「貼付(ちょうふ・てんぷ)」とは紙製のものをのりで貼り付けること、湿布薬などをつけることを意味します。書類に補足を添える「添付」や、送り仮名を入れた「貼り付け」との違い、類義語と英語表現についても紹介します。
「貼付」の読み方
「貼付」は「ちょうふ」または「てんぷ」と読みます。本来の読み方は「ちょうふ」ですが、誤読から定着した慣用読みの「てんぷ」を使っても間違いではありません。パソコンでは「ちょうふ」と「てんぷ」のどちらでも問題なく変換できます。
「貼付」の意味とは?
「貼付」とは、紙状のものを貼り付けることをいいます。パッチ剤やシップなどの紙状の薬を貼ることも、「貼付」といいます。
意味1.のりなどで貼り付ける
「貼付」の1つ目の意味は、のりなどで貼り付けることです。切り抜きや写真、メモなどの紙状のものをのりやテープ、シールなどでしっかりと貼り付けるときに「貼付」を使います。
意味2.湿布などを貼り付ける
「貼付」の2つ目の意味は、薬を貼り付けることです。パッチ剤や湿布薬など、紙状のものを皮膚に貼るときに使える言葉ですが、クリームや軟膏をつけるときには「塗布(とふ)」を使いましょう。
参照:Weblio辞書「貼付」
「貼付」の類義語・言い換え
「貼付」の類義語、言い換え表現にはくっつくことを意味する言葉があります。どのように、何がつくかなどの細かいニュアンスは異なるので、それぞれの意味をチェックしておきましょう。
1.粘着
「粘着」とは、ねばりけがあるものが別のものにつくことをいいます。2つのものが粘着性のものを介して貼り付く点では「貼付」と「粘着」は同じ意味を持ちますが、ビジネスシーンで書類に使うのは「貼付」がふさわしいでしょう。「粘着」は「貼付」よりも意味が広く、日常生活では耳にする機会は多くあります。
- ポスターを剥がしたあと、壁にテープの粘着跡が残ってしまった。
- 靴の裏がベタベタするので見てみたら、知らないうちにガムが粘着していた。
2.接着
「接着(せっちゃく)」とは、二つのものがぴったりくっつくことをいいます。二つのものがつく点では「貼付」と「接着」は同じ意味ですが、粘着剤を使うことをとくにいう場合に「接着」を使います。
- 糊を使って、紙に色紙を接着した。
- 花瓶の割れたカケラを、粘着剤で接着して補修した。
3.付着
「付着(ふちゃく)」とは、あるものが別のものにくっつくことをいいます。「付着」は紙状でないものがくっつくときにも使える点が、「貼付」とは異なります。そして大きなものに小さなものがくっついているニュアンスも持っている言葉です。
- 工事現場に行ったら、服に塗料を付着させてしまった。
- 豪雪地帯には、氷雪を付着させない信号機が設置されている。
4.固着
「固着(こちゃく)」とは、ものが別のものに固くくっつくことをいいます。「貼付」とは違い、「固く」のニュアンスが強い言葉です。
- 粘着力の強いガムテープが、棚に固着してしまった。
- 引き上げられた船の底に、エボシ貝がたくさん固着していた。
「貼付」の対義語は「剥離」
「貼付」の対義語は「剥離」です。「剥がれる」と「離れる」とがあわさった言葉で、「貼る」と「くっつく」とをあわせた「貼付」の反対の意味を持っています。本来くっついていたものが剥がれる、意図して剥がすことをいいます。
- 建物の外装が剥離してしまい、見映えが悪くなっている。
- 貼り付けていたシートが熱によって剥離した。
「貼付」の類義語との違い
「貼付」の類義語との違いを紹介します。「添付」は貼り付けるのではなく添えることをいい、「貼付」とは違う意味を持っている言葉です。「はりつけ」と読むときは「貼付」ではなく、「貼り付け」と表記しましょう。
「貼付」と「添付」との違い
「添付」とは、書類などを補足する別のものを添えることをいいます。ほかの人に書類とともにメモ書きを渡すとき、書類にメモをテープなどで貼り付けるときは「貼付」を、メモをクリップで留めたり、書類とともに封筒に入れたりするときは「添付」を使いましょう。また、電子メールでファイルを送信するときは「メールにファイルデータを貼付する」ではなく、「メールにファイルデータを添付する」とします。
- 資料は図面を添付してから〇〇さんに渡してください。
- 原稿データの添付ファイルを送信しましたので、ご確認いただけますと幸いです。
「貼付」と「貼り付け」との違い
「はりつけ」と読むときは「貼付」ではなく、送り仮名を入れて「貼り付け」と書きます。2つの言葉の意味に違いはありませんが、「貼り付け」の方が柔らかい表現のため、使われるシーンは多いでしょう。
- ファイルにラベルを貼り付け、すぐに目的の資料が見つかるようにした。
- スチール製の棚に、マグネットでポスターを貼り付けた。
「貼付」を英語でいうと?
