「歯に衣着せぬ」という言葉の意味をご存じですか。「歯に衣着せない言い方するね。」という台詞を聞いたことがある方も多いでしょう。今回は、「歯に衣着せぬ」の意味や使い方、類語や対義語に加え、歯に衣着せぬ言い方をする人の特徴について紹介します。
「歯に衣着せぬ」の読み方
「歯に衣着せぬ」は「はにきぬきせぬ」と読みます。「衣」は普通の読み方であれば「ころも」と読みますが、この言葉においては「きぬ」と読むことに注意しましょう。
「歯に衣着せぬ」の意味とは?
「歯に衣着せぬ」とはどのような様子を表現する言葉なのでしょうか。ここでは、「歯に衣着せぬ」という言葉の意味やニュアンスについて紹介します。また周囲との人間関係において、「歯に衣着せぬ」物言いをする態度をとる上で注意した方がいいことなども紹介します。さっそく見ていきましょう。
「思った通りをずけずけ言うこと」という意味
「歯に衣着せぬ」という言葉は、「思ったことがあると遠慮せずに相手に伝えるさま」を指す言葉です。ずけずけ言う様子を表した言葉といえるでしょう。ポイントは「はっきりという」点と「遠慮しない」点。このふたつがそろって初めて「歯に衣着せぬ」という言葉のニュアンスが通ります。周囲が言いにくいことでも明らかにおかしいことは遠慮せずに口に出して指摘することを表します。この言葉は肯定的な意味合いで使うという点に留意しておくべきと言えるでしょう。
度が過ぎると周囲と軋轢を生むことも
歯に衣着せぬ物言いをすることで周囲からありがたがられることが多いでしょう。しかし一定のは注意が必要です。なぜなら、言われる側は耳が痛いこと言われるため嬉しくないことが多いです。ビジネスシーンでは、上司や目上の人に対して言いたいことを伝えることは、同僚や仲間からは歓迎されるものの、その分、上層部からは煙たがられる可能性が出てきます。待遇が悪くなる可能性も出てきますので、歯に衣着せぬ物言いも度を過ぎないよう気を付けるべきだといえるでしょう。
「歯に衣着せぬ」の由来・語源
「歯に衣着せぬ」は、「歯を隠さない様子」を由来にしている言葉です。「歯に衣を着せない様子」は、「歯を隠そうとしない」という意味につながります。つまり、「はっきりと意見を言う」様子につながっているといえるでしょう。物事を曖昧に表現することを「オブラートに包む」と表現しますが、それとは対義語になります。「衣を着せない」というイメージは着飾らないというニュアンスにもつながります。つまり、「誇張のない率直な物言い」をすることを表している言葉です。
「歯に衣着せぬ」の類義語・言い替え
「歯に衣着せぬ」という言葉の類義語や言い換え表現について紹介します。ここで紹介する言葉は「忌憚なく」と「一言居士」です。このように、言い換え表現を理解することで、適切なタイミングで正しく言葉を使い分けられるようになります。言葉の意味やニュアンス、使い方について詳しく紹介しますので、さっそく見ていきましょう。
「忌憚なく」
「忌憚」とは「遠慮や気兼ね」といった意味を持つ言葉で、「忌憚なく」とは、「遠慮」や「気兼ね」がない様子を表している言葉です。ビジネスシーンにおいては会議の後「忌憚なくご意見をお寄せください」などと使われることが多いです。これは「言いにくい意見でも遠慮なく伝えてください。」という意味を表す言葉で、「歯に衣着せぬ」物言いをお願いするときに使われる言葉になります。
「一言居士」
「一言居士」とは「いちげんこじ」と読み、「何事にも自分の意見を言わないと気が済まない人」を表す言葉です。「歯に衣着せぬ」はよい意味がありますが「一言居士」は否定的なニュアンスを持つ言葉です。俗にいう「ひとこと多い人」を表しています。マイナスのニュアンスを持つため「歯に衣着せぬ」と異なり、誉め言葉にはなりません。同じ行動に対しても肯定的に捉えるか否定的に捉えるかの違いで表現の仕方が異なります。
「歯に衣着せぬ」の対義語
「歯に衣着せぬ」の対義語をいくつか紹介します。ここで紹介するのは「奥歯に物が挟まる」と「奥歯に衣着せる」です。対義語を理解することで、 それぞれの言葉の意味合いを比較できるようになります。その意味合いの違いを、詳しく見ていきましょう。
「奥歯に物が挟まる」
「奥歯に物が挟まる」とは、「自分の気持ちをはっきりと口にしない様子」を表す言葉です。奥歯にものがはさまった状態では気持ちが悪く、思うように口を動かせません。その様子から、「何か隠し事をしている」、「重要な点をぼかして敢えて曖昧な話し方をしている」様子を表した言葉になります。例えばお肉の食レポをしていて、硬くパサついていて正直あまりおいしくなかったとき、「まずい」とは言えず「歯ごたえがあって食べ応えがある」という逃げの表現をしたとします。これは典型的な「奥歯にものが挟まった」ような話し方といえます。つまり、決して「美味しい」とは言えず「まずい」とも言えないので、「歯ごたえ」や「食べ応え」という表現で曖昧にしているのです。
