「鳴り物入りの新人」などと使う、「鳴り物入り」を紹介します。「鳴り物入り」は使い方によって失礼にあたることを知っていますか?本記事では意味や類語、ふさわしい場面と使い方を解説します。例文を読み、「鳴り物入り」を使うときの参考にしてください。
「鳴り物入り」の読み方
「鳴り物入り」は「なりものいり」と読みます。「鳴物入り」とも表記し、読み方と意味は「鳴り物入り」と同じです。
「鳴り物入り」の意味は2つ
「鳴り物入り」の意味は主に2つあります。それぞれ説明します。
「にぎやかにはやし立てる」
「鳴り物を使って、にぎやかにはやし立てる」が「鳴り物入り」の意味です。盛大に応援する、にぎにぎしく盛り上げる様子を表します。
「大げさに宣伝する」
「鳴り物入り」には、「大げさに宣伝する」意味もあります。宣伝するだけでなく、「大げさに騒ぎ立てる」の意味でも使います。
「鳴り物入り」の語源・由来
「鳴り物入り」の語源、そもそも「鳴り物」とは何かを解説します。
歌舞伎にちなんだ言葉
「鳴り物入り」は、伝統芸能の歌舞伎にちなんだ慣用表現です。歌舞伎では鳴り物を使って、舞台をにぎやかに演出します。そんな演出の様子から「鳴り物入り」というようになりました。「鳴り物」は落語や演劇でも使います。また、現代ではスポーツの応援にも鳴り物が欠かせません。
具体的に「鳴り物」とは?
歌舞伎で使われる「鳴り物」を具体的に挙げると、「三味線以外の楽器全般とその演奏」です。太鼓(たいこ)・大鼓(おおつづみ、おおかわ)・小鼓(こつづみ)などは、「四拍子(しびょうし)」といわれる鳴り物です。また、能管(のうかん)や篠笛(しのぶえ)といった笛も鳴り物に含まれます。歌舞伎では、これらの楽器を使って「出囃子(でばやし)」や「下座音楽(げざおんがく)」などを演奏します。
「鳴り物入り」の使い方
「鳴り物入り」のよく使う言い回し、含まれるニュアンスについて説明します。
「鳴り物入りの」
「鳴り物入りのルーキー」や「鳴り物入りの新商品」など、「鳴り物入りの」という言い回しで使います。「注目の」や「期待の」といったニュアンスが含まれます。
「鳴り物入りで」
「鳴り物入りで登場」や「鳴り物入りで就任した」など、「鳴り物入りで」という言い回しもよく使います。「華々しく」や「大々的に」といったニュアンスが含まれます。
皮肉っぽいニュアンスに注意!
「鳴り物入り」の意味「大げさな宣伝」には、皮肉っぽいニュアンスが含まれている点に注意が必要です。「大げさ」は、「本来持っている実力以上」といえます。そのため、「本当は大した実力ではないかもしれないのに」と揶揄する意味合いで受け取られかねません。目上の方、あまり親しくない相手には「鳴り物入り」を使わない方が無難です。
「鳴り物入り」を使った例文
「鳴り物入り」を使った例文を挙げます。
- サッカー場は、太鼓などを使った鳴り物入りの応援で、試合前から大いに盛り上がっていた。
- 異業種から鳴り物入りで就任した新社長だったが、会社の業績はパッとしなかった。
- 鳴り物入りでデビューしたアイドルグループは、いまやどのTV番組からも引っ張りだこだ。
- 社運をかけた鳴り物入りのイベントは、集客数がほとんど伸びずに不調のまま終了した。
- 鳴り物入りで上場を果たしたA社は、史上最高値の株価を記録した。
「鳴り物入り」の類義語・言い換え表現
「鳴り物入り」の類語、言い換えられる表現を紹介します。いずれも「盛り上げる」や「にぎやか」、あるいは「大げさな」の意味を表す言葉です。
「大々的」
「大々的(だいだいてき)」は、「ものごとを大がかりにおこなう様子」を表します。「大々的に発表する」や「大々的に取り上げる」などの言い回しで使われます。「大げさにおこなう」あるいは「盛大に」の意味が、「鳴り物入り」と共通です。「大々的」を使った例文を挙げます。
- 新作映画はキャスト総出で大々的にPRしたものの、興行収入は伸び悩んでいた。
- 大々的な報道がおこなわれた成果か、疑惑の政治家は世論によって失脚に追い込まれた。
「仰々しい」
「仰々しい(ぎょうぎょうしい)」は、「大げさ」の意味です。「仰々しい挨拶」や「仰々しく飾る」などの言い回しで使います。「必要以上に」と揶揄する、ネガティブなニュアンスを含み、「鳴り物入り」と似た表現です。「仰々しい」の表記は近世以降に使われ、室町時代には「業業」や「凝凝」、または「希有希有」などの表記だったと伝わっています。「仰々しい」を使った例文を挙げます。
- 「慇懃無礼」ともいいますし、仰々しい態度はかえってお客様に失礼になるかもしれませんね。
