「享受」とはあるものを受け取り、自分のものにすることをいいます。受け取るのはものだけでなく利益や恩恵も含まれ、受け取って楽しむのニュアンスも持っています。「享受」の類義語と対義語、敬語や英語表現もあわせて解説します。
「享受」の意味とは?
「享受(きょうじゅ)」とはあるものを受け取り、自分のものにすることをいいます。また、受け取ったものを味わう、楽しむ意味も持った言葉です。うけいれるやうけるをいう「享」と「受」とを重ねており、「享」が持つ「供えられたものをうける」の意味も含んでいます。「享受」するものは安全性や自由、メリットと恩恵、自然の恵みなどがあります。
参照:Weblio辞書「享受」
「享受」の類義語・言い換え
「享受」の類義語には「ものごとを受け入れること」や「思いのまま楽しむこと」を意味する言葉があります。「享受」とは使い方や細かいニュアンスが異なるので、それぞれの意味を確認しておきましょう。
1.享楽
「享楽」とは自分の思いのまま十分に楽しむこと、快楽にふけることをいいます。「享楽的な人」とは自分の感情や快楽を優先した言動や生き方、価値観を持っている人のことです。欲求や願望を優先しがちで、誘惑に弱い傾向があります。
- 彼の行動は常に享楽的で、プラス思考が強いともいえる。
- 常に楽しみを見つけようとする姿勢を、享楽主義という。
2.甘受
「甘受」とはやむをえず、仕方なく受け入れることをいいます。本来は「受け入れて満足する」とポジティブな意味合いの言葉でしたが、「厳しい条件や好ましくないものごとを、甘んじて受け入れる」のネガティブな意味で多く使われています。
- 困難を甘受しなければ、新しいことにはチャレンジできない。
- やることは気乗りしないが、上司に頼まれては甘受しなければならない。
3.受益
「受益」とは、利益をうけることをいいます。「利益享受」や「享受」と似た意味を持ちますが、受けたものを味わうや楽しむのニュアンスが含まれない点が異なります。
- 公共サービスを受益している私たちは、何らかの負担をすべきである。
- 受益者は、自らが持っている受益権を譲渡できる。
4.謳歌
「謳歌」とは「恵まれている環境や境遇を存分に楽しむ」の意味を持ちます。もともとは声をそろえて歌う様を、そこから転じて仲間を声をそろえて褒め称えることを意味していましたが、現在はこれらの意味で使われることは少ないでしょう。
- 大学時代は友達と方々へ出かけるなどして、学生生活を謳歌していた。
- 定年退職後はボランティアや好きな趣味をして、余生を存分に謳歌している。
「享受」の対義語
「享受」の対義語には、与えることを意味する言葉があります。どのように与えるかのニュアンスは3つそれぞれに違うので、使い方とともに覚えておきましょう。
1.提供
「提供」とは、技能やお金、ものなどを相手に差し出して役立ててもらうことをいいます。また、広告主がテレビ番組のスポンサーとなり、番組を公開することも「提供」といいます。
- このレストランは、おいしい肉料理とワインを提供するので人気がある。
- 来週の会合のための場所を提供した。
2.供与
「供与」とは、物やお金、利益などを相手が得になるように与えることをいいます。「便宜供与」とは特別な計らいをし、物や利益などを提供することです。
- 料金を支払い、ソフトウェアのライセンス供与を受ける。
- 発展途上国にODAを供与し、それらの国々の経済発展に大きく貢献した。
3.供給
「供給」とは販売する品を市場に出すことや、必要に応じてものを提供することをいいます。「供給」するのは物品だけでなく、サービス労働力などの形のないものも含まれます。
- 需要と供給のバランスによって、商品の価格は決まるといわれている。
- 製品の生産者と卸売業者、小売業者は供給者に定義されている。
「享受」の敬語表現
「享受」自体は敬語ではなく、丁寧語は「享受しています」と「享受します」、謙譲語は「享受いたします」と表現します。「享受させていただく」は間違った敬語表現なので、使わないようにしましょう。
