「彷彿とさせる」とは「ある物事や人などに遭遇した場合に、それが以前に経験した物事などがあたかもそこに現れたかのように思われるほど酷似している様」を表すことばです。
日常生活において比較的よく使われることばですが、「彷彿」という特殊な漢字を使うため、ことばの持つ意味をしっかりと理解した上で使っていないことも考えられます。ことばの意味と使い方に加え同義語や英語表現を紹介していきます。
「彷彿とさせる」の意味
「彷彿とさせる」とは「ある物事や人などに遭遇した場合に、それが以前に経験した物事などがあたかもそこに現れたかのように思われるほど酷似している様」を表すことばです。
「その男の子を初めて見たとき、昔の彼の姿を彷彿とさせた。」は「幼い男の子があまりに昔の彼の姿に似ていて、あたかも昔の彼がそこに現れたかのような錯覚に陥るほどだった。」という意味として使われます。
「彷彿」の意味
「彷彿」には3種類の意味があります。以下で解説していきます。
「よく似ている」
1つ目の意味は「よく似ていることや似ている様子」を表します。
彼女の顔つきは、彼女の母親を彷彿とさせる。
「彼女の顔つきを見たときに母親の顔ととても似ていた。」様子を表しています。
「眼前に現れる」
2つ目は「ありありと眼前に現れる、はっきりと脳裏に浮かぶさま」の意味を表します。
その吹奏楽の演奏は、高校時代の吹奏楽部の演奏を彷彿とさせる。
「今聞いている演奏が、目をつぶると高校時代の吹奏楽部の演奏が眼前に現れるようである。」ことを表現しています。
「おぼろである」
3つ目の意味は「おぼろであること」を表します。
病み上がりで彼の意識は未だ彷彿としていた。
「病気で長い間寝ていて、目が覚めたものの未だ意識はもうろうとしていた。」様子を表しています。
以上の通り「彷彿」には3つの意味がありますが「おぼろであること」の意味で使われることは一般的ではなく、多くの場合「よく似ている」「ありありと眼前に現れる」という意味で使われることが大半です。
その結果、「彷彿とさせる」は「ある物事や人などに遭遇した場合に、それが以前に経験した物事や人があたかもそこに現れたかのように思われるほど酷似している様」として使われています。
「彷彿とさせる」の使い方
「彷彿とさせる」と「彷彿させる」の表現方法についての解説を行うとともに「彷彿とさせる」の使用例をいくつか紹介していきましょう。
「彷彿とさせる」と「彷彿させる」
「彷彿とさせる」と「彷彿させる」は、どちらが正しい表現方法なのでしょうか。結論から申し上げますと双方ともに正解です。もともとは「彷彿とさせる」であったのが、ある時「と」を省略して「彷彿させる」と使われるようにもなり、現状では双方の使い方が併存しているとの説もありますが実態は不明です。
使用例1.と2.を比較すると使用例2.の「彷彿させる」の方が直接的な表現であることがわかりますが、使用例1.でも同様の意味を表現できます。双方ともに「友人が話してくれた学生時代の話は、我々2人の共通する昔の思い出が眼前によみがえってくるようであった。」の意味です。
- 友人の話を聞いていると、学生時代の思い出を彷彿とさせた。
- 友人の話を聞いていると、学生時代の思い出を彷彿させた。
「彷彿とさせる」の使用例
「彷彿とさせる」を使った例文とその意味を解説していきましょう。
友人が描いた絵はかつての我々のふるさとの風景を彷彿とさせた。
「友人が描いた絵を見ていると私たちのかつてのふるさとの風景が目をつぶると眼前に現れてくるようだ。」という意味です。
彼のプレゼンはかつての先輩のそれを彷彿とさせた。
「彼のプレゼンを聞いているとかつての先輩の姿ととても似ていた。」という意味です。
江戸時代のたたずまいを彷彿とさせる数々の建物が再現された。
「そこには江戸時代の風景が眼前に現れてくるような建物が再現された。」という意味です。
昔の写真を見ていると当時の楽しい思い出を彷彿とさせた。
「昔撮影した写真を見ていると、当時の楽しかった思い出が眼前に現れてくるようであった。」ことを意味しています。
彼女の仕事に対する姿勢は、昨年退職した父親を彷彿とさせた。
「彼女の仕事ぶりを見ていると、昨年、退職した彼女の父親の姿ととてもよく似ていた。」という意味です。
「彷彿とさせる」の同義語・言い換え
「彷彿とさせる」と同じ意味の「想起させる」「連想させる」「思い出させる」「思い起こさせる」についての意味を説明し、使用例を含め解説していきましょう。
