「おられる」という表現は聞いたことはありますか?この言葉はビジネスシーンや日常生活においてもよく使われる言葉です。今回は「おられる」の意味や使い方、由来、言い換え表現に加え、ビジネスシーンにおけるメールでの活用法についても紹介します。
「おられる」の意味とは?
「おられる」という言葉の意味について解説します。日常生活やビジネスシーンにおいても非常によく用いられる言葉になるため、その意味やニュアンスは正確に把握しておくとよいでしょう。
「いる」の尊敬語
「おられる」という表現は「いる」の尊敬語にあたる言葉になります。「いる」は存在を意味する言葉であり、 ビジネスシーンのみならず日常生活においてもよく使われる言葉になります。また、もうひとつの意味としては行動や状態を表現するときもあります。例えば、「今は外出しておられる」や「元気でおられますか」というように、目上の人の行動や状態を表現するタイミングで用いるのに便利な言葉になります。似たような表現として「いられる」という言葉も使われていますが、厳密には誤った表現になるので使わないようにしましょう。
「おられる」は二重敬語
「おられる」という言葉は実は二重敬語にあたります。「おられる」を分解すると「おる」と「られる」になり、「おる」は尊敬語は謙譲語にあたり、「られる」は尊敬語にあたります。こういった表現は日本語としては文法的な誤りとされ、使わないようにするのが原則です。しかしながらこのおられるという言葉は、日常会話やビジネスシーンにあまりにも深く浸透してしまった言葉になります。そのため今更「おられる」は誤用であるため、使わない方がよいという考え方は現実的ではありません。そのような間違いを指摘されることもほぼないため、「おられる」は誤用でありながらも使っても問題ない言葉になります。
「おられる」の由来・語源
「おられる」という表現は西日本の方言に近い言い回しになります。そのため、関東の人が「おられる」という表現を使うことはあまりありません。仮に関東方面で「おられる」という表現を用いた場合、一昔前の印象を与えてしまうことがあり、積極的には用いられていないのが現状です。一方、関西方面においては日常的に使われている表現になります。
「おられる」の類義語・言い替え
「おられる」という言葉の類語や言い換え表現について紹介します。近い意味の言葉を把握することで、ボキャブラリーを増やすことにつながります。
「おいでになる」
「おいでになる」という表現は「来る」や「行く」、「いる」という言葉の尊敬語に値します。この言葉の由来は古語にあります。古語に「出づ」という言葉があり、それに尊敬を表す「お」や「になる」が付随し「おいでになる」という表現が成り立っています。ビジネスシーンで用いられることもありますが、高級旅館やホテルといったようなお客様をおもてなしする場面においても相性がよい表現の仕方になります。
「いらっしゃる」
「いらっしゃる」という言葉は「居る」や「ある」「行く」の尊敬語にあたります。使うタイミングとしては「おられる」と同じで、「いらっしゃる」の方が文法的にも誤りなく、地域による偏りもないので「おられる」よりも使いやすい言葉になります。そのため「おられる」という表現に違和感を覚える人は「いらっしゃる」を積極的に使うとよいでしょう。語尾に「ます」をつけることで「いらっしゃいます」となり、入店したときにおなじみの「いらっしゃいませ」もこの「いらっしゃる」という言葉から派生したものになります。
「おられる」「おります」「いらっしゃる」の違い
ここでは「おられる」「おります」「いらっしゃる」の3つの言葉の違いについて紹介します。基本的にはよく似た意味の言葉になりますが、それぞれの使われるタイミングについて詳しく見ていきましょう。
「おられる」を使うタイミング
「おられる」という言葉を使うタイミングとして、「いらっしゃる」では回りくどい言い方になってしまうときなどに用いられます。例えば「おっしゃっていらっしゃった」という表現は文法的には正しいですが、促音が多くあまりにも冗長であるという印象を与えかねません。そのような時は「おっしゃっておられる」というように、「いらっしゃる」と同じ意味でありながらも冗長にならずわかりやすく内容を伝えられます。このように、二重敬語で文法的な誤っている「おられる」という表現も、こういった場面で代替表現として役に立ちます。
「おります」を使うタイミング
「おります」という表現は謙譲表現にあたります。意味合いとしては「居る」を表し、自分自身はもちろんのこと身内の言葉を表現するときにも「おります」という表現は使われます。 「おります」という言葉は敬語であるため、しばしば目上の人に使われていることがありますが、その使い方は誤りになります。「部長は会議室におります。」は厳密には誤りで正しくは「部長は会議室にいらっしゃいます。」や「部長は会議室におられます。」となります。こういった微妙な使い分けもビジネスシーンにおいては礼節を守る上で大切になるので、使い方をしっかりと把握しておきましょう。