「奥歯に衣着せる」
「奥歯に衣着せる」とは、「どこか思わせぶりな物言いをする様子」を表す言葉で、「歯に衣着せぬ物言い」とは対照的に、「曖昧な物言いをすること」を表現する言葉です。「オブラートに包む」と近いニュアンスを持ちます。その由来においては「歯に衣着せぬ」と同じような理屈で生まれた言葉です。
「歯に衣着せぬ」物言いをする人の性格3選
「歯に衣着せない」は褒め言葉として使われますが、表現が率直すぎて周囲の人が傷つく可能性があることも事実です。率直な物言いができる人の性格特徴について3つほど紹介します。詳しく見ていきましょう。
「悪気はない」
「歯に衣着せぬ」物言いができる人は、生まれ持った性格によるものであることが多いです。つまり、意見をズバズバ言う役を演じている可能性は少ないといえるでしょう。そのため、言われた側の気持ちを考える前に考えていることを口にしてしまう傾向があります。その表裏のなさが仇となって、思わぬ軋轢を生みかねないので注意が必要です。
「他人の意見に耳を貸さない」
他の人の意見にもあまり耳を貸さない傾向があります。表現欲が強いため、自分の考えを伝えたいという気持ちが先行しがちであるといえるでしょう。反対の見方をすれば、周囲の意見を自分の胸の内に受け止めにくいという傾向を持っているといえます。
「相手の気持ちを察しない」
「相手の気持ちを察することができない」のも大きな特徴であるといえます。相手の気持ちを機敏に察知できる性格の場合、いろいろなことを考えてしまって自分の気持ちを発言することができなくなってしまいます。つまり歯に衣着せぬ物言いができる人は、「考えすぎないところ」が大きな強みになっていることが多いです。
ずけずけ言う人の対処法
ずけずけ言う人の対応はそれが出来ない人にとっては難しいでしょう。ただ、率直な物言いをする人もいることで物事が好転することもビジネスシーンにおいては多々あります。そういったメリットにも目を向けて、割り切るというのも対処方の一つです。また、仕事上の関係のみと割り切って、それ以外では適度に距離をとるのも自己防衛の一つといえるでしょう。
「歯に衣着せぬ」を英語でいうと?
「歯に衣着せぬ」の英語表現を紹介します。今回紹介するのは、「not mince matters」「flank」の2つです。
「not mince matters」
「not mince matters」で「歯に衣着せぬ」の英語表現となります。「I will not mince matters.」で「歯に衣着せず率直に言おう」という意味の文章となり、「mince」は「切り刻む」「ミンチ」の語源となっています。「matter」は物事という意味で、この文章を英語に直訳すると「物事を切り刻まない」という文意になります。物事を細かく分解せずに直接伝えるというニュアンスで、率直さが伝わってくる表現になります。
「flank」
「a frank opinion」で「歯に衣着せぬ意見」という意味になります。「frank」は「率直な」という意味になり、包み隠さないというニュアンスがあります。比較的難易度も低く、使いやすい表現だといえるでしょう。
「歯に衣着せぬ」の使い方と例文集
最後に「歯に衣きせぬ」の使い方とその注意点、例文を紹介します。正しい使い方を理解すれば、周囲と円滑にコミュニケーションが取れるようになります。さっそく見ていきましょう。
「歯に衣着せぬ」の使い方
歯に衣着せぬ物言いが災いして、いざこざが生まれることもあります。しかし、「歯に衣着せぬ」という言葉は褒め言葉として使われるので、肯定的なニュアンスを持つ言葉になります。率直にものを言う態度を悪く表現する場合は「一言居士」という言葉が使われるので、使い分けに注意が必要です。
「歯に衣着せぬ」を使用するときの注意点
誉め言葉としてのニュアンスも持つため、自分に対しては使うのは不適切になります。自分を表現するときは、「私は思ったことはすぐに口にしてしまうんだよね。」ぐらいにとどめておくのが無難でしょう。
「歯に衣着せぬ」の例文
「歯に衣着せぬ」を使った例文を2つほど紹介します。
- 彼の歯に衣着せぬ意見のおかげで、プロジェクトが座礁しなくてすんだよ。
- あの女性タレントの歯に衣着せぬ物言いは、聞いていてとても爽快だ。
まとめ
「歯に衣着せぬ」という言葉は「思った通りをずけずけ言うこと」という意味を持ちます。その行為を肯定的に捉えている時に使う言葉になるので、自分を表現するときには使えない点に注意が必要です。このように言葉が持つニュアンスを知ることで、その使い方が見えてきます。分からない言葉があったら積極的に検索していきましょう。