「お手数をおかけします」はビジネスシーンや日常生活でよく耳にする言葉ですが、正しい意味や使い方が実はわからないという方もいるのではないでしょうか。今回は「お手数をおかけします」の意味や使い方を紹介します。
「お手数をおかけします」の意味と読み方
「お手数をおかけします」はどのような意図で使われる言葉なのでしょうか。ここでは正しい意味と読み方について紹介します。
「お手数をおかけします」の意味
「お手数をおかけします」は「物事に対して労力を割いていただく」や「物事や他人に対して力を尽くしてもらう」という感謝の意が含まれます。
「お手数をおかけします」の「手数」には以下の2つの意味があります。
・その物事に対してかかる数、工数
・物事または他人のために力を尽くすこと
上記の意味に「労力を費やす」という意味の「かける」の謙譲語をつけた言葉が「お手数をおかけする」です。よって、相手が費やす労力に鑑みた上で、気遣いや感謝をしていることを伝える意味が含まれます。
読み方は「おてすう」と「おてかず」のどちらも正しい
「お手数をおかけします」の読み方は「おてすう」と「おてかず」の2通りがあり、どちらも正しい読み方とされています。
本来は「手」と「数」どちらも訓読みとなる「おてかず」が正しい表現とされていましたが、「手数料(てすうりょう)」という読み方から派生して「おてすう」という読み方も近年では一般的であるという見方をされています。
いずれも問題なくビジネスシーンで利用できる読み方のため、読みやすい方を用いるのがよいでしょう。
「お手数」の後ろには接続詞の「を」が必要
ビジネスシーンで「お手数おかけします」という表現を目にすることがありますが、表現に少し違和感を覚える方もいるのではないでしょうか。
「お手数」は名詞のため正しい用法としては接続詞の「を」が必要です。「お手数をおかけします」と記載することでより正しい日本語となり、相手に丁寧な印象を与られることを覚えておきましょう。
「お手数をおかけします」の使い方・利用シーン
ビジネスシーンで「お手数をおかけします」は非常によく使われる表現です。今回はどのような場面で利用できるのかをシーン別に詳しく説明します。
手助けをしてもらう場合
相手に依頼した内容を受けてもらえた場合や、作業を引き受けてもらった場合に用いることが可能です。この場合の「お手数をおかけします」は感謝の意を伝えるニュアンスが強くなります。
相手に頼みごとをする場合
相手に対して物事を依頼する際にも、本題の前置きとして「お手数をおかけします」を用いることでクッションの役割を果たします。
クッション言葉として用いることで、控えめな表現となり相手の好感度が高まるかもしれません。この場合、「お手数をおかけしますが、〜」など、文頭に添えるとよいでしょう。
取引先や目上の人に対しても利用できる
この「お手数をおかけします」は二重敬語に思われる方もいらっしゃいますが、「お手数」の「お」は接頭語、「おかけします」は謙譲語にあたるため正しい敬語表現です。よって、取引先や目上の人に対しても利用できる言葉です。
また、より丁寧に表現したい場合は最後に「恐縮です」という文言を添えることで、手間をかけさせることを申し訳なく思う気持ちが強調されます。「恐縮です」を添える場合は、「お手数をおかけし恐縮です」という表現が適切です。
「お手数をおかけします」の類義語・言い換え表現
「お手数をおかけします」には感謝や申し訳なさを伝える意味がありますが、強調したいニュアンスによっていくつかの言い換え表現があります。ここでは類義語のニュアンスや利用場面を見ていきましょう。
「ご面倒をおかけします」
「面倒」は「手間がかかること、わずらわしいこと」という意味です。「おかけする」は先述したとおり謙譲語にあたるため、「ご面倒をおかけする」は相手が面倒なことを請け負ってくれるという意味合いになります。
この場合、手間のかかるわずらわしい事柄を請け負ってくれた相手に対して詫びる気持ちを強調した表現となります。主にその面倒ごとが自分起因である場合などに用いましょう。
「ご迷惑をおかけします」
「迷惑」とは、「ある行為がもとで、他の人が不利益や不快な思いをすること」という意味です。これに「おかけする」をつけることで、「自分がもとで、相手に不利益や不快な思いをさせた」という意味合いになります。自分に原因がある事象に対する表現ですので、すでに不快な思いをさせてしまったことに対して謝罪する場合に用いられます。
