「妻に頭が上がりません」というセリフを耳にしたことがあるでしょう。では「頭が下がる」との違いなど、詳しい意味はご存知でしょうか?今回は「頭が上がらない」の意味や使い方、由来や類義語・英語表現に加え「頭が下がる」との違いも徹底解説します!
「頭が上がらない」の意味とは?
「頭が上がらない」という言葉の意味を紹介します。ビジネスシーンにおいてもよく使われる言葉であるため、しっかりおさえておきましょう。
「対等な態度でふるまえない様子」
「頭が上がらない」とは「対等に振る舞えない様子」を表した言葉です。相手と自分との力の差を痛感していたり、権力や立場関係に大きな差があったりするときに抱く感情を表しています。もう1つの典型的な例としては、相手に大きな借りがあったり、過去に大きな迷惑をかけたなどのは負い目を感じている状況が挙げられます。これらの状況下に置かれると、対等な立場で振舞えないと感じてしまうのが人間の性質です。こういった心理状況に苛まれている状態では、 根本的に相手に対して引け目や負い目を感じてしまい対等に振る舞えないと感じてしまいます。
「感謝の念に堪えない」という意味ではない
「頭が上がらない」という表現を使う上で誤ってしまいがちなのは、 感謝の気持ちで溢れているという意味で使ってしまうことです。頭が上がらないとは、何らかの理由で対等に振る舞えないという意味を表します。つまり「ありがとう」という感謝の気持ちはニュアンスには含まれません。確かに、相手に助けられた時は感謝の気持ちで堪えないという心理状況になることはあります。しかし、その状況が「対等に振る舞えない」という気持ちでないのであれば、「頭が上がらない」を使うのは不適切な表現になります。
「頭が上がらない」の由来・語源
「頭が上がらない」の由来は、儒教思想にあります。 頭の位置を下げることは、相手に敬意を表していることになり、おじぎや挨拶など日本においても一般的にこのような振る舞いは浸透しています。儒教思想において「礼」は非常に大切なものとして位置しており、「頭が上がらない」は「頭の位置が低いこと」、つまり「私はあなたよりも下に位置しています」という意思表示につながるのです。転じて、「頭が上がらない」は相手よりも立場が低いことを態度で表す様子を表現している言葉になります。
「頭が上がらない」の類義語・言い替え
「頭が上がらない」の類義語と言い換え表現を紹介します。 似た意味の言葉を把握することで、表現の幅を広げていきましょう。
「感服」
「感服」という言葉は、「頭が上がらない」の類語表現にあたります。「感服」のニュアンスは、相手に対してすごいと思う気持ちや感心する気持ちあたります。つまり。、相手への敬意を表す言葉になるのです。「感服」という言葉は、相手に対して尊敬の気持ちを抱くことを指しますが、「頭が上がらない」は、尊敬というよりは「対等に振る舞えない」という気持ちを表す表現になります。ただ、 「相手の方が立場は上だと考えている」 というニュアンスにおいては同じになるため、「感服」は「頭が上がらない」の類義語だといえるでしょう。例えば、「彼の仕事振りに非常に感服した。」というように使います。
「敬服」
「敬服」という言葉も「頭が上がらない」の類語の1つで、「敬服」の意味は「相手に感心して尊敬の念を抱くこと」になります。基本的に「感服」と同じ意味で、「敬服」も「相手を敬い、自分よりも相手の立場や能力が上だと考えていること」というニュアンスがあります。相手の方が立場が上であるとするとらえ方において、「敬服」も「頭が上がらない」の類義語だといえるでしょう。
「頭が上がらない」の対義語
「頭が上がらない」の対義語として、「対等」という言葉があります。「対等」は、「物事や人の間に優劣の差や上下関係がない」や「両者とも同じ程度である」という意味を持ちます。「頭が上がらない」は「相手の方が上であると認めている状態」という意味の言葉になるので、「対等」の対義語であるといえます。例えば、「彼は今年入ってきたばかりなのに、ベテランの先輩たちと対等にやりあっている。」というような使われ方をします。
「頭が上がらない」と「頭が下がる」の違い
ここでは「頭が上がらない」と「頭が下がる」の違いについて紹介します。言葉の雰囲気は似ていますが、意味合いが異なるのでその違いをしっかり理解しておきましょう。
「頭が下がる」は「尊敬する」という意味
「頭が下がる」は「感心する」や「尊敬する」という意味を持ちます。相手の行動や態度に賞賛の気持ちを表す言葉であり、「頭が上がらない」のように「対等に振る舞えない」というニュアンスではありません。純粋に相手を尊敬するという気持ちを伝えたいならば、「頭が下がる」という表現を使うのが適切です。「頭が上がらない」も「 頭が下がる」も想像できるイメージは同じになりますが、慣用表現として意味に違いがあります。 この2つの使い分けは十分注意が必要です。
