「こちらこそ」は日常でよく使われるため、ビジネスの場で使っていいのか悩むもの。「こちらこそ」は丁寧語として目上の人に使えますが、使うにあたって注意すべき点もあります。本記事では「こちらこそ」の正しい使い方や、言い換えなど解説します。
「こちらこそ」の意味とは?
「此方こそ(こちらこそ)」は、「私の方こそ」を意味します。「こちら」と「こそ」に分けて考えられ、「こちら」は「私」や「私が属している組織」などを指し、「こそ」は、「私」や「私が属している組織」など「こちら」に当たる部分の強調です。
「こちらこそ」を使えば、相手よりも自分の方が気持ちが大きいことを伝えられます。
「こちらこそ」は敬語として使える?
「こちらこそ」は敬語表現とあわせれば、敬語としてビジネスシーンで使える言葉です。「こちらこそ」自体に敬語表現はないので、前後に敬語を使って用いる必要があります。
「こちらこそ」は、日常的に頻繁に使う言葉ですから、使うと失礼に当たらないか迷ってしまいますよね。前後に正しい敬語表現を入れて使えば、目上の人にも使えると覚えておきましょう。
「こちらこそ」の使い方・例文
「こちらこそ」をビジネスシーンで使うためには、正しい使い方や使用時の注意点を知っておく必要があります。ここでは、「こちらこそ」の使い方と、使用するときの注意点を紹介します。
「こちらこそ」の使い方
「こちらこそ」は、相手から感謝やお詫びをされ、自分も同じことを伝えるときに使います。その際は、何について「私の方こそ」感謝するのか、謝罪するのかを明確にすることが大切です。
また、挨拶をされたときに使うこともあります。
「こちらこそ」を使用するときの注意点
「こちらこそ」を使用するときは、以下の2つのポイントに注意しましょう。
・前後の言葉を省略しない
・お礼・お詫びには、否定の言葉を挟む
順に解説します。
前後の言葉を省略しない
「こちらこそ」を使うときは、前後の言葉を省略しないようにしましょう。相手の言葉に対し、「こちらこそ」だけで受け答えすると、ぶっきら棒な印象を相手に与えてしまうからです。
また、相手の誠意に対し「こちらこそ」だけを返すと、相手と自分が対等な立場になってしまい、相手によっては無礼に当たるからです。たとえば、相手が顧客の場合は、「こちらこそ」だけだと不快に思われる恐れがあるため注意しましょう。
何に対して感謝を感じているのか、何に対してお詫びをするのかを明確にした上で「こちらこそ」を使ってください。
お礼・お詫びには、否定の言葉を挟む
相手のお礼・お詫びに対して「こちらこそ」を使うときは、「とんでもございません」や「とんでもないです」など否定の言葉を挟むようにしましょう。相手は社交辞令としてお礼・お詫びをしている可能性があり、それを「こちらこそ」と当然のこととして受け取ってしまうと、相手に不快感を与える恐れがあるからです。
「とんでもございません」と言うことで謙遜した丁寧なイメージを与えられます。「感謝には一度否定してからこちらこそを使う」と覚えておきましょう。
「こちらこそ」のビジネスで使える例文
「こちらこそ」はビジネスシーンでも使える表現です。ここでは、ビジネスで使える「こちらこそ」の例文を確認しておきましょう。
感謝する場合
相手から感謝の意を伝えられた際に、「こちらこそ」を使って表現を作ると、自分も感謝している気持ちを相手に伝えられます。
- こちらこそご支援いただき感謝申し上げます。
- こちらこそ貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。
- こちらこそお心遣いいただきましてありがとうございます。
「こちらこそありがとうございます」だけでも感謝の気持ちは伝わりますが、感謝する理由をあわせて伝えた方がより丁寧な印象になると理解しておきましょう。
謝罪する場合
相手から謝罪を受けた際に、「こちらこそ」を使って表現を作ると、自分も同じように申し訳ないと感じていることを相手に伝えられます。
- こちらこそご迷惑をお掛けし申し訳ございませんでした。
- こちらこそ見落としており申し訳ございませんでした。
- こちらこそお手数をお掛けしてしまい申し訳ございません。
