「整合性」とは矛盾がなく、筋道が通っている様子をいいます。1961年発行の哲学書「日本の思想」で最初に登場し、その後ビジネスシーンでも使われるようになりました。今回は「整合性」の類義語と対義語、使い方を詳しく解説します。
「整合性」の意味とは?
「整合性」とは、矛盾やズレがなく、筋が通っている様子をいいます。「きちんと整える」を意味する「整」と「ぴったり合わさる」を意味する「合」、「傾向を持つ、その状態」を意味する「性」が合わさっている言葉です。
「整合性」の由来・語源
「整合性」の言葉が一般化したきっかけは、東京大学の名誉教授だった丸山真男氏の1961年の著書「日本の思想」に登場したからだといわれています。この本の一節にある「論理的整合性」とは、一切の矛盾がないように考えられており、論理的に反証できないくらい整っている様子のことです。現在はビジネスシーンでも、「整合性」を耳にすることが多くあります。
「整合性」の類義語・言い換え
「整合性」の類義語・言い換え表現には、筋が通っている様子や複数のものが同じである様子を意味する言葉があります。それぞれの意味と、違いを知っておきましょう。
1.筋が通る
「筋が通る」とは道理が通っていること、考えを貫き通していることをいいます。「首尾一貫」も「筋が通る」とほぼ同じ使い方ができる言葉です。
・彼の考えは筋が通っており、律儀なので信頼できる。
・上司のやり方は首尾一貫しているので、円滑に作業を進められるだろう。
2.辻褄が合う
「辻褄が合う」とは前後が矛盾しないで合う、筋道が通っている様子をいいます。縫い目が十字に合わさる部分を「辻」、着物の左右の裾が合う部分を「褄」といい、ここからものごとの道理が合っていることを指すようになりました。
・証言と実際の行動の辻褄が合っているかが確認され、アリバイが証明された。
・彼の話は辻褄が合っておらず、どうもすっきりしない。
3.無矛盾性
「無矛盾性(むむじゅんせい)」とは、矛盾がない様子をいいます。数学的基礎論などの公理系内において、矛盾する公理同士がないときに使われる言葉です。
4.理にかなった
「理にかなった」とは道理や理屈に合った、合理的である様子です。「かなう(適う)」とは、ある基準や条件などに当てはまっていることをいいます。
・彼のいうことは理にかなっているように思えるが、反対意見を多数耳にする。
・感情的になっている人は、理にかなった説明をしても同意してもらえないことが多い。
5.一致する
「一致する」とは、複数のものごとが同一であることです。「完全一致」は二つの対象が全てにおいて同じで、ほかの要素を含まないことをいい、「部分一致」は二つの対象の一部分だけが同じもののことをいいます。
・提案された議題は満場一致で可決された。
・この点について、上司と私の考えは一致している。
「整合性」の対義語
「整合性」の対義語は一致せずずれている様子や、辻褄が合わないことを意味するものです。代表的な対義語を5つ紹介します。
1.食い違い
「食い違い」とは発言やものごとが一致していない様をいい、「食い違っている」や「食い違いが生じる」などと使います。「齟齬(そご)」も似た意味を持つ言葉です。
・業務がうまく進まなかったのは、私と彼との考えが食い違っていたからかもしれない。
・実際の労働状況は会社からの当初の説明と食い違いが生じていて、退職を考えざるをえない。
2.矛盾
「矛盾」はどんな盾をも貫く「矛」とどんな矛も通さない「盾」とを合わせ、ものごとの道理が一致しない、2つのことの辻褄が合わないことを意味しています。昔中国にあった楚(そ)の国での故事が由来になっている言葉です。
・彼は夜に予定があると聞いていたが、ほかの人に仕事後は暇だと話していたので矛盾を感じる。
・聞いた話にいくつか矛盾があるようで、全体像がわかりにくい。
3.ちぐはぐ
「ちぐはぐ」とは、複数のものが食い違っていて、そろっていない様子をいいます。統一感がなく、違和感を覚えたときに使います。
・彼の話の内容は、前に聞いていた状況と合わせるとちぐはぐに思える。
・スムーズに事が運んでいるように思えたが、相手の目が笑っていなかったのでちぐはぐな感じがした。
4.でこぼこ
「でこぼこ」とは、ものごとの釣り合いが取れていない、ものごとの性質に差があり、不揃いなことをいいます。漢字で書くと「凸凹」で、逆にした「凹凸(おうとつ)」も意味は同じです。
・大雨で道がぬかるんでしまい、でこぼこができている。
・彼の評価は月によりでこぼこがあり、安定していない。
5.ずれ
「ずれ」とは、時期や位置が基準から少し外れている状態をいいます。また、二人の感じ方や考え方に多少隔たりがあり、食い違っている様子のことも指します。
・時折見直しをして、ずれが生じている部分を修正する。
・君の考えは、世間の常識とずれているように思える。
「整合性」を英語でいうと?
「整合性」の英訳は以下のようなものがあります。
・consistency(矛盾がない)
・coordination(一致)
・conformity(外形の一致)
・integrity(統合)
・adjustment(調整)
また、「consistency」の形容詞形「consistent(矛盾のない、一致した)」を使い、「There’s no consistency.」を「Those are not consistent.(それらには整合性がない)」と表現することもできます。
・It is important to ensure consistency between these data.(これらのデータの整合性を確保することが重要だ。)
・There’s no consistency in his theories.(彼の理論には整合性がない。)
「整合性」の使い方と例文集
「整合性」はそれ単体ではなく、「整合性をとる」や「整合性がある・ない」、「整合性が欠く」などとほかの語と組み合わせて使うのが一般的です。後に続く言葉によりニュアンスが変わるので、例文とともに使い方を知っておきましょう。硬めの表現なのでビジネスシーンでも登場する機会は多くあります。
1. 整合性をとる
「整合性をとる」とは「辻褄が合うようにする」や、「矛盾のないようにする」ことをいいます。「書類の整合性をとる」とは、書類の内容に矛盾がないかを確認することです。
- 資料のデータのいくつかにずれがあったので、整合性をとらなくてはならない。
- 提案されたデザインと、使える材料との整合性をとるように指示された。
2.整合性がある・ない
「整合性がある」は「一貫性がある」、「整合性がない」は「一貫しておらず矛盾している」ことをいいます。
- 彼の案は、今回のテーマとの整合性がある点を高く評価されている。
- 整合性のない計画では、実行には移せない。
- 上司の発言に整合性がなく、いつも戸惑ってしまう。
3.整合性を欠く
「整合性を欠く」とは、「一貫性がない」や「矛盾している様子」をいいます。また、「整合性がとれない」は、「整合性を持った状況にできない」ことです。
- 彼の説明は整合性を欠いており、何をいいたいのかがわからない。
- データの整合性がとれないのは、仮定が間違っているのが原因かもしれない。
4.整合性を図る
「整合性を図る」とは「矛盾しないように取りはからう」、「辻褄が合うように考えて工夫する」ことです。「図る」には「ものごとを達成させるために考えて行動する」や、「ものごとを行うための計画をする」意味があります。
- 取引先には、見積書の整合性を図った上で連絡するようにと指示された。
- 資料作りは内容の整合性を図り、丁寧に行うべきだ。
まとめ
「整合性」とは、矛盾がなく一貫性のある様子のことです。「整合性」を適切に使って、論理的に説明できるようになりましょう。また、ビジネスパーソンには「整合性」のある言動が求められますし、「整合性」をとりながら業務ができる人は周囲からも評価されるでしょう。