- 仰々しいディスプレイのわりには、いまひとつ買い手に訴えかけるものがない。
「大仰な」
「大仰(おおぎょうな)」は、「大げさな、誇大な」または「規模や計画が巨大なこと」を表します。「大げさな」の意味と「必要以上に」のニュアンスが、「鳴り物入り」と同じです。「仰々しい」と同じような場面で使われます。「大仰」を使った例文を挙げます。
- 小さな問題を、そんな大仰に騒ぎ立てるのはやめてください。
- 社内のささやかなイベントなのに、そこまで大仰な準備チームを作る必要があるのだろうか。
「華々しい」
「華々しい(はなばなしい)」の意味は、「人目をひいて見事」または「はなやかな様子」です。「華華しい」や「花花しい」とも表記します。「鳴り物入り」と違い、「大げさな宣伝」や「大げさに盛り上げる」ニュアンスがありません。「華々しくデビューした」は、皮肉ではなく「華やかにデビューした」と文字どおりの意味です。「華々しい」を使った例文を挙げます。
- 彼女の肝入りでスタートしたプロジェクトは、華々しい結果を出して無事に終了した。
- 華々しいイメージばかり先行する業界だが、その裏には地味な努力と忍耐がある。
「喧伝する」
「喧伝する(けんでんする)」の意味は、「盛んに言いはやし、広く世間に知らせること」です。「言いはやして世間に知らせる」点が、「大げさに宣伝する」意味の「鳴り物入り」と共通しています。「喧伝」は宣伝に限らず、情報やうわさなどを言いふらすニュアンスも含む表現です。「喧伝する」を使った例文を挙げます。
- 前代未聞の政界スキャンダルは、世に広く喧伝された。
- ダイエット効果抜群だと喧伝されたサプリメントだったが、科学的根拠に乏しいと言わざるを得ない。
「にぎにぎしい」
「にぎにぎしい」は「賑々しい」とも表記し、「非常ににぎやかな様子」をあらわします。「鳴り物入り」の、「にぎやかにはやし立てる」意味と共通です。「にぎにぎしい」を使った例文を挙げます。
- デパートの新装開店イベントに地元出身のタレントも登場し、にぎにぎしくオープンした。
- 子どもや孫たちが一堂に会し、にぎにぎしいゴールデンウイークだった。
「鳴り物入り」の対義語
「鳴り物入り」の対義語を紹介します。いずれも「鳴り物入り」とは反対の、「静か」や「目立たない」意味の言葉です。
「こぢんまり」
「こぢんまり」は「小ぢんまり」、あるいは「こじんまり」とも表記します。意味は「小さいなりにバランスよくまとまり、落ち着きがある様子」です。ささやかな、小さなという意味ですが、それをみすぼらしいというネガティブなニュアンスはありません。「小さいなりに、とてもよい」というニュアンスで使います。「小規模で落ち着きがある」意味は、「鳴り物入り」と反対です。「こぢんまり」を使った例文を挙げます。
- 近所のカフェはこぢんまりとしていてレトロ喫茶の趣があり、読書をするのに最適だ。
- このご時世、これ見よがしに派手な会社より、こぢんまりとアットホームな会社に入りたいと思う学生も多いのではないか。
「控え目」
「控え目(ひかえめ)」は、「態度や言動が遠慮がちな様子」または「程度や量を抑えめ、少なめにすること」を表します。「大げさな」または「にぎやかに」といった「鳴り物入り」とは反対の意味です。「控え目」を使った例文を挙げます。
- 控え目にいって、うちの部署に転職してきた彼はすでに社内一の凄腕プログラマーだ。
- もらってきた保護猫が控え目に過ごしていたのは最初の3日だけだった。いまでは我が物顔で家のなかを闊歩している。
「ひっそり」
「ひっそり」の意味は、「声や物音がせず、静かな様子」または「目立たないよう、静かにしていること」です。「静か」で「目立たない」意味が「鳴り物入り」と共通しています。「ひっそり」を使った例文を挙げます。
- いつの間にか裏路地にひっそりオープンしていたバーだったが、口コミですぐに常連客がついたようだ。
- ひっそりと情報を集めていたようですが、あなたの動きはみんな気づいていますよ。
「鳴り物入り」の英語表現
「with a fanfare」が「鳴り物入り」の英語表現です。「鳴り物を使って盛り上げる」と「大げさに宣伝する」の両方に使えます。「大げさに宣伝する」の場合は「with a great deal of fanfare」ともいいます。
まとめ
「鳴り物入り」は、「鳴り物を使って盛り上げる」や「大げさに宣伝する」意味の慣用表現です。「本来の実力は別として」や「大げさ」などネガティブなニュアンスを含むため、使う相手と場面には注意してくださいね。