燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやの意味や使い方とは?由来や例文、類語・英語を解説

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の意味や使い方とは?由来や例文、類語・英語を解説
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ことわざ「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の意味と使い方を知っていますか?本記事では読み方、どんな場面にふさわしいかなどを解説します。あまり「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」を耳にしない、使ったことがない人はぜひチェックしてください。

目次

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の読み方

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の読み方

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の読み方、使われている表現について説明します。

読み方

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の読み方は、「えんじゃくいずくんぞこうこくのこころざしをしらんや」です。四字熟語で「燕雀鴻鵠(えんじゃくこうこく)」ともいい、同じ意味で使われます。

「いずくんぞ」とは

「安んぞ(いずくんぞ)」は、漢文読み下しの用語「反語」です。断定を強調するため、言いたいことを反対の意味の推量をともなって表します。反語を使った文章の意味は「どうしてそんなことがあるだろうか、いやあるわけがない」です。「あるわけがない」を強調するため、あえて「そんなことがあるだろうか」と反語を使って述べています。「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」なら、「どうして知っているのだろうか、いや知るわけがない」と「知らない」意味を強調しています。「いずくんぞ」は「安んぞ」のほか、「寧んぞ」または「焉んぞ」とも表記します。

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の意味は?

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の意味は?

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の意味、使われている「燕雀」と「鴻鵠」がそれぞれ何を指すかを解説します。

意味

「小人物には大人物の志、考えはわからない」が、「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の意味です。反語を使っているので、「小人物が大人物の志を理解できるのだろうか、いやできるわけがない」と「理解できない、わからない」意味が強調されています。「小人物」は一般の人、「大人物」は志の高い人です。

参照:Weblio辞書「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」

「燕雀」とは

「燕雀」は、「ツバメとスズメ、またはそのような小鳥」です。「小鳥」の意味が転じて、「小人物」や「度量の小さい人」のたとえにも使われます。

「鴻鵠」とは

「鴻鵠」は、「オオトリとクグイ」です。いずれも白鳥やコウノトリ、ツルといった大型の鳥を指します。転じて、「大人物」や「度量の大きな人」のたとえにも使われます。鳥の大小を人物の器の大小にたとえる例はほかにもあり、「大鵬(たいほう)」も「大人物」のたとえです。「大鵬」は中国の想像上の大鳥。「燕雀安んぞ大鵬の志を知らんや」と、「鴻鵠」ではなく「大鵬」を使う場合もあります。全体の意味は同じです。

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の由来・語源

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の由来・語源

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」は、中国から伝わったことわざです。出典と由来を紹介します。

出典は『史記』

紀元前90年代、中国前漢時代の歴史書『史記(しき)』の「陳渉世家(ちんしょうせいか)」の項が「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の出典です。『史記』は中国最初の歴史書で、伝説上の皇帝・黄帝から前漢の武帝まで約2,000年にわたって記されています。著者は前漢の学者・司馬遷(しばせん)です。

由来となったエピソード

中国・秦(しん)の時代に小作人から楚の王にまでなった人物、陳渉(ちんしょう)のエピソードが「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の由来です。中国の陽城(ようじょう)という場所で小作人をしていた陳渉は、あるとき耕作の手を休めると、あぜ道で休憩しながら「もし自分が出世しても、お前たちのことは忘れない」と語りました。それを聞いた仲間たちは、「小作人をしている者が、どうして出世などできるだろうか」と笑って応じました。すると陳渉は「ああ、どうしてツバメやスズメのような小鳥に、オオトリやクグイのようなオオトリの志がわかるだろうか(いや、わからないだろう)」と溜息をついたそうです。このエピソードが「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」となりました。

ちなみに陳渉は、その後「王侯将相寧んぞ種有らんや(おうこうしょうそう いずくんぞ しゅあらんや)」、つまり「指導者に必要なのは血筋や家柄ではない」といって、農民たちとともに反乱を起こしました。一時は楚の王となった陳渉でしたが、結局は秦の討伐軍に倒されてしまいます。天下は取れなかったものの、『史記」を記した司馬遷は陳渉の先駆的な行動を評価し、「陳渉世家」として残しました。