一方未来に対しての事象で利用すると、相手に不利益を与えることを承知の上で依頼していることになるため、「ご迷惑をおかけしますが、〜」といった表現は不適切です。「この度はご迷惑をおかけして申し訳ありません。」など過去の事象に対して用いるよう注意しましょう。
「お手間を取らせます」
「手間」は「ものごとに費やされる時間や労力」という意味です。「お手間を取らせる」は「相手に時間や労力を費やさせる」という意味合いとなりますので、依頼するときと過去の事象に対する謝罪のどちらにも用いられます。
また、「手間をかける」という言葉は相手ではなく自分の行為に対して使うため、相手に対して使う場合は「手間を取らせる」という言い回しが正しいです。間違いやすい点ですので注意しましょう。
「お手を煩わせます」
「煩わす」は「心配させる・悩ます」や「面倒をかける」という意味です。よって「お手を煩わせます」は「相手に苦労や面倒をかけた」という意味合いとなります。特に相手が面倒と感じることが予測される依頼などに用いるとよいでしょう。
利用する場合の注意点
「お手数をおかけします」は多くのビジネスシーンで利用できる非常に便利な言葉ですが、適切ではない使い方もあります。間違った使い方をしないよう、注意点についてもしっかりと把握しましょう。
自分に対しては利用しない
「お手数をかける」という言葉は、自分で行う行為の前置きとしては用いられませんので注意が必要です。
例えば、「時間はかかるが、私がやります」というニュアンスを伝えたい場合に、「お手数をおかけしますが、私が対応いたします」は間違った表現です。この場合は「お時間をいただきますが、私が対応いたします」などに言い換えましょう。
「お手数をかけさせます」はNG表現
「お手数をかけさせます」の「させ」は助動詞の「させる」を活用した語句です。「させる」の意味は相手に対して自分が行う行動の許しを請う意味合いで使われるものです。代表的な活用では「させていただく」などがそれにあたります。
今回の「お手数をおかけします」は相手の行動に対する謝辞の表現ですので、自分の行動を表現する「させる」を用いることは間違った表現です。「お手数をおかけします」は十分丁寧な表現となりますが、より丁寧に伝えたい場合は「お手数をおかけいたします」といった使い方を心がけましょう。
「お手数をおかけします」の例文と返答例
ビジネスシーンでよく見かける「お手数をおかけします」の例文を見ていきましょう。また、相手から「お手数をおかけします」と言われた場合、返答に困ることがありますよね。ここでは返答例についてもいくつか例をあげて紹介します。
「お手数をおかけします」の例文
「お手数をおかけいたします」の例文を紹介します。
・「お手数をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。」(メール文末など)
・「この度はお手数をおかけして申し訳ありません。」
・「お手数をおかけいたしますが、添付資料をご確認いただけますでしょうか。」
・「お忙しいところ、お手数をおかけいたしました。」
「お手数をおかけします」に対する返答例
相手が「お手数をおかけします」を使う場合は、自分に対して申し訳ない気持ちを持っているため、その気持ちを打ち消す返答をすることが望ましいです。
・「こちらこそ、この度はお手数をおかけいたしました。(ありがとうございました。)」
・「お気になさらないでください。」
・「大丈夫です。いつでも気軽にお声掛けください。」
・「滅相もないことです。」
・「とんでもないことです。」
・「お役に立てたなら何よりです。」
「お手数をおかけします」を英語でいうと?
英語表現の場合は、依頼をする場合とすでに相手が対応してくれたことに謝辞を述べる場合のそれぞれで、表現が異なります。
何かを依頼する場合は、謙虚なニュアンスを含めるため「could」を用い、丁寧な依頼表現にするとよいでしょう。
・Could you please〜?
すでに相手が何かしらの対応をしてくれたことに対する謝辞を述べる場合は、丁寧にお礼を伝える表現が適切です。
・Thank you for your help.
「お手数をおかけしますが」を直訳すると、謝罪の意図が強く反映されてしまうため利用シーンに合わせて適切な表現で使い分けましょう。
まとめ
「お手数をおかけします」は対面の会話はもちろんのこと、メールでも非常によく使われる表現です。正しい使い方を覚えることで、相手も自分も気持ちよく仕事ができる関係性を築きましょう。