「申し訳ございません」の代わりに「すみません」を使う場合もありますが、より丁寧な印象を与える方は「申し訳ございません」です。目上の人や、取引先の人には「申し訳ございません」を使うようにしましょう。
挨拶する場合
相手から挨拶の言葉を伝えられた際に、「こちらこそ」を使って表現を作ると、自分も同じ気持ちを持っていることを相手に伝えられます。
- こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。
- こちらこそお世話になっております。
- こちらこそお会いできて光栄です。
相手から挨拶された際に使える便利な言い回しなので覚えておきましょう。
「こちらこそ」の類義語・言い換え表現
「こちらこそ」には類義語・言い換え表現があります。シチュエーションに応じて使い分けると便利です。ここでは、2つの「こちらこそ」に代わる表現を紹介します。
むしろ
「むしろ~さんこそ(感謝の言葉)です」や「むしろ私の方こそ(感謝・謝罪)です」など「むしろ」を使った強調表現に言い換えると、「(感謝・謝罪)するべきなのは私の方です」といったニュアンスを伝えられます。以下の例文で使い方を確認してください。
- むしろ~さんこそ遠いところまでお越しくださりありがとうございます。
- むしろ私の方こそ感謝申し上げます。
- むしろ私の方こそ至らぬことが多く申し訳ございませんでした。
- むしろ私の方こそお世話になりました。
「むしろ」の強調表現も「こちらこそ」同様に、さまざまなシーンで使える言葉なのでしっかり覚えておきましょう。
私です(自分を強調する)
「こちらこそ」は「~のは私です」などと自分を強調する表現に言い換えられます。
- お邪魔させていただいたのは私です。本日はお呼びいただきありがとうございました。
- 無理を言ってご迷惑をお掛けしたのは私です。大変申し訳ございませんでした。
上記のように、感謝や謝罪の理由を「~のは私です」の形で先に伝えることで、「こちらこそ」を使わずに同じ意味を伝えられる表現です。言い回しが若干ややこしいですが、「自分を強調すると、こちらこそを使わない表現が作れる」と覚えておきましょう。
「こちらこそ」の英語・中国語・韓国語表現
「こちらこそ」はビジネスシーンでも使用され、英語や中国語、韓国語表現も知っておくと便利です。ビジネスでこれらの言語を使うことが多い人は確認しておきましょう。
「こちらこそ」の英語表現
「こちらこそ」のように相手の意見に同調する英語表現は、文末に「too」を添えることが一般的です。
- Thank you, too.(こちらこそありがとうございます。)
- I am sorry, too.(こちらこそ申し訳ございません。)
- Nice to meet you, too. (こちらこそお会いできて光栄です。)
また、「こちらこそありがとうございます」は、「Thank you」の「you」の部分を強調して発音することにより表現しても問題ありません。「you」を強調して発音すると、「感謝されるべきはあなたです」といったニュアンスが出ます。
他にも、「Likewise(同様に)」や「I am the one(~なのは私です)」を「こちらこそ」のニュアンスを伝えたいときに使用する場合もあります。
「こちらこそ」の中国語表現
「こちらこそ」を中国語で表現すると「彼此彼此」となります。
- 彼此彼此,不必道谢(お互い様ですからお礼にはおよびません。)
- ・彼此彼此,请多多关照(こちらこそよろしくお願いします。)
「こちらこそ」の韓国語表現
「こちらこそ」を韓国語で表現すると「저야말로」となります。
- 저야말로 신세를 많이 졌습니다.(私こそとてもお世話になりました。)
- 저야말로 잘 부탁드립니다.(私こそよろしくお願いいたします。)
まとめ
「こちらこそ」は、「私の方こそ」を意味し、相手よりも自分の方が気持ちが大きいことを伝えたいときに使える表現です。ビジネスシーンでも問題なく使えますが、前後に正しい敬語表現を入れる、「こちらこそ」だけで伝えない、お礼・お詫びの言葉には否定を挟むなどのルール守る必要があります。相手に謙虚な印象を与えられる便利な表現なので、ビジネスシーンで上手に使いこなせるようになりましょう。