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の使い方

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の使い方

どのような場面が「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」を使うのにふさわしいかを解説します。

はなむけの言葉

転勤や転職する人、進学する人などへの餞(はなむけ)の言葉として使います。その場合は、「高い志、広い視野を持って頑張ってください」や「広い世界へと大きく羽ばたいてください」といった意味合いが「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」に込められています。

励ましやなぐさめの言葉

たとえば目標や努力を上司や同僚に評価してもらえないとき、そのような相手を励ましたりなぐさめたりするためにも使えます。その場合は、「高い志をもつ人は、ときに周囲から理解してもらえないものだよ」や「周囲の理解が得られなくても、自分の志を信じて」といった意味合いが込められています。自分に対して使うと、暗に「自分は大人物だ」と誇示する、または「周りの人間が小人物」だと揶揄しているとも受け取られかねません。自分に対しては使う場面と相手を配慮する必要があります。

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」を使った例文

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」を使った例文

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」を使った例文を挙げます。

使い方・例文
  • 周りはわかってくれなかったが、目標をあきらめたくない。「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」というではないか。
  • 注目の若手起業家の講演を聞いたが、「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」なのか、自分のような凡人には理解できなかった。
  • 独立おめでとうございます。これからも「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の心意気で、わが道をまい進してください。

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の類義語・言い換え

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の類義語・言い換え

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の類語、似た意味のことわざを紹介します。

「鷽鳩大鵬を笑う」

「鷽鳩大鵬を笑う(がくきゅうたいほうをわらう)」の意味は、「つまらない人物は大人物を理解できないものだ」です。「鷽鳩」は「小さいハト」、「大鵬」は「9万里の高さまで舞い上がるといわれる、伝説上の大きな鳥」を指します。「小さなハトが天高く舞う大鳥を笑う」たとえがもとになったことわざです。

「小人の心を以て君子を量る」

「小人の心を以て君子を量る(しょうじんのこころをもってくんしをはかる)」の意味は、「度量の小さな人物が、大人物である君子も自分と同等であろうと推測すること」です。「小人物が、自分の卑しく狭い尺度で大人物を推測する愚かさ」を表しています。

「猫は虎の心を知らず」

「猫は虎の心を知らず(ねこもとらのこころをしらず)」も、「小人物は大人物の心がわからない」意味のことわざです。同じネコ科の動物である「ネコ」と「トラ」は、しばしば器や度量の大小を表すたとえに使われます。

「升を以て石を測る」

「升を以て石を測る(しょうをもってこくをはかる)」は、「小人物の狭い度量では、大人物の心がわからない」意味です。「升」と「石」は容積の単位。「升」は1.8L、「石」は180Lです。「小さなもので大きなものは測れない」たとえを使ったことわざには、「貝殻で海を測る(かいがらでうみをはかる)」と「大海を耳掻きで測る(たいかいをみみかきではかる)」も同様。いずれも「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」と類似のことわざといえます。

対義語は「英雄は英雄を知る」

対義語は「英雄は英雄を知る」

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の対義語は、「英雄は英雄を知る(えいゆうはえいゆうをしる)」です。意味は、「大人物の真価がわかるのは、大人物だけである」

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の英語表現

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の英語表現

「Ask not the sparrow how the eagle soars.」が、「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の英語表現です。訳すと「ワシ(鷲)がどうやって高く舞い上がるのかを、スズメに尋ねるな」。「大人物のことを小人物に尋ねてもわからないので無駄だ」の意味です。疑問形で「How call the sparrow soar with the eagle?」とも表現します。

まとめ

「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」は、「小人物には大人物の志、考えが理解できない」意味のことわざです。送別会などのスピーチではなむけの言葉として、ぜひ使ってみてください。

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