「想起させる」
「想起」とは「過去に起こったことなどが思い起こされること」を言います。
- 小学校の校庭に立つと、昔仲間と一緒に走ったことを想起させた。
- 彼と仕事の話をしていると、何故か学生時代に真剣に議論していた風景を想起させた。
- 友人が描いた絵はかつての我々のふるさとの風景が想起された。
- 彼のプレゼンはかつての先輩のそれを想起させた。
「連想させる」
「想起させる」が単純に「思い起こす」のに対して、「連想」は「ある事柄からそれと関連あることを思い浮かべること」を言います。
- 小学校の校庭に立つと、昔仲間と一緒に走ったことを連想させた。
- 彼と仕事の話をしていると、何故か学生時代に真剣に議論していた風景を連想させた。
- 友人が描いた絵はかつての我々のふるさとの風景が連想された。
- 彼のプレゼンはかつての先輩のそれを連想させた。
「思い出される」
「想起させる」と同様の意味で「思い出される」は「忘れていた事を思い出して脳裏に浮かぶこと」を言います。
- 小学校の校庭に立つと、昔仲間と一緒に走ったことが思い出された。
- 彼と仕事の話をしていると、何故か学生時代に真剣に議論していた風景が思い出された。
- 友人が描いた絵はかつての我々のふるさとの風景が思い出された。
- 彼のプレゼンはかつての先輩のそれが思い出された。
「思い起こさせる」
「思い起こさせる」も「想起させる」「思い出させる」と同様の意味で「過去のことを思い出すこと」を言います。
- 小学校の校庭に立つと、昔仲間と一緒に走ったことを思い起こさせた。
- 彼と仕事の話をしていると、何故か学生時代に真剣に議論していた風景を思い起こさせた。
- 友人が描いた絵はかつての我々のふるさとの風景が思い起こさせた。
- 彼のプレゼンはかつての先輩のそれを思い起こさせた。
「彷彿とさせる」の英語表現
「彷彿とさせる」と同様の意味の英語表現「be reminiscent of」「be associated with」「remind」について解説するとともに使用例を紹介します。
「be reminiscent of」
「be reminiscent of」は「~を彷彿とさせる」の意味で使われます。
The pictures which displayed were reminiscent of ancient times.(そこに展示されていた写真は古代を彷彿とさせた。)
「be associated with」
「be associated with」は「~を連想させる」の意味で使われます。
I was associated of undergraduate days which we discuss seriously when we talked about the business. (彼と仕事の話をしていると、学生時代に真剣に議論していた日々を連想させた。)
「remind」
「remind」は「想起させる」の意味で使われます。
I reminded that we ran with colleague previous days, when I stayed the elementary school ground.(小学校の校庭に立つと昔、仲間と一緒に走ったことを想起させた。)
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は「彷彿とさせる」の使い方について解説しました。
「彷彿とさせる」は「ある物事に出会ったとき以前に経験したことなどがそこに現れたかのように思われるさま」を表します。「彷彿とさせる」の使い方や同じような意味のことばも覚えて、実際の会話の中で活用してみてください。
最後に「彷彿とさせる」のまとめです。
- 「彷彿とさせる」とは「ある物事や人などに遭遇した場合に、それが以前に経験した物事などがあたかもそこに現れたかのように思われるほど酷似している様」を表すことばです。
- 「彷彿」には「よく似ている」「眼前に現れる」「おぼろである」という意味があります。
- 「彷彿とさせる」と「彷彿させる」は、どちらもに正しい表現です。
- 「彷彿とさせる」の類語には「想起させる」「連想させる」「思い出させる」「思い起こさせる」があります。
- 「彷彿とさせる」と同様の意味の英語表現は「be reminiscent of」「be associated with」「remind」です。