丁寧語は「享受しています」と「享受します」
「享受」の丁寧語は「享受しています」と「享受します」です。動作や状態が継続していることをいう補助動詞の「して」と丁寧語の「ます」を付けることで、丁寧な言い回しができます。かしこまった場所では尊敬語や謙譲語を使う必要がありますが、日常会話でならこれらの丁寧表現がふさわしいでしょう。
- 現代の私たちは、情報収集においてインターネットの恩恵を享受しています。
- 事業で成功した彼は社会貢献も十分に行い、長い人生を享受しました。
謙譲語は「享受いたします」
「享受」の謙譲語は「享受いたします」です。「いたす」は「する」の謙譲語で、その後に丁寧語の「ます」も付いているため、へりくだって相手に敬意を示せます。会社の上司に対してなど、敬意を示すべき相手に使うとよいでしょう。
- 謹んで、課長の職を享受いたします。皆さまのご期待に応えられるよう、一層努めてまいります。
- この賞は私個人へでなく、弊社全体の表彰として享受いたします。
「享受させていただく」は間違った敬語表現
「享受させていただく」は使役の助動詞である「させて」と、「もらう」の謙譲語である「いただく」が付いており、一見正しい敬語表現に思えますが実際には間違っています。「させていただく」は相手に許可を得たことを行うことを意味しているため、相手からものを受け取ることをいう「享受」と一緒に使うのは不自然といえます。
「享受」の英語表現
「享受」の英訳は「enjoy」です。「enjoy」には「喜ぶ」や「楽しむ」以外にも、「何かから有益なもの、楽しみを得る」の意味もあり、後者の意味が「享受」にあたります。
- Everyone has a right to enjoy his liberty.(誰にでも自由を享受する権利がある。)
- I will enjoy the beauty of nature.(自然の美しさを享受する。)
「享受」の使い方と例文集
「享受」の使い方を、例文を交えながら紹介します。使い方によりどのような意味を持つのかを知り、実際に使えるようにしておきましょう。
1.享受する
「享受」には「自ら喜んで受け取り、楽しみとする」の意味があります。「自然の恵みを享受する」や「自由を享受する」の場合の「享受する」は、「恩恵を受ける」とも言い換えられます。
- 私は景色のよい場所に旅行に出かけ、自然の美しさを享受した。
- チームはファンからの声援と支持を享受している。
2.享受させる
「享受させる」は「楽しませる、受け取らせる」とともに「与える」のニュアンスで使われることがあります。サービスの案内や利用の手引き、会則などで目にすることが多い表現です。
- 利用者に、保険に関するサービスを円滑に享受させることを目的とする。
- 子どもたちには、健康的な食事を享受させるべきだろう。
3.利便性を享受する
「利便性を享受する」とは、ものやサービスを自分のものにし、利用したり活用したりすることをいいます。似た表現に「制度を享受する」がありますが、「制度を取得し、活用する」の意味になります。
- ロケーションフリーの利便性は享受しつつ、セキュリティは確保することが大切だ。
- 高画質のテレビ放送と、どこでも視聴できるネット配信とを同時に利用して、視聴の利便性を享受する。
4.利益を享受する
「利益を享受する」とは、利益を受け取ることをいいます。利益とはものやお金だけでなく、受け取った人がメリットと感じるような精神的なものを含みます。
- 当社は事業の成果に応じて毎年昇給するので、ほとんどの社員が利益を享受している。
- 何も与えるものがない人が、利益を享受することはできない。
まとめ
「享受」とは受け取って自分のものにすること、受け取ったものを楽しむことを意味する言葉です。文脈によっては「利用、活用する」意味でも使いますので、使い方を知っておきましょう。「享受」は堅苦しい語に思えますが敬語ではないので、「享受しています」や「享受いたします」などの敬語表現も知っておくと、ビジネスシーンで戸惑わずに済むでしょう。