
「感無量」
「感無量」は「かんむりょう」と読みます。四字熟語で「感慨無量(かんがいむりょう)」ともいい、「はかり知れないほど感慨が大きく、深く感じ入る様子」の意味です。「無量」は「分量を決めないこと」や「はかり知れないほど、限りなく多い」、「莫大であること」を表します。「感無量」は「感慨の量や数がはかり知れないほど多い」といえます。
よく使う言い回しは「感無量の面持ち」や「感無量だ」。「万感の思い」は「さまざまな感情」と思いの種類について述べているのに対し、「感無量」は「感慨が大きい」と思いの大きさや深さについて述べている点が違います。「感無量」を使った例文を挙げます。
- 練習に練習を重ねたピアノコンクールで優勝し、まさに感無量だ。
- 彼は感無量の面持ちで、学生時代の恩師と数十年ぶりの再会を果たした。
- あんなに小さかった娘がこんな立派な社会人になるなんて、親として感無量の思いです。
「感慨深い」
「感慨深い」は「かんがいぶかい」と読み、「しみじみと心に深く感じ入る度合が大きい」意味です。「感無量」と同じく、思いの大きさや度合を表します。「感慨」は喜びや悲しみ、誇らしさや悔しさといったあらゆる思いがないまぜになった感情です。過去の出来事を振り返り、さまざまな思いが去来した場面にふさわしい表現です。「感慨深い」を使った例文を挙げます。
- 子どものころから温めてきた夢がついに実現し、私は感慨深いものがあった。
- 教師人生を振り返って感慨深かったのは、自分の教え子が教師になったと報告してくれたときだ。教師冥利につきる。
- 10年ぶりに戻った故郷には思い出の場所がまだたくさん残されていて、とても感慨深かった。
「感慨多端」
「感慨多端」は「かんがいたたん」と読みます。意味は「しみじみと心に深く感じ入ることが多くある」です。「多端」には「複雑で多方面にわたっていること」の意味があります。思いや感情の種類、多さを表している点が「万感の思い」と共通しています。「感慨多端」を使った例文を挙げます。
- 私のためにこのようなお祝いの会を盛大に開いていただき、感慨多端です。
- 明日に定年退職を控え、これまでの会社人生を振り返ると感慨多端だ。
- 本日はためになるお話をたくさんうかがって、感慨多端でした。
「感極まる」
「感極まる」は「かんきわまる」と読み、意味は「とても感動する」です。ポジティブな場面でよく使いますが、「感激、感動した」という意味なので葬式など悲しい場面ではつかいません。「感極まる」を使った例文を挙げます。
- コンサートのアンコールで思い出の曲が演奏されると、聴き入っていた彼女は感極まった。
- 優しい慰めの言葉をかけられて感極まったのか、彼は紅潮した顔で何度も涙をぬぐっていた。
- 社内の皆さんが用意してくださった寄せ書きを読み、私は感極まるものがありました。
「万感の思い」の英語表現
英語に「万感の思い」の直訳はありません。「たくさんの思い」や「さまざまな種類の思い」といったニュアンスの英語表現を紹介します。
「all sorts of emotions」
「万感の思い」を「あらゆる種類の感情」と解釈すると、英語では「all sorts of emotions」です。「sort」は種類を意味します。「万感の思い」の「さまざまな思い」に着目した英語表現です。
「thousands of thoughts」
「万感の思い」を「たくさんの思い」と解釈すると、英語では「thousands of thoughts」と表現します。「thousands」を直訳すると1,000という数を表しますが、漢字の「万」と同じく「たくさんの」という意味です。「万感の思い」の「思いの多さ」に着目した英語表現です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は万感の思いについて解説しました。
「万感の思い」は「さまざまな思いが胸にあふれる様子」を意味する表現です。お祝いの席だけでなく悲しい場面でも使います。喜怒哀楽すべての感情を含む表現なので、スピーチや挨拶のひと言に加えてくださいね。
最後に「万感の思い」のまとめです。
- 「万感の思い」は「ばんかんのおもい」と読みます。
- 「胸にさまざまな感情が湧きあがり、広がる」が「万感の思い」の意味です。
- 卒業式や結婚式、成人式、退職のときなど人生の節目やビジネスシーンでは難航していたプロジェクトを完遂できたとき、やっと交渉をまとめて契約に至ったときなどが、「万感の思い」を使うのにふさわしい場面です。
- 「万感の思い」を使った言い回しには「万感の思いに浸る」や「万感の思いがこみ上げる」、または「万感の思いがあふれる」などがあります。
- 「万感の思い」の類義語は「感無量」「感慨深い」「感慨多端」「感極まる」です。
- 「万感の思い」の英語表現は「all sorts of emotions」「thousands of thoughts」です。