「ご参考までに」という言葉はビジネスシーンでよく使われる言葉です。馴染み深い言葉ですが、誤った使い方をすると失礼に当たる場合があります。大事なビジネスシーンで相手を不快にさせないよう、「ご参考までに」の正しい意味と使い方を学びましょう。
「ご参考までに」の意味とは?
「ご参考までに」の意味は何か物事を進めるときの判断材料として考えや考え方を取り入れていただくよう伝えることです。ざっくりいうと、「よければ参考にしてください」といった意味になります。
何か提案をした際に、さらに情報を与えるときによく使われることが多いです。「ご参考までに」には強制力はなく、提供された情報を参考にするかどうかの判断は自由です。また、文末に用いられることが多く、解釈は相手に委ねられます。
「ご参考までに」の敬語表現
「ご参考までに」は敬語としてそのまま使っても問題ないのか気になりますよね。ここではご参考までにの敬語表現について解説します。
参考までにの敬語表現
「ご参考までに」は「参考までに」に「ご」がついて丁寧語を表した言葉になります。「参考までに」はもともと「参考」といった「思考を手がかりにする」という意味の言葉に、「動作がそれ以上及ばない様子」を意味する「までに」がついた言葉です。
「ご」がついた丁寧な言葉なので「ご参考までに」は目上の人に使っても問題ありません。
全体を通して丁寧に
「ご参考までに」だけでも丁寧な表現ですが、後ろに具体的な表現を追加するとより丁寧な敬語表現になります。例えば、「ご参考までに下記の資料をご覧ください。」のようにすれば、判断材料として資料を見ていただくことを失礼なく伝えられます。
難しい場合は言い換えるのもあり
文末に「ご参考までに」を用いる表現にはあいまいさが残るので、目上の人にはふさわしくないとされています。人によっては失礼な印象を与えかねません。
目上の人に「ご参考までに」を使用する場合は最初に持っていくか、別の言い方にするのがいいですね。
例えば、先述したように「ご参考までに」の後ろに具体的な表現を追加するか、「あわせてご確認ください」のようにシンプルに言い換えることです。
このようにあいまいさを消す言い方をすれば、目上の人にもより丁寧に伝わります。
「ご参考までに」の類義語・言い換え表現
「ご参考までに」の類義語や言い換え表現について紹介します。
ご参照までに
よく参考と似た意味として「ご参照ください」が使われます。「参照」と「参考」はどちらも「何かをするときに考えを深めるために他の情報に触れ、自分の考えと照らし合わせる」といった意味が含まれます。
「参考」と異なる点は、対象とするものごとの範囲です。「参照」は目で見えるものを対象とし、「参考」は資料や文献などから目には見えない考えや考え方を対象としています。「参照」は見ればわかることがはっきりしているときに使われます。
例えば、「先月の売上データをまとめましたのでご参照ください」と表現可能です。
お目通し
「ご参考までに」の言い換えとして「お目通し」があります。「ご参考までに」はそのあとに「目を通しておいてくださいね」といったニュアンスが含まれています。文末で「ご参考までに」を使用する際、不適切な場合があるので代わりとして、「お目通しいただく存じます。」と言い換えてもいいでしょう。
「ご参考までに」の使い方と例文集
それでは、ご参考までにの使い方とその注意点、例文をあわせて紹介します。
「ご参考までに」の使い方
「ご参考までに」は「参考までに」に「ご」をつけて丁寧語にしたものなので、文面だけ見るとそのまま使っても間違いではないと考えていいでしょう。
「ご参考までに」は以下の使い方があります。
・文末に使う
・後ろに相手の動作を表す尊敬語をつける
・後ろに自分の動作を表す謙譲語をつける
「ご参考までに」の代表的な使い方としてまずあげられるのは文末で使うことです。資料やデータを添付するときに使うことがあります。ただ、先述したように文末で使用する場合、本来であれば、「確認してください」「資料をお渡しします」といった言葉が続きます。つまり、省略した表現になりますので、人によっては不快に思ってしまうでしょう。重要なビジネスシーンでは使用避けることが無難ですね。
「ご参考までに」の後に続く言葉は誰が主語なのかによって変わります。「ご参考までに」の後の言葉が相手の行動に関する場合は尊敬語を使います。一方「ご参考までに」の後の言葉が自分の行動に関する場合は謙譲語を使います。
「ご参考までに」と「参考にしてください」は別
「ご参考までに」と「参考にしてください」は同じではありません。「ご参考までに」は相手に判断を委ねているニュアンスが含まれています。しかし、「参考にしてください」の意味には必ず確認をするようにといった意味が隠れています。
