四字熟語「悠々自適」を紹介します。たとえば「悠々自適な暮らし」とは、どんな暮らしを指すのでしょうか。読み方から意味、類語と対義語など例文を使って徹底解説します。本記事を読んで「悠々自適」を使いこなしてください。
「悠々自適」の読み方は?
「悠々自適」は「ゆうゆうじてき」と読みます。「悠々」は「々」を使わず「悠悠」とも表記します。また、「優遊自適」や「優游自適」の表記もあります。いずれも読み方は「ゆうゆうじてき」で、同じ意味の四字熟語です。
「悠々自適」の意味とは
四字熟語「悠悠自適」の意味は、「世間の騒がしさや雑事から離れ、心静かに過ごすこと」または「のんびり、自分の思うままに過ごすこと」です。「悠々自適」を構成する「悠々」と「自適」についても、それぞれの意味を解説します。
「悠々」の意味
「悠々」には以下のような意味があります。
1.はるかに遠い、限りなく続いている様子。「悠々たる時間の流れ」などと使います。
2.落ち着いていて、ゆったりとした様子。「悠々と暮らす」などです。
3.落ち着いて余裕があり、ゆったりとものごとをおこなう様子。「悠々と歩く」などと使います。
「悠々自適」の「悠々」は、主に2の「落ち着いていて、ゆったりとした様子」の意味です。
「自適」とは
「自適」は、「心のおもむくまま、のびやかに楽しむ」または「何の束縛も受けない状態」の意味です。「悠々自適」でもこの意味で「自適」を使っています。
具体的に「悠々自適」とはどんな状態?
「自分の思うまま、心安らかに過ごす」のが「悠々自適」の意味ですが、具体的にはどんな状態でしょうか。たとえば「心安らかに過ごす」なら、仕事や人間関係にわずらわされずに心穏やかな状態が「悠々自適」です。この場合、実際に仕事を辞めたり引っ越すなどして物理的にわずらわしさから離れるだけでなく、面倒ごとが近くにあっても気に留めずにマイペースで過ごす状態も「悠々自適」といえます。自分の思うまま、マイペースであれば「悠々自適」です。心のありようで「悠々自適」か否かが決まるといえます。
「悠々自適」の使い方と例文
「悠々自適」のよく使う言い回し、例文を紹介します。
「悠々自適な」の言い回しが多い
「悠々自適」は、「悠々自適な」や「悠々自適の」などの言い回しでよく使います。その後ろに「暮らし」や「ひととき」などが続きます。単に状態を表すために「悠々自適」だけでも使います。
例文
「悠々自適」を使った例文を挙げます。いずれも「自分の思うまま、のびやかに過ごす」や「雑事にわずらわされない状態」を意味する文章です。
- 父は退職して念願だった海の近くに引っ越し、いまでは悠々自適の生活です。
- お腹が空いたら食べ、眠くなったら眠る。猫は悠々自適で羨ましいよ。
- 自分の考え方を変え、周りは気にしないことにした。おかげで悠々自適の毎日を過ごせるようになった。
「悠々自適」の類義語・言い換え表現
「悠々自適」と似た意味の四字熟語を紹介します。
「悠悠閑適」
「悠悠閑適」は「ゆうゆうかんてき」と読み、「のんびり、落ち着いて楽しむ」意味です。「優悠閑適」または「優游閑適」の表記もあり、読み方と意味は「悠悠閑適」と同じです。「閑適」は「落ち着いて楽しむ」を表します。同じ意味の四字熟語に「悠悠閑閑」もあり、読み方は「ゆうゆうかんかん」です。
「悠然自得」
「悠然自得」は「ゆうぜんじとく」と読みます。意味は「心がゆったり、のびやかで落ち着いている様子」です。「悠然」は、「心がゆったりしている様子」または「落ち着いていて少しも慌てない様子」を表しています。「自得」は「自分自身で悟る、理解して会得する」や「自分自身で満足し、うぬぼれる」、または「自分のしたことの報いが自分に返ってくる」意味です。「悠然自得」の「自得」は「理解して会得する」を表しています。「悠悠自得(ゆうゆうじとく)」と表記する場合もあり、意味は「悠然自得」と同じです。
「逍遥自在」
