「他愛もない」は一般的に「取るに足らない」という意味をもつ言葉として知られていますが、他にも意味があるのをご存知でしょうか。「他愛もない」の詳しい意味や、正しい読み方を知り、うまく使えるようになりましょう。
「他愛もない」の意味とは?
「他愛もない」という言葉には、大きく分けて「取るに足らない」「正体がない」「張り合いがない」という3つの意味があります。ここでは「他愛もない」という言葉の意味を詳しく解説していきます。
取るに足らない
「他愛もない」には「とりとめのない」「取るに足らない」という意味があります。「他愛もない」という言葉がもつ意味の中で最も一般的なのが、この「とりとめのない」「取るに足らない」というものです。「他愛もない」に「取るに足らない」以外の意味があることを知らない方も多いかもしれません。
正体がない
「他愛もない」には「正体がない」という意味があります。小説などではたまに見る表現ですが、「正体がない」という言葉自体にあまり馴染みがないかもしれませんね。「正体がない」とは、ひどく酒に酔ってしまい意識がない状態や、深く寝入っている状態などを指す言葉です。日常生活ではあまり使うことのない表現ですが、しっかり理解しておきましょう。
張り合いがない
「他愛もない」には「張り合いがない」という意味があります。「張り合いがない」とは「手ごたえがない」「しっくりこない」という意味の言葉で、期待外れで拍子抜けしてしまった場面などを表現する際に使われます。ことわざの「暖簾に腕押し」が指す意味と似ていますね。
「他愛もない」の正しい読み方は「たわいもない」「たあいもない」どっち?
「たわいもない」と「たあいもない」どちらも聞いたことがあるという方がいるかもしれません。正しい読み方はどちらなのでしょうか。結論から言えば、どちらも読みも正しいとされています。元々は「たわいもない」という言葉だったものが、江戸時代頃に「わ」の音が「あ」に変化し「たあいもない」とも読まれるようになりました。両方とも古くから使われている読みなので、どちらを使用しても誤りではありません。
「他愛もない」の語源・由来
「たわいもない」の「たわい」に「他愛」という漢字が当てられ、表記が「他愛もない」になったとされています。「自分の利益よりも他人の幸せを願うこと」という意味をもつ言葉として「他愛」がありますが、こちらは「たわいもない」とは関係のない別の言葉です。「たわいもない」に使われている「他愛」はあくまでも当て字ですので、特に意味はもちません。「他愛もない」の語源である「たわい」には「しっかりした考えや態度」「思慮分別」という意味があります。つまり「たわい」が「ない」は、しっかりした考えや態度がない、思慮分別がないという意味となり、そこから現在の「取るに足らない」「正体がない」「張り合いがない」などの意味で使われるようになりました。「他愛もない」に似た言葉として「他愛ない」「他愛がない」「他愛のない」などがありますが、これらは全て同じ意味で使われています。
「他愛もない」の類義語・言い換え
「他愛もない」という言葉がもつ3つの意味それぞれについて、どのように言い換えられるでしょうか。類義語を見ていきましょう。
とりとめのない
「とりとめのない」は、「他愛もない」の1つ目の意味である「取るに足らない」や「重要でない」という意味をもつ言葉です。他にも、話の内容や思考、文章などにまとまりがない状態や、目的がぼんやりしている状態のことも指す言葉ですね。
- とりとめのないことを考えているうちに眠りについた。
- とりとめのない日常の中に、幸せを感じる瞬間がある。
前後不覚
「他愛もない」がもつ意味の1つである「正体がない」状態を指すものとして「前後不覚」という言葉があります。「前後不覚」とは、後先のことがわからなくなるほど正常な判断ができない状態のことを表現する言葉です。
友人たちとお酒を飲みすぎて、前後不覚になってしまった。
あっけない
「あっけない」は「他愛もない」が指す意味の1つである「張り合いがない」の類義語です。張り合いがなく、時間的にも短く終わってしまったという状態を表現でき、相手が予想より弱かった場合などに使える言葉です。
- 決勝戦があっけなく終わってしまった。
- 長い時間をかけて練習をしてきたのに、あっけなく負けてしまった。
「他愛もない」の使い方と例文集
「他愛もない」を耳にしたことはあっても、自分で使ったことがないという方も多いかもしれませんね。ここでは「他愛もない」の3つの意味ごとの例文を紹介します。使う機会があまりない言葉だからこそ、間違えた使い方をしないように注意しましょう。
「取るに足らない」という意味の使い方
「取るに足らない」「とりとめのない」という意味で使用する場合の例文を見てみましょう。
- 次の予定まで時間があったので、友人たちと他愛もない話をして過ごした。
- 上司に休暇取得の理由を聞かれたが、他愛もないことです、とごまかした。
「正体がない」という意味の使い方
「正体がない」という意味で「他愛もない」を使う場合、どのような使い方が正しいのでしょうか。例文を見てみましょう。
- 友人たちと飲みすぎてしまい、他愛もなく寝てしまった。
- 徹夜続きで疲れがたまっていたのか、他愛もなく昼過ぎまで寝てしまった。
「張り合いがない」という意味の使い方
「他愛もない」を「張り合いがない」という意味で使う場合は、以下のような使い方になります。
- 気合いを入れて臨んだ試合だったが、他愛もなく負けてしまった。
- 取引先との交渉は他愛もなく終了した。
「他愛もない」を英語でいうと?
「他愛もない」の3つの意味について、英語で言い換えるとどのような表現になるでしょうか。例文とともに解説します。
silly
「silly」には「愚かな」「思慮分別がない」「馬鹿馬鹿しい」などの意味があります。「他愛もない」のもつ意味の1つである「取るに足らない」ことを表現する際に使うとよいでしょう。
例「we talked about silly things for hours. 私たちは何時間も他愛もない話をした。」
sleep like a log
「他愛もなく眠る」「正体がなくなるほどぐっすり眠る」を英語では「sleep like a log」と言います。logは丸太という意味なので、直訳では「丸太のように眠る」つまり、丸太のように微動だにしないほど深い眠りにつくという意味になります。
例「I slept like a log because I drank too much. 酒を飲みすぎたせいで他愛もなく眠ってしまった。」
not challenging
「not challenging」は「張り合いがない」を表現する英語です。「張り合いがない」という意味の中でも「やりがいがない」というニュアンスを含む表現となっています。
例「I’m thinking of quitting my job because my job is not challenging. 私の仕事は他愛もないものなので、退職を考えている。」
まとめ
「他愛もない」の読み方は「たわいもない」「たあいもない」どちらでも構いません。どちらの読み方も誤りではないので、間違えて指摘してしまわないように注意しましょう。「取るに足らない」という意味が最もよく知られている言葉ですが、他にも「正体がない」「張り合いがない」という意味も持っています。日常会話では使う機会がそれほど多くない言葉ではありますが、使う頻度が低い言葉だからこそ、正しい使い方や意味を理解し、しっかり身につけておきましょう。