参考にしてほしい資料が明確な場合は、「参考にしてください」と表現するといいですね。
「ご参考までに」を使うシーン
「ご参考までに」を使うシーンについては以下のようになります。
・判断材料として使ってほしいものを提供するとき
・相手方に確認してもらうとき
・メールで使うとき
判断材料としてつかってほしいものを渡すときに「ご参考までに」を使うことがあります。相手側は受け取った情報をどう判断するかは自由です。
相手に確認してもらうときに使う「ご参考までに」は相手に確認を強制しないように気遣いの意味が込められています。あくまでも、気遣いで積極的に確認をしてほしいニュアンスが強めです。
メールでも「ご参考までに」は使われます。話し言葉よりも丁寧さを求められる書き言葉では、「ご参考までに」を使うことがあります。こちらも、積極的に確認してほしい場合でも相手を気遣うときに使われる機会が多いです。
「ご参考までに」を使うときの注意点
「ご参考までに」の注意点は目上の人には文末表現での使用は避けることです。文末に「ご参考までに」を使うことは決して不適切とは言い切れません。ただ、「ご参考までに」には「ご確認お願いします」といった言葉が省略されているため、人によっては不快になる可能性があるようです。
相手にお願いする際は「ご参考までに」の後に尊敬語をつけるのが無難です。
ビジネスシーンで注意する点
ビジネスシーンで「ご参考までに」の使用の注意点は相手に確認してほしいといったニュアンスが強く含まれていることです。相手が「ご参考までに」を使う際には「目を通していた方が業務がスムーズに進みます」といった意味が隠れています。「ご参考までに」は確認することを強制しない言葉ですが、ビジネスシーンでは必ず確認しましょう。
逆に目を通してもらいたい場合は「ご確認ください」と言い換えたり、臨機応変に対応するといいですね。
「ご参考までに」の誤用例
「ご参考までに」の間違った使い方も把握しておきましょう。
有名なのは以下のような使い方です。
- ご参考までにご査収ください。
- ご参考までに教えてください。
「ご参考までにご査収ください」が間違った表現といわれる理由は「参考」と「査収」の意味にあります。「参考」は考えや考え方を手掛かりにする意味をもつのに対し、「査収」とはよく調べて受け取るの意味をもちます。これだと受け手は参考にすればいいのか、よく読めばいいかわからなくなります。このことから、「参考」と「査収」は一緒にしないほうがよいです。
「ご参考までに教えてください」も間違った表現といわれています。「役立つかわからないけど教えてください」といったニュアンスがあるため、上から目線になりがちです。目上の人にはもちろん、同僚にも好ましい表現とはいえないでしょう。
「ご参考までに」の例文
続いて、「ご参考までに」の例文です。ここでは以下の構成に沿って紹介します。
・文末での例文
・尊敬語をつけた例文
・謙譲語をつけた例文
文末での例文は以下のようになります。
- 以上、ご参考までに。
- 先月のデータがありますので、ご参考までに。
続いて、尊敬語をつけた例文を紹介します。
- ご参考までにこちらのデータをご覧ください。
- ご参考までにあちらのお店もご覧になりますか。
最後に謙譲語をつけた例文を紹介します。
- ご参考までに資料を送付いたします。
- ご参考までに前回のイベントの流れをまとめさせていただきました。
「ご参考までに」の後に続く動作の主語が誰なのかを意識するのがポイントです。
「ご参考までに」の英語表現
ご参考までにを英語表現すると以下のようになります。
・For you information (参考までに)
・For your information and guidance (参考情報として)
・For your referrence (参考のために)
例文にすると以下のようになります。
For your information,the movie theater is closed tomorrow.
(ご参考までに、映画館は明日休館です。)
Attached for your information is copy of PDF file.
(ご参考までに、PDFのコピーを添付いたします。)
まとめ
「ご参考までに」は「参考までに」に「ご」をつけて丁寧な形にしたものです。
「ご参考までに」は文末で使う場合と、尊敬語をつける場合、謙譲語をつける場合の3つの使い方があります。文末で使用は人によっては失礼な印象を与えてしまう可能性があるので、「ご覧ください」など尊敬語をつけるのが無難です。
ビジネスシーンで使われるときは確認を強制しない言い方をしつつも、確認を強く希望しているので、聞き流すのは避けた方がいいでしょう。逆に自分が伝えるときは「ご確認ください」と言い換えるてもいいですね。