「要相談」の意味とは?
求人票を見ながら「要相談」として雇用条件などがあいまいに書かれていることが多く、結局出たとこ勝負なのか、と感じることがあります。「要相談」と書けば条件をあいまいにできて楽なのか、というとそうではありません。意味を見てみましょう。
相談してください、ということ
「要相談」は「相談」を必「要」とします、の略で、相談をする必要があることを示す表現です。昔は、三行広告と呼ばれる、新聞の求人欄で字数が厳しく制限されるためよく使われた言葉です。現在もタウンペーパーの求人広告や店頭の求人の張り紙などによく見かける表現です。
目上には使えない
この言葉を日常的な会話などで用いることは多くないですね。急ぎのメモなどに、手早く残せるので便利なときもあるかもしれません。しかし、こと目上に対するメモであればこの言葉を使用することは避けなければなりません。この言葉はあくまでも簡略な表現であり、いうまでもなく敬語ではありません。目上に対しては「ご相談いただきたく存じます」や「ご相談を承ります」のように丁寧な言葉で伝えましょう。
「要相談」と間違いやすい言葉
「要相談」とよく似た表現で、微妙に意味の違う言葉があります。3つについて解説します。
「応相談」
「応相談」は「要」が「応」に変わっただけです。つまり「相談」に「応」じます、の意味となります。「要相談」との大きな違いは、相談をしたい主体が違うことです。「要相談」は、求人をする側が、細かい条件などを詰めるために相談を必要としていることを表します。「応相談」は、求職する側が、雇用条件について相談したいと思っている場合にこれに対応してくれることを表します。つまり「応相談」の場合は、相談することなく雇用契約がまとまることがあり得ます。
「別途相談」
「別途相談」は、「別途」の「相談」も受け付けることを表します。「別途」には、別のこと、の意味のほか、別なやり方で、の意味もあります。ですから「別途相談」は、提示した条件以外のことも相談を受け付けます、の意味だけでなく、提示している方法以外にも相談が可能です、の意味も考えられます。一般的には前者の意味で用いられますが、示した求人票以外にも求人がある場合などもあるので確認が必要です。
「相談可」
「相談」が「可」能であることを表しています。「応相談」とほぼ同じ意味になりますが、どうしても相談したいことがあれば、といったニュアンスがあります。特に相談をするつもりはないが、必要であれば聞いてあげられることを表現しているわけです。
「要相談」を使う場合
「要相談」を用いるのは、求人に関する場合が多いです。雇用条件が流動的なことはあまり考えられませんから、「要相談」とするのはそれなりの理由がある場合です。具体的な使用場面を見ていきましょう。
必ず相談してほしいとき
雇用条件を定めるにあたって、求人側が必ず相談をしてほしい場合に用います。
- 配置に関する変更については要相談。
雇用後の配置について、求職者同士で入れ替えが可能な職場において、勝手に入れ替えられると作業管理に影響を及ぼす場合の表現例です。このほかにも、作業シフトなどで作業者間で勝手に交代されては困る場合などにも同様の表記をすることがありますね。
相談して決めたいとき
雇用条件の一部などで、求職者と相談して決めたいことを表現する場合にも使用されます。
- フレックス制につき出退勤時刻については要相談。
勤務時間は固定されているが、出退勤時刻には幅を持たせるような条件の場合、このことに関しては相談のうえで決定することを表しています。求職者側の自由な裁量を認めるわけではなく、あくまでも求人側との合意のうえで決めたい意思を示しているわけです。
相談に応じる姿勢を示したいとき
求人側として要望を受け止める態度を示したいときにも使われることがあります。
- 提示条件以外の週休日の指定については要相談。
週休日の条件は提示されているが、それ以外の曜日を指定してほしいのであれば相談が必要だと言っているわけです。「応相談」や「相談可」としてもよいところですが、それよりは要望を柔軟に受け入れてもらえるニュアンスがあります。
「要相談」の使い方と例文集
