「諸刃の剣」という表現をご存じでしょうか。この言葉の「由来」は剣の形にありました。直感的に言葉を理解するうえで「由来」は重要な手掛かりになります。今回は「諸刃の剣」の正しい意味と使い方に加え、由来や類語・英語表現についても徹底解説します。
「諸刃の剣」の意味とは?
ここでは、「諸刃の剣」の意味や使われ方について詳しく解説します。ビジネスシーンにおいても親和性の高い言葉になるので、そのような言葉を身に着けておくことは非常に大切です。「諸刃の剣」という言葉について多角的に解説します。
「一方では非常に役に立つが、他方で大きな害を与える危険性があるもの」
「諸刃の剣」という言葉は「よい面と悪い面が共存している様子」を表す言葉になります。ビジネスシーンにおいても「諸刃の剣」という表現が使われることはあり、新しい事業を始めるときや大規模な設備投資をするときなどリスクを抱えるとき、リスクとリターンの幅を値踏みするときなどに用いられます。リスクとリターンはトレードオフの関係にあるので、突破力がある案は失敗したときの痛手が大きいという状況はよくあることです。
投資の世界でも使われる
投資の世界においても、「諸刃の剣」という言葉は使われます。株式投資などにおいて、値動きの変動幅が大きいことは「ボラティリティが大きい」と表現され、この言葉は「リターンが大きい分リスクも大きいこと」を表しています。この状態は「諸刃の剣」と言い換えられます。投資において投機的な戦略を取る場合、その優位性を理解して取り組むことが大切です。
「諸刃の剣」の読み方
「諸刃の剣」は「もろはのつるぎ」と読みます。「諸」には「多くの」や「両方の」という意味があり、「諸刃の剣」においては「両方の」という意味で使われています。「多くの」という意味では言い換え表現として「諸々」があります。この言葉は「もろもろ」と読み、日常生活においてもある程度の頻度で使われる言葉になります。
「諸刃の剣」の由来・語源
ここでは「諸刃の剣」の由来や語源について紹介します。「諸刃の剣」の言葉の成り立ちから、実際の諸刃の剣の武器としての有用性はどれほどのものだったのかについて深掘りしていきます。由来を知ることで、その言葉の意味やニュアンスをより深く理解できます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
「諸刃の剣」の由来は「両刃の刀」から
「諸刃の剣」は「2つの刃が付いた」という意味です。この剣は攻撃力は2倍になるものの、自分に当たったてしまった場合はけがをする可能性が上がってしまう代物です。つまり、「相手に大きなダメージをあたえる可能性と引き換えに、自分もダメージを追う危険性が増している。」という様子を表した言葉になります。剣の両方に刃がついていることを想像すると、その危なさがうかがい知れます。
本物の「諸刃」はやはり危険?
高い殺傷能力を持っているイメージがある「諸刃の剣」ですが、実際の諸刃の剣の武器としての有用性はどれほどあるのでしょうか。実は、本物の「諸刃の剣」はあまり切れない代物だったといわれています。その原因は製造方法にあったようです。型に流し込んで固めるだけであるため、どちらの面の刃も、ものが切れる代物ではありませんでした。私たちが剣と聞いてイメージする片刃の剣は諸刃の剣の後に生まれたものになります。切れ味を追求するための技術が注ぎ込まれたため、片刃の剣の方がよく切れます。「諸刃の剣」は相手により強いダメージを与えられるというイメージは幻想に過ぎなかったのです。
「諸刃の剣」の類義語・言い替え
「諸刃の剣」の類義語や言い換え表現を紹介します。ここで紹介する言葉は「ハイリスク・ハイリターン」と「一長一短」の2つの言葉です。それぞれの言葉の意味や使われ方について詳しく見ていきましょう。
「ハイリスク・ハイリターン」
「ハイリスク・ハイリターン」という言葉は「高収益を得ることもできるが、失敗したら損失を被る可能性も高い」という意味を持ちます。投資やビジネスシーンにおいてよく使われる言葉です。ボラティリティが大きい銘柄への投資であったり、成長途中の市場への新規参入したりするなどの、先行きが不透明の勝負事に出る際に用いられます。勝っても負けてもその変動幅は大きくなるため、ハイリスク・ハイリターンの勝負はしっかりリスクヘッジが取れていることが大変重要になります。
「一長一短」