「逍遥自在」は「しょうようじざい」と読み、「世俗や世間から離れ、自由に楽しむ」意味です。「逍遥」は、もともとの意味「気分任せでぶらぶら歩く」が転じて、「自由に楽しむ」の意味で使われています。「自在」は「自分の思うがまま、邪魔するものが何もない状態」を指します。「逍遥自在」は「優雅に暮らす」や「自由を満喫する」ニュアンスが強く、「世俗から離れて自由になる様子」を表すのにふさわしい四字熟語です。
「一竿風月」
「一竿風月」は「いっかんふうげつ」と読みます。「竿」は釣り竿を指し、「風月」は風流を楽しむ様子を表しています。つまり「世俗から離れ、自然のなかでのんびり暮らす」意味です。「悠々自適」では暮らす場所は問いませんが、「一竿風月」は「世俗から離れた場所や自然のなか」のニュアンスを含みます。出典は中国南宋時代の詩人・陸游(りくゆう)の詩「感旧」。「感旧」に「回レ首壮遊真昨夢、一竿風月老二南湖一」の一節があります。
「晴耕雨読」
「晴耕雨読」は「せいこううどく」と読みます。「晴れた日には田畑を耕し、雨の日には読書をして過ごす」意味から、「俗世間を離れ、田園で気ままにくらすこと」を表す四字熟語です。「一竿風月」同様に、ただのんびり暮らすのではなく、世俗から離れて田園などで暮らす意味合いを含んでいます。
「悠々自適」の対義語
「悠々自適」と反対の意味で使う四字熟語を挙げます。いずれも「雑事にわずらわされる様子」を表します。
「多事多端」
「多事多端」は「たじたたん」と読み、「しなければならない用事がとても多く、非常に忙しい様子」を表します。「多事」は「片付けるべき用事が多い」、「多端」は「あれこれ問題が多い」または「仕事が多くて忙しい」意味です。「多事多忙(たじたぼう)」ともいいます。わずらわしいことが多い、とても忙しい状態が「悠々自適」と反対です。
「俗用多端」
「俗用多端」は「ぞくようたたん」と読みます。「世間の雑事にわずらわされ、忙しい様子」を表す四字熟語です。「俗用」は、「世俗の雑事」や「日常のつまらないこと」の意味です。楽しい用事ではなく、面倒くさくわずらわしい用事を指しています。したがって「俗用多端」は、ただ忙しいだけでなく「面倒な雑事に追われている、振り回されている」といったネガティブなニュアンスを含んでいます。
「東奔西走」
「東奔西走」は「とうほんせいそう」と読み、「東走西奔(とうそうせいほん)」ともいいます。また、「東行西走(とうこうせいそう)」や「南行北走(なんこうほくそう)」もあります。どの四字熟語も意味は「仕事や用事のために、あちこちを走り回ること」です。心の持ちようというよりも、行動の忙しさが「悠々自適」と反対です。
「南船北馬」
「南船北馬」は「なんせんほくば」と読みます。「絶えず旅を続けている様子」または「常に雑事に追われている」意味です。出典は中国前漢時代の哲学書『淮南子(えなんじ)』で、「胡人(こじん)は馬を便(べん)とし、越人(えつじん)は舟を便とす」の一文がもとになっています。中国の地形は南方に川や海が多く、北方は山がちです。それぞれの交通手段である船と馬で「あちこち旅をする」意味です。「南船北車(なんせんほくしゃ)」も「南船北馬」とまったく同義の四字熟語です。
「悠々自適」の英語表現
英語には「悠々自適」の直訳はありません。そこで「ゆったり過ごす」や「わずらわしいことがない」などの表現で「悠々自適」を表します。もっとも簡潔な英語表現は「live in comfort(快適に暮らす)」です。少し固い表現ですが、「俗事から離れて」のニュアンスを表現するなら「live free from worldly cares(世俗から離れて安穏と過ごす)」。「living quietly(静かな暮らし)」や「live freely(自由に暮らす)」も、広い意味では「悠々自適」の英語表現といえます。
まとめ
「悠々自適」は「世間の雑事にわずらわされず、マイペースに過ごす」意味の四字熟語です。ビジネスシーンでは、退職される方に「これからは悠々自適ですね」などと使えますよ。