「頭が上がらない」と「頭が下がる」の使い分け
「頭が上がらない」と「頭が下がる」の使い分けについて紹介します。「頭が上がらない」という言葉を使うときは、「相手との権力や能力の差、また負い目などを引きずっていて、対等に振る舞えない」という気持ちを持っていることを表現したいときです。一方、「頭が下がる」とは、「相手の能力や人柄を尊敬している」という意味になります。自分がどのような気持ちか、 相手に対してどのような態度をとっているかでこの2つの言葉を使い分けることが重要になります。
「頭」という漢字を使った慣用句
「頭」という漢字を使った慣用句について紹介します。人の体の一部を用いた慣用句は、日本語の中にはたくさん存在します。その中の「頭」を用いた慣用句について3つピックアップしました。
「頭が痛い」
「頭が痛い」という言葉は、「心配事や心残りがあって思い悩む様子」を表します。悩んだところでどうしようもないことを頭の中でいろいろ考えているときに使う言葉になります。また、純粋に頭痛がするときも「頭が痛い」は使われます。一般的な使われ方としては、未来の先行きが不安なときに「頭が痛い」という表現が用いられます。例えば、「新学期始まって早々喧嘩が起こった。この先の事を考えると頭が痛い。」というような使われ方をします。
「頭を丸める」
「頭を丸める」は「頭髪を全て剃って丸刈りにすること」を指します。転じて、「出家してお坊さんになる」という意味もあります。髪を全て切ることで丸坊主にし、見た目にも頭が丸く見えることから「頭を丸める」という表現が用いられます。また、頭を全て狩り落とす行為は反省しているという気持ちを表現する行動でもあります。「反省する」という意味で用いられている例文としては、「彼は今回の騒動において反省の気持ちを表現するために自ら頭を丸めた。」などが挙げられます。
「頭を突っ込む」
「頭を突っ込む」とは、「グループや仕事などのプロジェクトに参加するという」意味があります。同じ意味の言葉に「首を突っ込む」という言葉もあります。元々あった集団に参加するというニュアンスがありますが、自発的に参加していく様子を表し、 ヘッドハンディングされて参加するというイメージではありません。特に「首を突っ込む」という言葉は 「参加して余計なことをする」というような、 ネガティブなイメージで使われることもあります。
「頭が上がらない」を英語でいうと?
「頭が上がらない」の英語表現を紹介します。「no match for」で「頭が上がらない」という意味になり、立場的に相手の方が上であることを表現する言葉になります。例文としては「He is no match for his wife.」(彼は奥さんには頭が上がらない。)などが挙げられます。
「頭が上がらない」の使い方と例文集
最後に「頭が上がらない」の使い方と例文を紹介します。正しい使い方を理解することで、自信を持ってコミュニケーションをとれるようになります。使い方や注意点について詳しく見ていきましょう。
「頭が上がらない」の使い方
「頭が上がらない」という言葉は、圧倒的な能力や立場または負い目や引け目を感じていることで、対等に振る舞えないという気持ちがある時に使われます。その精神的なスタンスはあまりよい状況にあるとはいえません。「頭が上がらない」と「頭が下がる」を混同して使われている時がありますが、 この2つは意味が違うので明確に使い分けるべき言葉です。
「頭が上がらない」を使用するときの注意点
「頭が上がらない」という言葉を使う際に気を付けなければいけない点は2つあります。1つ目は「頭が下がる」との使い分け、 2つ目は「上司や目上の人には積極的に使わない」という点です。「頭が上がらない」と「頭が下がる」は意味が違うため使い分けるべきなのは先ほど紹介しました。2つ目の上司には使わない方がよい理由は、 自分が負い目を感じていることを上司に伝えてしまうからです。尊敬しているという意味ではなく、「立場において上司に逆らえない」というスタンスが伝わってしまいます。「尊敬の念」を伝えるのであれば、「頭が下がる」という表現をするべきだといえます。
「頭が上がらない」の例文
「頭が上がらない」を用いた例文を紹介します。
- あの時私が犯してしまったミスを彼がすべてリカバリーしてくれたので彼には頭が上がらない。
- 専務レベルになると雲の上の人になってしまって、頭が上がらない。
まとめ
「頭が上がらない」は「対等な立場で振る舞えない様子」を表す言葉です。「頭が下がる」と表現は似ていますが、意味合いが異なるので使い分けに十分注意しましょう。