「一長一短」とは「よいところもあれば悪いところもある」という意味の言葉です。「全てのものに長所と短所が存在し、完璧なものなど存在しない」というニュアンスを持ちます。「諸刃の剣」を例にとると、「相手へ攻撃力」が長所だとすれば、「自分がけがをする危険性」が短所であるととらえられます。この言葉は人の性格などに使われる場合が多く、危険性やリスクを議論する際は「ハイリスク・ハイリターン」を用いた方がよいでしょう。
「諸刃の剣」の対義語
「諸刃の剣」の対義語について紹介します。ここで紹介する言葉は、「毒にも薬にもならぬ」と「ローリスク・ローリターン」の2つの言葉です。反対の意味の言葉を理解することで、言葉と言葉のニュアンスを相対的に把握できるようになります。このことが、本質的な言葉を理解につながるので対義語についても詳しく見ていきましょう。
「毒にも薬にもならぬ」
「毒にも薬にもならぬ」という言葉は「損にも得にもならない」という意味を持ちます。その由来は「薬」にあります。薬を飲んだとして、副作用も作用もないものはなんの効果も得られません。つまり、「毒にになるような悪いことも無いが、薬になるようなよいこともない」という意味で使われ、「損もないが得をすることもない」というニュアンスを持つ言葉です。 日常生活においてよく使われ、比較的かんたんな言葉に分類されます。
「ローリスク・ローリンターン」
「ローリスク・ローリターン」とは、「損失を被る危険性は低いが、高収益を得ることも少ない」という意味の言葉です。リスクが小さい分リターンも小さいといえます。ビジネスシーンにおいてはリスクとリターンの幅を把握して、リスクヘッジをしっかり取った上で投資や新規事業参入を行っていくのが好ましいやり方だといえます。
「諸刃の剣」を英語でいうと?
「諸刃の剣」の英語表現を紹介します。英語表現においても詳しく理解することで、海外に行った時に役に立つことがあるかもしれません。「諸刃の剣」の英語表現について深掘りしていきましょう。
「double-edged sword」
「double-edged sword」は「諸」が「double」 、「刃」が「edged」、「剣」が「sword」を表していると理解できます。英語圏においても日本語と同様のニュアンスで用いられています。「Dowble」が「two」に言い替えられることもありますが、双方に意味も違いはありません。
「double-edged sword」の例文
「Globalization is a double-edged sword.」で「グローバル化は諸刃の剣だ。」「This new technology can be a two-edged sword」で「この新しい技術は諸刃の剣になる可能性を秘めている。」という意味になります。このように、英語圏においても「諸刃の剣」という言葉は、「ハイリスクハイリターン」と同じニュアンスで使われています。
「諸刃の剣」の使い方と例文集
最後に「諸刃の剣」の使い方や注意点、例文を紹介します。一般的によく用いられている言葉になるので、その使い方や注意点を確実におさえておきましょう。
「諸刃の剣」の使い方
「諸刃の剣」を使うタイミングとして、リスクとリターンの幅が大きいことを忠告するときに使います。効果は非常に大きかったとしても、失敗した時もかなり大きな痛手を負う可能性があることを示唆する言葉として用いられます。「ハイリスク・ハイリターン」という言葉があるように、大きな利益を得るためには大きな損失への覚悟も必要になります。
「諸刃の剣」を使用するときの注意点
似たような表現として「諸刃の刃」という言葉があります。この言葉は「もろはのやいば」と読み、「諸刃の剣」とまったく同じ意味を持ちます。どちらを使っても構いませんが、より一般に浸透しているのは「諸刃の剣」の方です。敢えて「諸刃の刃」を使うことで、周囲に違和感を与えるのであれば、「諸刃の剣」を使う方が無難です。
「諸刃の剣」の例文
最後に、「諸刃の剣」を使った例文を2つ紹介します。
- より強い薬を投与すれば早く良くなる可能性はあるが、副作用が計り知れない。薬の強さを上げるのは諸刃の剣だ。
- お金に困っているからといってボラティリティが大きい銘柄に投資するのは諸刃の剣だ。やめておいた方がよい。
まとめ
「諸刃の剣」は「一方では非常に役立つものの、片方で大きな損害を出す危険性があるもの」を表す言葉です。類義語として最も適切なものは「ハイリスクハイリターン」になります。ビジネスシーンにおいては、リスクとリターンの幅を考慮し比較的安全な投資行動に出ることは重要なスキルになります。