「いらっしゃる」を使うタイミング
「いらっしゃる」とは「来る」という意味の尊敬語で、ビジネスシーンにおいては目上の人や取引先に対して使われる表現になります。「おられますか」と表現することも可能ですが、どちらかというと「いらっしゃいますか」と表現する方が一般的になります。また目上の人に来るように促すときは、「いらしてください」という表現が役に立ちます。このようにさまざまな敬語表現を理解しておくことで、その時の状況に合わせた適切な表現方法を選択できるようになります。
「おられる」についての解釈
「おられる」という言葉の解釈については関東と関西で分かれる部分があります。関東方面では「おる」と「られる」の二重敬語であるため、 なんとなく違和感を覚える人がいるのも事実です。そこで敬語についての厳密な議論に落とし込むのではなく、「おられる」という表現は補助動詞であると解釈する考え方もあります。「おられる」を尊敬のニュアンスをもつ補助動詞であるとした場合、「おられる」は文法的に問題ない表現になります。いずれにしても、言葉を使う上では文法的な正しさも大切ですが、一般的に浸透しているかどうかも大切な要素になります。
「おられる」のビジネスメールでの活用例
「おられる」という言葉のビジネスメールにおける活用例を紹介します。テキストベースのやり取りにおいても、よく使われる表現であるためしっかりおさえておきましょう。
その場にいない人の発言であることを示すとき
「あの人が○○と言っていた。」 ことを伝えたいときも「おられる」という表現は重宝します。この使い方は「いらっしゃった」と置き換え可能です。例えば「部長はあのプロジェクトは中止だと言っておられた。」と「部長はあのプロジェクトは中止だと言っていらっしゃった。」は同じ意味の文になります。とはいえ、「言っていらっしゃった」という表現は周りくどい印象を与えるため、「言っておられた」という表現の方が自然に聞こえるでしょう。このように伝聞調の表現においても「おられる」という表現は使われることを覚えておきましょう。
相手の存在や状況を確認するとき
「○○さんはいますか?」という意味を伝えたいときも「おられる」という言葉は使われます。例えば、相手の存在や状況を確認したい場合、 「○○さんはおられますか?」「○○さんは元気にしておられますか?」というような使い方ができます。この言葉も「いらっしゃいますか」という表現で代用することが可能です。「おられる」という言葉にはさまざまな使い方があることを覚えておきましょう。
「おられる」の使い方と例文集
最後に「おられる」という言葉の使い方や例文について紹介します。使い方や注意点をしっかり把握しておくことで、ビジネスシーンにおいても自信を持ってコミュニケーションをとれるようになります。
「おられる」の使い方
「おられる」には代表的な使われ方が3つあります。1つ目は相手の存在を確認するとき。2つ目は相手の状況を確認するとき。3つ目は第三者から聞いたことを伝えるとき。になります。それぞれの使い方については後ほど例文にて紹介します。いずれにしてもこれら3つの用法は全て補助動詞であると考えると統一的な理解ができます。「おられる」の解釈として「おる」と「られる」の二重敬語であるため誤りであるという考え方もできますが、補助動詞であるとひとくくりに考えることで、「おられる」という表現に正当性が出てきます。
「おられる」を使用するときの注意点
「おられる」の誤用としてよくあるのが、尊敬語なのか謙譲語なのかを混同して使われていることが挙げられます。例えば他部署に対して自分の部署の人間の所在を電話で尋ねる時に「○○はおられますか?」と表現するのは誤りになります。なぜなら、自部署の人間に対して尊敬語を使っていることになるからです。その場合、発言者は「おられるを」謙譲語として使ったのだと考えられますが、このような尊敬語と謙譲語の勘違いは意図していなくても失礼な表現に当たるため注意が必要です。
「おられる」の例文
「おられる」を用いた例文を3つ紹介します。
- 経理の○○さんはおられますでしょうか?(存在の確認)
- お母様はお元気にしておられますか?(状況の確認)
- 社長はこのプロジェクトは中断するとおっしゃっておられました。(伝聞)
まとめ
「おられる」という言葉は「いる」の尊敬語としての役割がありました。文法的に二重敬語になっているため誤りであるという解釈もありますが、実際のところ使っても問題ない表現になります。ビジネスメールなどのテキストベースでのやり取りにも多用されるため、使い方はしっかりおさえておきましょう。