「要相談」は、短い略語ながらも、求人する側の意図をこめられる言葉です。求人する側は会社としての柔軟性を示せますし、求職側は自分の条件に寄り添ってくれる姿勢を見て取れます。
「要相談」は求人広告で使う
求人広告は情報をコンパクトに示す必要があります。短い求人広告で詳しい条件をすべて示すのは難しいですし、ポスターにする場合でもできるだけ目立つようにするには情報量はおのずと限られるからです。「要相談」はそうした求人広告で、相談を受ける立場の求人側が簡潔に求職者を受け止める姿勢を示すために用いられました。そのため、この言葉は提示している側のふところの深さも感じさせるニュアンスがあります。友人間でのメールなどで「食事でもどう?お店については要相談」などと記されると、ユーモアを感じさせながらも、いろいろ要望を受け止める度量がある印象を与えますね。
「要相談」事項は履歴書に記載
「要相談」と記された求人を受ける場合を考えてみましょう。「相談を受けてくれるようだから、面接のときに話すのかな?」と特に準備もせずに出向くことはいかがなものでしょうか。勤務時間や休日、福利厚生的な内容で「要相談」と示されている場合は、あらかじめ履歴書に要望を書きこむことが適切です。履歴書の備考欄などに、相談しておきたいことについて記入して提出します。そうすることで、求人側はあらかじめ要望を受け止め対応も考慮して面接などに応じられますし、求職側としてもスムーズに進められる点でメリットがあります。
「要相談」の例文集
「要相談」は求人広告に多く用いられるものではありますが、そのほかにも使用場面はあります。いくつか挙げておきます。
パートさん募集中。シフト、週休日は要相談。
もっとも一般的な求人での用いられ方ですね。「要相談」となっていること以外については提示条件が決まっているはずですから、その点はしっかり確認しておきましょう。
会議で取り上げたいことがあれば要相談ですよ。
日常の会話での使用例です。議題について事前に整理しておく立場からいえば、勝手に議題を提示されるのは困りものですよね。議題としたいことがあれば相談してくださいね、というわけです。無条件で議題とできるなら「要連絡」と示すはずですので、取り上げるかどうかも含めて話し合っておく必要がある意味になりますね。
取引期日は要相談だそうなので、都合のよい日を挙げておいてくれ。
これはその場にいない第三者から、条件付きの話があったことを示している用例です。「相談してほしいということなので」よりは簡潔ですし、ビジネスライクなやり取りになりますね。
「要相談」を英語でいうと?
外国相手のビジネスなどをするとなると、相手側に「要相談」と伝えなければならない場面もあり得ます。英語の表現も覚えておきたいものです。
negotiable
- Delivery date is negotiable.(納入日は要相談です。)
- Commuting allowance is subject to negotiable.(通勤手当は要相談となります。)
negotiate(交渉する)に可能を表す接尾辞~ableを付した「交渉可能」の意味を表す形容詞です。相談できますよ、交渉を受け付けますよ、のような場面にはよく用いられます。慣用句として用いられるsubject to negotiableは、交渉次第の内容であることを表します。
to be discussed
Wholesale price is to be discussed.(卸値は要相談です。)
disucuss(議論する)の受動態を不定詞としたもので「議論されること」の意味を表します。議論の対象となる、つまり相談で決められることを表しているわけです。ビジネスシーンでよく用いられる表現です。
まとめ
日常のビジネスシーンで相談することはよくあることです。そういった場面でも「要相談」のフレーズはリズム感のあるビジネストークを可能にするかもしれません。しかしこの言葉はあくまでも略語であり、決してフォーマルなものではないことを踏まえておく必要があります。気のおけない仲間うちならいざ知らず、あらたまった会議の場などで使うことは慎まなければなりません。「要相談」を使っていいシーンかどうか、常に自分の中では「要相談」なのですね。