「貼付」の英訳には「paste」と「apply」とがあります。のりなどで貼り付けるときは「paste」、湿布薬などを貼り付けるときは「apply」を使いましょう。
1.paste
「paste」とは高い粘性と流動性のあるペースト状の物質のことで、のり(糊)のこともいいます。また、動詞形で使うと「(紙などに)のりで貼る」の意味なので「貼付」の英訳として適しています。「paste 〜 on a wall」で、「壁に〜を貼付する」と使います。
- paste the sign on the wall.(壁に掲示物を貼付してください。)
- to paste something to the binding edge of paper(台紙にものを貼付して固定する)
2.apply
「apply」には「つける」や「(〜に)当てる」、「塗る」などの意味があり、「薬を貼付する」の英訳に使える単語です。「to apply a medicine」は「薬を貼付する」、「to apply a wet compress to〜」で「(患部)〜に湿布を貼付する」などと使います。
「貼付」の使い方と例文集
交通と医療分野では、「貼付」を使った言葉が使われています。ビジネスシーンでも「貼付」をスムーズに使えるよう、例文で確認しておきましょう。
交通分野の「貼付」の使い方
道路に直接貼り付ける標示を「貼付式路面表示材」といいます。道路に引かれている黄色や白色の線や「止まれ」などの文字、絵やピクトグラムなどのバリエーションがあり、ドライバーに注意喚起する目的で用いられています。
・貼付式路面標示材の中には、トリックアートの錯視効果によりドライバーにより強力に注意喚起できるものがある。
医療分野の「貼付」の使い方
「貼付剤」とは、治療のために皮膚に貼り付ける薬のことをいいます。飲み薬よりも内臓への負担が軽く、万が一副作用が出ても剥がすだけで治療を中止できるメリットがあります。
- パッチ(小型の薄いシール状の貼付剤)
- ブラスター(膏体を支持体に塗ってあり、ポリエステルフィルムで被覆したもの)
- パップ(不織布に水分と有効成分とが含まれる軟膏を塗布したもの)
- テープ(伸縮性のあるニット素材などに、有効成分や粘着剤などを塗布したもの)
「貼付」の例文
「貼付」を使った例文を紹介します。
- 資格試験の受験票に証明写真を貼付して完成させた。
- 社内の掲示板に、標語のポスターを貼付してください。
- 月間売上のグラフは別紙で添付でなく、資料に直接貼付するように指示された。
- 源泉徴収票などの必要書類を台紙に貼付し、青色申告を行った。
- 封筒に料金分の切手を貼付したのを確認し、ポストに投函した。
- 病院でもらった湿布薬を貼付したら、だんだんと痛みが和らいできた。
- 治療にどのタイプの貼付剤を使うかは、患者のライフスタイルや好みも考慮すべきである。
まとめ
「貼付」とは、紙状のものを貼り付けることをいいます。「粘着」や「接着」など、類義語との違いを理解し、正しく使いましょう。補足するための何かを添えることをいう「添付」と「貼付」との使い分けにも気をつけます。「貼付」は「ちょうふ」または「てんぷ」と読み、「はりつけ」と読むときは「貼り付け」と書くことも覚えておきましょう。